最近、天気が不安定。
予報では曇り/晴れだが風も強く、はたして山中ではどうなるか。
そこで、予定していたテント泊を止め、電車で日帰り低山歩きに出かけることにした。
正丸駅から伊豆ヶ岳、武川岳、武甲山、そして浦山口駅へと縦走するロングコース。
電車だからこそ可能な縦走で、気になっていた山々を歩きつくす欲張りスケジュールとも言える。
まずは正丸駅~伊豆ヶ岳。
このコースでのメインは何と言ってもクサリ場。
以前、クサリ場で検索したところ伊豆ヶ岳が候補にあがり、機会があれば歩いてみたいと思っていた山だ。
そんな伊豆ヶ岳のクサリ場は、昭文社のエリアマップ(2012年度版)を見る限り、通行止めになっている。
ただ、ネットリサーチをしてみると自己責任で登っている方もチラホラいるようなので、ここは実際に現地に行って確かめてみよう。
始発電車に揺られ3時間かけて正丸駅に着くと、いきなり「クマ注意」の警告ポスターが貼られている。
最近は全国的にクマの目撃情報が多いだけに、ビクビクしながら伊豆ヶ岳の登山口へと向かう。
登山口から登り始めて少し経つと、先行していた登山者がザックを下ろしラジオを出していた。
「さっきクマ出たよ。逃げて行ったけど。」
早速のクマ目撃情報。
こちらも慌ててクマ鈴を装備する。
【山歩きマメ知識】
ツキノワグマは基本的には温厚で人や家畜を襲う事はありませんが、出合い頭に遭遇すると危険です。
単独での山歩きでは特に、出合い頭の遭遇を避けるため、ラジオやクマ鈴でこちらの存在をアピールしましょう。
ただし、必要以上にクマ鈴を鳴らしていると、他登山者に「うるさい!」と言われる事があるのでこちらも注意。
チリンチリンとクマ鈴を鳴らしながら五輪山を越え、クマと遭遇することなく男坂、女坂の分岐点に到着した。
伊豆ヶ岳山頂へ行くには男坂と女坂のどちらかを通ることになり、クサリ場のある男坂方面には「落石危険」の看板が立ち、「どうしても行くなら自己責任で!」と警告されている。
「『自己責任』は女坂でも変わらないのでは?」と疑問に思いつつ男坂を登ってみることにする。
少し登ると早速クサリ場の登場だ。
これまで経験したクサリ場の中で最も長く、ずいぶん上までクサリが伸びているのが見える。
岩は滑りやすく、私の技術ではクサリもフル活用しないと登って行くことは困難そうだ。
前後に人がいないだけ気持ちの面ではラクだが、両手両足で確保しながら岩を落とさないように慎重に登ってゆく。
そして無事にクサリ場を登り切り、伊豆ヶ岳山頂へ。
「男坂のクサリ場、登ったぞー!」とテンションを上げることなく、小休止後、次なる目的地に武川岳に向かう。
まだまだ道のりは長いのだ。
武川岳へは一端、山伏峠まで下って舗装道路を横断しなければならない。
舗装道路を歩いていると、せっかくの縦走気分が途切れてしまうのか、「もう帰ろうかな」という気になってしまう。
小雨も降ってきたので尚更だ。
それでも黙々と武川岳へと向かっていく。
単なる意地でもなさそうだし、この辺りの心理状態は自分でも理解できないところだ。
○○岳のように「岳」が付くと、岩場の険しい山を想像してしまうが、武川岳は至って緩やか。
この緩やかな斜面が地味に体力を奪ってゆく。
できる限り息を乱さずに歩くこと1時間。
気分的には2~3時間歩き続けた感じで山頂に到着。
少しばかりのご褒美なのか、山頂からは辛うじて奥多摩方面の山々が見える。
と思っているとあっという間にガスの中。
この程度のご褒美で満足いく訳もなく、晴天時はどんな景色が広がっていたのかが気になり、地図を広げてひとしきり妄想に浸る。(不気味)
程良い妄想と軽い昼食タイムの後は、妻坂峠~生川を経て武甲山へ。
時間的にも余裕があり、大持山、小持山経由で行けば奥秩父の山々をたっぷりと満喫できそうだったのだが、少々面倒くさくなって予定を変更することなく生川経由で武甲山に行くことにする。
やはりこの辺りの心理状態が自分でも理解できない。
生川まで駆け足気味に下り、武甲山表参道に合流。
武甲山は人気があるらしく、ここまでの道のりに比べると登山者が多く年齢層も様々。
地元っぽい若者や親子連れが気軽に登っていることから、地元のシンボルとして愛されている印象を受ける。
とは言っても武甲山は日本屈指の石灰岩採掘場。
そのため山姿が変貌するほど採掘が進められ、標高は低くなり、台形だった山容が今では三角になっているとのこと。
この情報だけ聞くと、通りすがりの山歩き人としては少々寂しい感じもするが、地元の方はどんな想いなのか。
ちなみに武甲山のある横瀬町のマスコットキャラクターは「ブコーさん」。
そ、そのまま・・・?!
