2016年11月3日
奥秩父:1泊2日
金峰山小屋:大弛峠さまさま山行。

雪化粧した金峰山へ。


快晴の祝日を利用して金峰山小屋へ。

基本的にテント持参の節約山行がモットーの私だが、週末毎に山小屋(丸川荘)の手伝いに通っている関係もあって、他の山小屋にも興味が出てきた。特に水の確保やトイレの処理対策には興味がある。

そして、食事。

ご飯を食べられるだけでもありがたい山中において、こだわりの食事を出してくれる山小屋も少なくない。そんな山小屋の中で、今回目をつけたのは金峰山小屋だ。

夕食はチキンソテー、朝食はお粥さんと聞いている。

こりゃあ、楽しみ。

ただ、高度障害が出やすく、すぐ食欲不振に陥ってしまう私の体質だけが不安要素だ。

食事を楽しむためにも、もってくれよ、オラの身体ッ!



大弛峠までは紅葉を楽しめます。


今回は大弛峠から金峰山に向かう。

車で越せる峠として最も標高の高い大弛峠からであれば、金峰山までの標高差は300m程度。多少の起伏はあるにしても、これであれば高度に弱い私であっても耐えてくれるだろう。

針葉樹が一斉に色付く黄色の山肌を眺めながら大弛峠へと車を走らせ、「秋だなぁ」と思っていると、山間から雪化粧された金峰山が見えてきた。

まだ紅葉気分だったのに、上部はいつの間にか冬の装いだ。

大弛峠に駐車して、まずは国師ヶ岳方面を散策してみる。この辺りは徒歩では奥深く、大弛峠まで車で入れるからこそ日帰り感覚で散策できるエリアとなっている。

山道に入ると、真っ青な空を背景にして、木々に付着した真新しい雪が眩いばかりに映えている。『降雪した』と言うよりは、風に吹かれて着氷したような状態で樹氷の初期段階と言える。そして、冷やされて澄んだ空気は体内から浄化してくれるようですこぶるうまい。

『降雪した』と言うより、風に吹かれて着氷しています。


前国師岳までの山道の多くは、木道(階段)が整備されていて歩きやすい。見たところ朽ちている箇所などなく、整備がゆき届いている印象だ。

申し訳ない位に快適に前国師岳、そして奥秩父最高峰となる北奥千丈岳の山頂を踏む。快晴も相まって山頂から拡がる景色は最高だ。

もうちょっと散策しようと、石楠花新道に入って奥千丈岳まで行ってみる。

ここからは山道不明瞭な箇所が多くなり、方角を意識しないとすぐ道から外れてしまう樹林帯となる。それだけに周囲には誰も居ない。

静寂。

見上げれば、着氷して真っ白な木々の間から青空が覗き、音もなく木漏れ日が射し込む樹林帯は、冬季特有の静けさに包まれていた。

妖しい雰囲気の奥千丈岳。


心静かに石楠花新道を進み、奥千丈岳に到着。

眺望は全くナシ。ただ、山頂道標の上に掲げられた雄鹿のしゃれこうべが何とも言えない呪術的な妖しい雰囲気を醸し出していた。

準備運動はここまで。大弛峠へと戻り、本編となる金峰山に向けて改めて出発だ。

大弛峠へ戻った時、こめかみがボワーンとする嫌な感じをおぼえた。これまでの経験上、高度障害発症前の予兆と酷似しているこの感じ。準備運動で張り切り過ぎたか・・・。

耐えてくれよ、オラの身体ッ!

深い呼吸を意識しながら淡々とした歩みで金峰山に近づいてゆく。気温が上がってきたためか、あちらこちらで木々に着氷した雪がパリンと音をたてて落下している中を歩く。

逆光でモノクロームの世界に。


朝日岳を越えて樹林帯を抜けると、霧氷の付いたハイマツが一面に拡がり、そのハイマツは逆光で黒く染まり、霧氷だけは陽の光を受けて白く反射している。そんなモノクロームの世界に囲まれてポツリと金峰山小屋はあった。

【きんぷ?きんぽう?】
県境にある金峰山を山梨側では『きんぷさん』、長野側では『きんぽうさん』と読まれます。金峰山小屋は長野側に下ったところに位置するので『きんぽうさんごや』が正解。また、『峰』ではなく『峯』と書くのが正解とのこと。
※紛らわしいのでここでは『峰』に統一。


金峰山小屋は、付近に湧き水や沢が無いため天水を利用している。それだけに、最近改築されたトイレの管理方法や水の確保など、山小屋を手伝っている身として興味深い点が多かった。

それに加え、大きめの円卓コタツ、セルフサービスのドリンクバー(?)、簡易更衣室など、居住空間で快適に過ごせる工夫が施されている。そして、寝床に案内してもらえば、ふっかふかの布団がお出迎え。

