2015年11月28日
奥秩父:日帰り
笠取山:落ち武者だなんて言わないで。

笠取山山頂に立つ。


数年前、笠取山山頂を目前にして素通りしたことがある。

奥秩父の笠取山は、多摩川(東京方面)、富士川(山梨方面)、荒川(埼玉方面)の分水嶺であり、山頂まで一直線に延びる山道が潔く魅力的なのだが、その時は疲労困憊の縦走途中で登る気力が全くわかなかった。

いずれ改めて登ってやろうと思いつつ、笠取山を後にしてから数年。
ようやくその時が来た。

と、大袈裟なリベンジ感は一切無く、天気が良いので気軽に行ってきます。

【分水嶺とは】
異なる水系の境界を『分水界』と言い、山頂や稜線では『分水嶺』と呼ばれます。言わば河川のスタート地点です。




本日は非の打ち所のない快晴です。


快晴!

非の打ち所のない快晴。
こんな天気ならもっと早起きすれば良かったと、欲が出てしまう程の快晴だ。

そして、冷たく澄んだ空気は視界が良く効き、尚且つ風も穏やか。
つまり、本日は絶好の山歩き日和なのだ。

作場平口に車を停めて、溢れ出るウキウキ気分を抑えながら早速山歩きスタート。

樹林帯に入ると張り詰めた緊張感のある冷気が肌を刺す。呼吸の度に喉の奥がヒヤリと刺激され、何となしに気持ちが引き締まる思いがする。ただ、悪い緊張感ではない。

しばらく歩くと、朝食に食べたおにぎりが燃焼し始めた。

燃料(おにぎり)の燃焼具合を調整するため、汗を掻かない程度にペースを落として歩き続けていると、吸い込んだ冷気が体の内側から冷やしてくれる。

冷気が心地よい山道の霜柱。


これが実に心地良い。
寒い時期の山歩き特有の心地良さだ。

沢伝いに緩やかに登り続け、一休坂分岐点からは尾根伝いの急坂を登る。

尾根に出ると一気に日当たりは良くなり、暑くはない透き通った日差しがまた心地良い。ただ、積雪も増えてきたので、知らぬ間の雪焼けには要注意だ。

快適なまま、笠取小屋に到着。煙突から煙が出ていないところを見ると、まだ誰もいないようで雪景色の中に沈黙している。

また帰りに寄ることにして登りを続行。笠取山へと向かう。

途中、『小さな分水嶺』と呼ばれる小さなピークがあり、ここが3つの河川(多摩川、富士川、荒川)を分かつ頂点となっている。『小さな』とは言え分水嶺としては立派だ。

そして、正面には笠取山がそびえ立つ。

落ち武者的な寂しさを感じる笠取山


数年前に訪れた時と変わらず、山頂まで一直線に延びる見通しのよい山道が印象的。明治時代には焼き畑が原因の山火事で、一面禿山になったこともあるらしいが、今ではまばらながらも樹木が再生している。そして過去の山火事を教訓に、延焼を防ぐ目的で山道の木は伐採されて防火帯となっている。

まばらな樹木で真ん中は刈り取られている笠取山。

その様子からは落ち武者的な寂しさを感じてしまう。そんな寂しげな笠取山にシンパシーを感じるのは、抜け毛が気になる40男の私。

大きな落ち武者(笠取山)に小さな落ち武者(私)が登る。

・・・哀し過ぎる。もう止めてあげて。

悲しみの涙をこらえて直登となる笠取山を登りきる。

クリアな視界で広がる山々には、うっすら雪化粧をまとっている山もあれば、既に雪で真っ白な山もある。その中でも富士山の存在は、悲しき想像を一蹴する程に美しく際立っていた。

続いて、西側に位置する笠取山の最高地点へ向かう。こちらは積雪で滑りやすい岩場となるため注意が必要だ。

笠取山の最高地点からも快晴の景色を楽しみ、しゃくなげのトンネルをくぐり下りて縦走路に合流。今朝から燃焼していた燃料(おにぎり)も切れてきたので、昼食をとるために笠取小屋へ戻ることにする。

多摩川の始まりとなる一滴を見ることができます。


その途中に『水干(みずひ)』と呼ばれる箇所があった。

『水干(又は水乾)』とは沢を遡った源流の起点となる場所を指す。そして、この笠取山の南側にある水干には水神社の祠があり、多摩川の始まりとなる一滴を見ることができる。

たった一滴とは言え、偉大な一滴。

この一滴は東京都を潤す水の原点とも言えるだろう。野性動物にとっては関係なくとも、都民じゃないからと言ってここで立ちションなどは気持ち的に御法度な場所だ。

次いで『多摩川の最初の流れ』が見られる水場道を下ってみる。

頭上に見える水干から40m程下っただけで、先程の一滴は早くも小さな流れとなっていた。言うまでもなく立ちションなど御法度気分。

水源に感謝しつつ笠取小屋へと戻ってきた。

持参した高カロリーの昼食を平らげて燃料補給完了。これで下山も問題ナシの状態になったところで下山の途に就いた。

下山は沢伝いのルートを利用。こちらがメインのルートだったらしく、緩やかで歩きやすいうえに整備もされている。そして沢沿いのため、下山するまでに水源の成長を間近に感じることができる。