武甲山表参道を登り始めると「十二丁目」という石碑が目についた。
「○○合目」の代わりだろうか。
何となく写真に収める。
少し歩くと「十三丁目」の石碑が現れ、また何となく写真に収める。
また少し歩くと・・・(以下省略)。
何気に写真に収めてしまったのが最後、とことん撮ってやろうと意地になり、次々と現れる「○○丁目」を漏らすことなく写真に収めながら登ってゆく。
一体何に対して意地になっているのか、理解不能な己の心理状態に謎は深まるばかり。
撮り続けること「五十二丁目」。
とうとう山頂広場の武甲山御嶽神社に到着した。
神社前の広場は、ほのぼのとした雰囲気で賑わっていた。
いつの間にか小雨は止んでおり、快晴とは言えないながらも展望台からは秩父の街並みを見渡すことができる。
急ぎ足でここまでやってきた訳だが、最後はほのぼのと締めくくることができてよかった。
帰りは晴れ間が出てきたこともあり暑苦しい空気と闘いながら、一部急坂箇所のある裏参道で浦山口駅へと下山した。
ちなみに裏参道には「○○丁目」の石碑はありません。(よかった・・・。)
【オマケの町歩き】浦山口駅から、乗り換え駅の御花畑駅で下車。
駅近くの銭湯で汗を流してから帰宅することにする。
「御花畑(副駅名は芝桜駅)」とは何ともメルヘンチックな駅名だろうか、と思いながら町に出ると、今度はレトロ感漂う私好みの商店街がつらなっていた。
有形文化財として登録されている古い建物がいくつかあるようで、その建物の持つ雰囲気は勿論のこと、カンバンの書体にも味がある。
こんな映画のセットのような外観でも、まだまだ現役でちゃんと生活感があるところがいい。
町の至るところには、歴史ある建物とは打って変って極最近設置されたと思われる「開運の像」が点在しているのも見逃せない。
秩父市内には100体もの「開運の像」があるらしく、それぞれ御利益別にカテゴライズされている。
ちなみに私が目にしたのは「地蔵川のカッパ」で開運カテゴリーは「運動」。
うーん・・・意味不明。
素っ裸のおじいちゃんが寝ているので、とても店内はお見せできない。
商店街をフラフラ歩きながら、事前チェックしていた銭湯「クラブ湯」に行く。
怪しげな名前だ。
愛想のいい番台のおばちゃんに入浴料350円を渡す。
半壊している下駄箱はとても使えそうにない。
入ってすぐの脱衣所にはカゴが置かれているだけで、コインロッカーなんてとんでもなく、ロッカー自体ない。
そして風呂上りなのだろう、おじいちゃんが素っ裸のままソファーで眠りこけている。
浴場に入ると古そうなカランから水がボタボタと流れ落ち、壁には富士のペンキ絵が描かれている。
これこれ。
狭い脱衣所といい、浴場といい、これぞ私の想像していた『銭湯』のイメージだ。
理想の銭湯(か?)で汗を流してスッキリした後は、「食堂パリー」で食事することにした。
有形文化財に登録されている雰囲気ある店構えで、尚且つ現役営業中とあっては素通りする訳にもいくまい。
大衆食堂的なショーケースのサンプルを見る限り、どれも安くてシンプル。
その中でもひときわシンプルなチキンライス(600円)がよさそうだ。
店内には誰もおらず、テーブルでネコが寝ている。
突然の来客に少々戸惑うネコ。
奥から白髭のおじいちゃんが注文を聞きに出てくるなり、「チキンライスひとつお願いします」と、即注文。
何も言わず、おじいちゃんは厨房に戻り、黙々と調理を始めた。
厨房から聞こえてくる気配から察するに、おじいちゃんとは言え、段取り良く調理している感じがする。
歴史のある店舗だし、知る人ぞ知る名料理人なのかもしれない。
テーブル上のネコと戯れながら待つこと数分。
チキンライスが出てきた。
スゲェ。
サンプルのシンプルさは見る影もなく全くの別物。
いや、味は美味しいのだが、盛り付けがスゲェ。
アーモンド型にかたどられたチキンライス(ショーケースサンプルではこれだけ)に、多分余分にできちゃったチキンライスが脇に追加され、サラダ、バナナ、スイカがワンプレート内にひしめきあっている。
サービスなのか何なのか、「余ったから食べてって」と言う感じの盛り付け。
これで600円とは、色々な意味でお得だと心底思う。
食堂パリー、おすすめ。(でもネコ嫌いな方は多分ダメ)
こんな感じで、山歩きに負けず劣らずレポートしたくなる御花畑駅付近の町歩きだった。