この快適さには、高度に弱い私の身体も安心してくれたようで、当初の心配をよそに高度障害は治まり、食欲は全開となった。

金峰山小屋名物となっているグラスワイン(下戸の私はリンゴジュース)付きのチキンソテーをモリモリと頂く。おかわりにはカレーも出る豪勢な夕食だ。

金峰山山頂から長野側に下ったところにあります。


円卓コタツでチキンソテーを頂きまーす。


静かに夜のとばりがおりてゆきます。

食後は小屋番さんもまみえて円卓コタツでくつろぎの一時。あとはフカフカ布団で眠るだけ。

では、おやすみなさい。



夜明け前で冷え冷えとした雰囲気の五丈岩。


翌朝。

朝食の時間を遅らせてもらい、金峰山へと御来光を拝みにゆく。

雲ひとつない快晴で、夜明け前の空と同じようにうっすら青く見える五丈岩の周辺は深閑としていた。

そんな冷え冷えとした雰囲気を変えるかのように御来光が訪れる。

まずは富士山が照らされ、山陵の間から甲府盆地の街にも朝日が射し込まれる。その様子は、日常的に繰り返される営みとは言え、山中だからこそ心震える光景に映る。同じく心震えたのだろう若い登山者は、金峰山山頂でオーストラリアの民族楽器を奏でていた。

御来光が訪れます。


勇ましくオーストラリアの民族楽器を奏でる若者。


朝日を受ける五丈岩と富士山。

日常的だが山中では特別に感じるもの。

それは食事だ!

金峰山小屋の朝ごはんです。


と言うことで金峰山小屋へと戻り、名物の朝食であるお粥さんを頂く。

冷えきった身体に熱々のお粥が内側から優しく暖めてくれる。トッピングとして梅干しや佃煮、漬物を乗せてカッカッカッと掻き込む。少々はしたない食べ方をしてしまったが、こんな食事、大好き。

【金峰山小屋のお粥さん】
いわゆるただのお粥ではなく、隠し味(企業秘密)の利いた優しい味です。トッピングも多数あって無限におかわりしてしまいそうになるので注意!


小屋番さんに別れを告げて金峰山小屋を後にする。

昨日より気温は高いようで、木々に付いた雪がパラパラと降る山道を歩いて大弛峠へと戻ってきた。

これにて今回の山行は終了と思いきや、大弛峠にある鳥瞰図を見て、あることに気付いてしまった。

「あれ?国師ヶ岳に行ってない?」

見晴らし抜群、国師ヶ岳。


昨日に前国師岳や奥秩父最高峰の北奥千丈岳を踏んでいたからか、すっかり国師ヶ岳にも行った気になっていた。

これではイカン。改めて国師ヶ岳まで登ってみることにする。

おお、さすが山梨百名山。
見張らし最高。

こんな取って付けたような感想を最後に、快晴に恵まれた今回の山行は無事に終了した。(※国師ヶ岳の見張らしは本当に素晴らしいです)

それにしても、大弛峠まで車で入れたからこそ出来た山行内容となった。奥深いこのエリアにおいて、麓から徒歩であればこうはいかなかっただろう。

大弛峠さまさま山行といったところだ。

で、帰宅後、喉の調子がおかしい。気がゆるむと風邪をひきやすい私としては、この症状を見る限り、大弛峠は私の心まで弛ませてくれたようだ。

それはそうと、寝ます。

漫画的山行記録

車で越せる峠として最も標高の高い大弛峠から山歩きに出かけます。

そして、金峰山小屋に宿泊してきます。

大弛峠までは紅葉を楽しみながらドライブです。

1時間程で大弛峠に到着。

おおっ、もの凄く快晴だッ!

