何処の山を歩こうか迷った時には「日本百名山」。
山歩きに関心がない人でも聞いた事があるだろう「日本百名山」は、小説家である深田久弥氏の代表的な山岳随筆。
山名の由来や歴史と共に、著者の感性で綴られる山エピソードを読むと、百名山制覇を目標にしている訳ではなくとも歩いてみたくなってしまう山選びの参考書でもある。
そんな深田久弥氏はアンパン好きだったらしく、登山中に脳卒中で倒れ、終焉の地となってしまった奥秩父山地の茅ヶ岳にもアンパンを持参していたと言う。
そこで「『日本百名山』にはお世話になっています」と言う感謝の気持ちを込め、アンパンを持って秋の茅ヶ岳へ慰霊山歩きに出かけた。
今回は深田記念公園から谷間を登り茅ヶ岳、少々足を延ばして金ヶ岳まで行く。
帰りは尾根道を下る、ほんのりループとなるコースだ。
双葉SAで日の出を拝み、朝日に焼ける富士山を眺める。
快晴そのもので、秋の山歩きを満喫できそうな半面、ものすごく混みそうな気もする。
しかしそんな心配をする必要もなく、到着した深田記念公園は思いのほかひっそりとしており、登山客もチラホラ程度。
ゆったりと駐車場に車を停め、どのタイミングでアンパンを食べるかを考えながら(供養は?)出発した。
もう落葉しているかと思いきや、まだまだ紅葉の色彩を楽しめる秋の山道。
谷間のため陽は当たらなくとも、見上げると色付く木々の向こうにスカッとした青空が見える。
ここ数週間、仕事の都合で山に出掛けられず、悶々とパソコンとにらみ合っていた事もあって、首周りの血流が滞っている感じがしている。
こんな不健康状態から脱するべく、血流促進のためガツガツ歩いて身も心もスッキリさせるには絶好の山歩き日和となりそうだ。
事前に地形図で確認していたチェックポイントを通過して尾根に乗る。
更に少し登ると深田久弥氏の終焉の地があった。
金峰山を一望でき、振り返ると富士山も見えるナイスロケーションに慰霊碑は建てられていた。
慰霊碑にアンパンを供えて手を合わせる。
深田久弥氏にアンパンあれ。
更に登る事20分程で茅ヶ岳山頂に到着した。
360度、ぐるりと展望を楽しめる山頂は、そこそこの賑わいを見せている。
しかし、どう言う訳か単独行の中年オヤジさんばかり。
皆さん、深田ファンなのだろうか。
簡易双眼鏡で展望を楽しんだ後、次は金ヶ岳へ向かう。
ここも事前の地形図チェックで、ニセピークに惑わされる事なく順調に進んでゆく。
途中、石門や見晴らしの良い岩場など、意外と見どころがあってなかなか楽しめる区間だ。
アンパン撮影中の私をヨメに撮られる。思いのほか恥ずかしい!
楽しみながら金ヶ岳山頂に到着。早めの昼食として当然、アンパンを頂く。
私は山に行くと無性にパンが食べたくなる。
夕食はコメを食べるのだが朝昼となるとパンへの欲求が強く、ザックにギュウギュウと押し込まれて圧縮されたパンですら美味く感じてしまう。
きっと深田久弥氏も圧縮されてアンコが漏れちゃってるアンパンを美味そうに食べていたに違いない。
アンパンで空腹も満たされたところで茅ヶ岳へ戻り、下山することにする。
戻ってきた茅ヶ岳山頂では、団体の登山者なのか「昼食は山頂で!」とばかりに皆さんひしめきあって昼食をひろげていた。
数時間前の山頂と比べると尋常ではない混み具合に茅ヶ岳人気を思い知らされ、ササッと尾根道へと逃げ込む。
皆さん、やはり深田ファンなのだろうか。
下山の尾根道は日当たりも良くススキの生い茂った山道で、秋の山歩きとしては最高。
茅ヶ岳の山名由来も「茅:カヤ=ススキ」から来ているらしく、金色の尾根道を下る爽快さは素晴らしいの一言に尽きる。
山頂での賑わいが無かったかのように山道は穏やかで、通常、関節が軋みだす下山時でも、短い行程で荷物が軽い事もあって快適そのもの。
むしろ名残惜しいくらいだ。
最後は深田記念公園に立ち寄り、「百の頂きに百の喜びあり」の石碑を眺めて、本日の山歩きは終了した。
アンパン供養もできた事だし、深田さん、これからも「日本百名山」にお世話になります。