水干の一滴は、いつの間にかサラサラと流れる小川となり、支沢や湧き水と合流しながら、太刀打ちできそうにない水勢の河川へと成長してゆく。

多摩川に限らず、すべての河川は山中の一滴から始まると考えるだけで、自宅の蛇口を捻るのが少し楽しくなると言うモノだ。

穴埋めのお題と化している看板。


作場平口まで下山すると、ふと、入り口にあった看板を思い出した。

『わすれるな○○○の後始末』

一部の文字が消えて、ちょっとした穴埋めのお題となっていた看板だ。分水嶺としての笠取山を歩いてきた私が思い付いた穴埋め言葉は・・・。

「抜け毛?」

何だ、そっちか。

漫画的山行記録

奥秩父の笠取山へ行ってきます。

笠取山は3つの河川の分水嶺でもあります。

作場平口から出発。

本日は非の打ち所のない快晴です。

穴埋めのお題と化している看板。

解説も設置されているので勉強になります。

冷たく透き通った空気感が心地よい。

一休坂分岐からは尾根を選択。

霜柱がにょきにょき出てます。

どんぐり帽子。

積雪はあっても穏やかな天気で歩きやすい。

コガラ?何にしても丸っこくて可愛い。

日陰では氷の造形が楽しめます。

笠取小屋までラストの登り。日陰は凍って滑りやすいので注意。

水場。まだまだ凍らず出ています。

まだ誰もいなくて沈黙の笠取小屋に到着。

上空には猛禽類らしき鳥が旋回しています。

もの凄く綺麗な笠取バイオトイレ。東京都税の力です。

改めて笠取山へ向かいます。

直立の霜柱。

途中には『小さな分水嶺』があります。

ここは多摩川(東京方面)、富士川(山梨方面)、荒川(埼玉方面)の起点となっています。

そして、奥に見えるのが・・・

本日の目的地、笠取山です。

その昔、焼き畑による山火事で禿山になっていたそうです。

今ではここまで復活。

・・・何だか落ち武者っぽい。

抜け毛の気になる40男としてシンパシーを感じます。

再度、笠取山。

もう落ち武者のイメージから離れられません。

哀しいイメージに負けず、笠取山を登ります。

笠取山に登頂。

大きな落ち武者(笠取山)に小さな落ち武者(私)が立つ。

山頂からは周囲に広がる大絶景が展開されます。

奥秩父主脈縦走路が国師ヶ岳へと続いています。

その名の通り白き雪をまとう白根三山。

そして丁度いい積雪具合の富士山。

視界がクリアなので景色も鮮明です。

続いて最高地点としての笠取山へ向かいます。

こちらは岩場になるので要注意。

笠取山山頂です。

シャクナゲのトンネルをくぐって下降します。

縦走路に合流したので笠取小屋へと戻ります。

途中には水干があります。

『水干(みずひ)』とは源流の起点となる場所で、ここでは多摩川の始まりとなる最初の一滴がみられます。

何ィ?最初の『流れ』も見られるって?

こちらが多摩川の最初の流れです。

頭上に見える水干の一滴から早くも小川となっていました。

昼食をとるために笠取小屋まで戻ります。

本日の昼食。

食後は笠取小屋の方と談話。

小屋内に散乱する懐メロレコードが良い雰囲気です。

さて、下山します。

帰りは沢伝いのルートで下山します。

水干の一滴は小川となり、

水かさを増し、

水勢も増しながら、

時には湧き水とも合流して、

下山する頃には立派な河川に成長します。

水干の一滴を見たことで水に対する意識が高まった気がします。

穴埋めお題の看板まで下山しました。私が思いついた穴埋め言葉は・・・。

抜け毛?

何だ、そっちか。

帰宅途中にこちらへ寄り道。

『名水わらび餅』は分水嶺の山行帰りに持ってこいのお土産です。

お土産に喜ばれそうな高級感です。

最後はやっぱり温泉。近所の『大菩薩の湯』に市民プライスで温まっていきます。

快晴のよい山行でした。

おわり

漫画的山行記録
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本日の山行情報

複数人山行/日帰り/ハイキング/マイカー登山

笠取山(かさとりやま)
標高1953m

本日のスケジュール

作場平口[着] 08:19 - [発] 08:20
 ↓ 106分 
笠取小屋[着] 10:06 - [発] 10:22
 ↓ 60分 
笠取山[着] 11:22 - [発] 11:24
 ↓ 20分 
水神社[着] 11:44 - [発] 11:50
 ↓ 36分 
笠取小屋[着] 12:26 - [発] 13:53
 ↓ 75分 
作場平口[着] 15:08 - [発] 15:08

行動時間:4時間57分(休憩含む)

本日のおすすめ(お土産/温泉情報)

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