時間的ゆとりがあるので奥秩父最高峰を踏みに行ってきます。

上の方は積雪、と言うか着氷しています。

サルオガセにも着氷。

整備がゆき届いた木道ですがスリップ注意。

前国師岳に到着。

続いて奥秩父最高峰の北奥千丈岳に到着です。

ふうむ、もうちょっと散策してみようかな。

と言うことで、石楠花新道伝いに奥千丈岳まで行ってきます。

この山道は踏み跡不明瞭なので不用意に入り込まないよう注意してください。

残雪期には踏み抜きそうなトラップ多数。

所々にあるテープも参考にして進みます。

独特の雰囲気を放つ奥千丈岳に到着。

さあて、石楠花新道を登り返して大弛峠へ戻ろうか。

あちらがこれから向かう金峰山です。

ちょっと休憩。

さて、改めて金峰山に向け出発。

着氷していたり、

していなかったりする山道を進みます。

朝日峠の山盛りケルン。

アップダウンも少なく、気持ちのよい樹林帯歩きができます。

視界が開けると下方には針葉樹の紅葉が拡がっています。

本日は穏やかですが、昨日までは強風だった模様。

朝日岳に到着。

朝日岳からは結構下ります。

冬期特有の静けさを感じる樹林帯です。

鉄山。これ、『くろがねやま』と読むらしい。

樹林帯を抜けたーッ。

太陽に照らされた霧氷が眩い光を放っています。

下方には瑞牆山。

周囲は逆光でモノトーンの世界と化しています。

霧氷の付いたハイマツたち。

先程歩いた北奥千丈岳方面。

金峰山に到着。

すぐ下にはシンボルの五丈岩。

そして、出ました富士山。

『富士山+五丈岩』は絵になるなぁ。

霧氷の毛皮をまとった岩があちこちに見られます。

さて、長野県側に下って本日の宿泊地となる金峰山小屋へ。

ちなみに、金峰山を山梨側では『きんぷさん』、長野側では『きんぽうさん』と読みます。

なので、長野県側にある金峰山小屋は『きんぽうさんごや』が正解です。

こちらが金峰山小屋です。

本来は『峰』ではなく『峯』と書くのが正解とのこと。

冬季のオアシスと言ったらコタツでしょう。

甲斐駒・仙丈に沈む夕日を眺めてゆとりある時間を過ごします。

常連さんが荷上げた天体望遠鏡で三日月を観察。

とっぷりと日は暮れました。

よっしゃ、夕食の時間だッ!

金峰山小屋名物のチキンソテーだッ!

おかわりはカレーだッ!

ごちそうさまでしたッ!

夜には小屋番さんもまみえてコタツで談話の時間を過ごします。

翌朝。

朝食の時間を遅らせてもらい、御来光を拝みに行きます。

静寂の五丈岩。

奥に見えるは鳳凰三山に白根三山。

そして富士山。

雲が掛かっているので日の出時刻は数分遅れています。

おはようございます。

静かに朝日を浴びる朝富士。

徐々に明るさを増す陽の光は、

山稜の間から甲府盆地を照らしています。

この状況に心震えたのか、オーストラリアの先住民アボリジニの楽器『ディジュリドゥ』を吹く登山者。

良き御来光でした。

陰と陽の世界。

よっしゃ、朝食の時間だッ!

金峰山小屋名物のお粥さんだッ!

全乗せだッ!

ごちそうさまでしたッ!

小屋番さんに見送られて金峰山小屋を後にします。

まずは金峰山の登り返し。

雪をまとった白根三山。

こちらは甲斐駒・仙丈。

そして瑞牆、八ヶ岳。

清々しい朝です。

相変わらず凛とした芙蓉峰。

昨日に引き続き、本日も快晴だーッ!

三方山こと、木賊、甲武信、三宝山も綺麗に見えています。

気温が上がると、木々に付いた霧氷がパラパラと落ちてきます。

良い景色を存分に楽しませてもらいました。

大弛峠までの帰路にこんなものを発見。

大弛峠まで帰ってきました。

そう言えば、昨日、国師ヶ岳に登ってないな・・・。

と言うことで、また北奥千丈岳方面へ登ってきます。

見晴らし最高な国師ヶ岳に到着。

隣には昨日登った北奥千丈岳が見えます。

折角なので再度、奥秩父最高峰。

昨日に比べると雪はだいぶ融けているようです。

夢の庭園経由で下山します。

五丈岩が目立つ金峰山を眺めながら下山。

大弛峠へと下山しました。

針葉樹の紅葉に囲まれながら帰路につきます。

今回は大弛峠から色々な山を楽しめました。

麓から歩いては奥深いエリアなので、大弛峠さまさま山行ですね。

金峰山小屋オリジナルてぬぐいも買ってきましたとも。

おわり

漫画的山行記録
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本日の山行情報

複数人山行/1泊2日/小屋泊/ハイキング/マイカー登山

前国師岳(まえこくしだけ)
標高2570m
国師ヶ岳(こくしがたけ)
標高2592m
詳細(外部リンク)
北奥千丈岳(きたおくせんじょうだけ)
標高2601m
詳細(外部リンク)
奥千丈岳(おくせんじょうだけ)
標高2409.4m
詳細(外部リンク)
朝日岳(あさひだけ)
標高2579m
金峰山(きんぷさん/きんぽうさん)
標高2599m
詳細(外部リンク)

本日のスケジュール

大弛峠[着] 10:00 - [発] 10:00
 ↓ 35分 
北奥千丈岳[着] 10:35 - [発] 10:35
 ↓ 27分 
奥千丈岳[着] 11:03 - [発] 11:03
 ↓ 58分 
大弛峠[着] 12:01 - [発] 12:23
 ↓ 73分 
朝日岳[着] 13:36 - [発] 13:36
 ↓ 70分 
金峰山[着] 14:46 - [発] 14:46
 ↓ 22分 
金峰山小屋(宿泊)[着] 15:09 - [発] 05:39
 ↓ 15分 
五丈岩[着] 05:54 - [発] 06:21
 ↓ 14分 
金峰山小屋[着] 06:35 - [発] 08:22
 ↓ 83分 
朝日岳[着] 09:45 - [発] 09:45
 ↓ 51分 
大弛峠[着] 10:36 - [発] 10:45
 ↓ 36分 
国師ヶ岳[着] 11:21 - [発] 11:25
 ↓ 9分 
北奥千丈岳[着] 11:35 - [発] 11:35
 ↓ 32分 
大弛峠[着] 12:08 - [発] 12:08

行動時間:8時間51分(休憩含む)

本日のおすすめ(お土産/温泉情報)

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