尾瀬に続いて、紅葉の山歩き。
今回はネットの紅葉情報を参考に金峰山、瑞牆山に決定。
テント泊にハマりつつあるヨメを連れて富士見平小屋で幕営。
初日に金峰山、翌日は瑞牆山のダブルピストンのスケジュールだ。
みずがき山荘近くの無料駐車場からテン場のある富士見平は1時間弱。
早い段階でテントを設営できるため、後は軽装のゆとりスケジュールで山歩きを楽しめるという訳だ。
まだ暗いうちに駐車場に到着したが、紅葉シーズンということもあって先客が意外と多い。
金峰山への最短ルートでもある大弛峠が土砂崩れで年内通行止めになっているため、こちらの登山口に集中しているのかもしれない。
うっすら明るくなったところで出発。
紅葉シーズン真っ盛りかと思いきや、色づきが悪く、色づく前に枯れてしまっている木が多い。
少々残念だが、敷きつめられた落ち葉に秋の雰囲気を感じながら予定通り富士見平小屋に到着した。
ネット検索する限り、この富士見平小屋の評判はすこぶる悪い。
検索すると強姦殺人事件という物騒な話が真っ先に出てくるほどで、事件後の管理人も酒癖が悪かったらしく余計に評判が落ちたようだ。
と言ってもこれは30年近い前の話。
現在は高校山岳部時代から一緒という山好きご夫婦が管理人となって、小屋もトイレもすっかりキレイになっている。
話を伺うと昨年まではお化け屋敷かのように荒れ放題だったらしく、そんな状態を知らない私にとっては信じられず、「ス!テ!キ!!」と言いたくなる雰囲気のよい小屋だ。
富士山の見えるテン場も広々。
ネットの事前リサーチでは「10張り程度」だったが、100張りくらい出来るのではなかろうか。
(ご主人曰く、200張り以上の時もあったそうな。)
まだ誰もいないテン場からベストポジションを選び、早速テントを設営して金峰山へと出発した。
大日小屋辺りまで来るとすっかり日が高くなり、雲ひとつない青空が広がっている。
風もなく穏やかで絵にかいたような秋晴れ、まったくもって最高の山歩き日和だ。
そんな晴天の下、巨大な『大日岩』がヌッと現れた。晴天もあって白い岩肌が良く映えている。そんな大日岩の下では登山者が休憩しており、軽く挨拶すると「この岩のてっぺんに登れるよ」と教えてくれた。
「マジっすか!」と、急にテンションが上がり、ザックを下して大日岩に向かう。
巨石の間で手足を突っ張り、何とか岩の上部へとよじ登る。
高所がヘッチャラなヨメも身軽に登って行く。
そして大日岩のてっぺんへ。
遮るものは何もなく、気持ちよく見渡せる眺望が広がっていた。
明日に登る瑞牆山、その向こうに見える八ヶ岳、そして南から北へと延びる南アルプスの山々。この壮大な景色を鮮明に見渡すことができるなんて最高の気分だ!
ぐるりと眺望を楽しんだ後は、巨石の上に寝転がって日光浴を楽しむ。
これもゆとりスケジュールだからこそできる贅沢な寄り道だ。
大日岩を満喫したところで金峰山へ再出発。
樹林帯を抜けて岩稜を登ってゆくと、いよいよ『五丈岩』が見えてきた。稜線上に石舞台古墳のように積み重なった五丈岩は、遠くから眺めても目に付く金峰山の象徴でもある。
良く見ると五丈岩のてっぺんに人が立っている。
「五丈岩にも登れるのか!」と思うと、先程の大日岩上での爽快感が蘇り、金峰山へ向かう足取りも軽快になってきた。
金峰山頂前の広場に到着。
ザックを置き、そそり立つ五丈岩を真下から見上げて一言。
「これ、登れる?」
途中までは簡単に登れそうだが、その先は自分の手足のみで登るフリークライミング(ボルダリング?)状態。
何人かの挑戦者はいたが、そのほとんどが登り切れずに途中から引き返してくる。
まずは実際に挑戦してみよう。
岩登りになると手足が短く、小柄な私にとってはあからさまに不利であることを実感してしまうが、冷静に判断すると登れないことはなさそうだ。
ただ、大日岩と違って足場が狭く、高度感もあるため半端なく怖い。
これが地上1m程度であれば、ひょいっと登れそうだが、落ちたら命にかかわるだろう高さを意識せずにはいられない。
基本ビビリの私だが、恐怖心に負けたくない思いと少しばかりの好奇心で五丈岩に挑む。
岩を見上げてあっちへウロウロ、こっちへウロウロと、登れそうなルートを探す。登れるルートを見つけられず諦めかけたところ、高所による恐怖心ゼロのヨメが登攀ルートを発見。
下から見ると手掛かりはなさそうだが、手を伸ばすと指を掛けられる程度の小さい溝があった。おそらく先人達が用意してくれたのだろう。何にしても体重を掛けられる溝があるのは心強い。
溝に手を掛けて一気に全体重を引き上げる。
そして五丈岩のてっぺんへ。
五丈岩のてっぺんから南アルプス、その向こうにちょっと中央アルプス。
五丈岩からの景観は素晴らしいの一言で、「イヤッホー!」とでも叫びたい気分だ。ただ、到達の達成感、登りで味わった恐怖心、これから下りる不安等々、様々な感情がごちゃ混ぜになって心拍数は急上昇。
何とか平静を装いながら景観を楽しみ(楽しんでる?)、怖い怖いと言いながらも無事に五丈岩を下りてきた。
五丈岩から下りた安堵感をもって昼食と軽い午睡。
急上昇した心拍数もすっかり落ち着いたところで、改めて金峰山頂へ向かう。
五丈岩から5分程度の金峰山山頂も見事な眺望であることは間違いないのだが、大日岩、五丈岩での岩登りのインパクトが強すぎて、山頂テンションになることなく静かな気持ちでの登頂となった。
そして静かな気持ちのまま下山を始める。
下山途中に立ち寄った金峰山小屋にいるワンコと触れ合い、テンションが少しばかり上昇したが不思議と気持ちは静か。
静かすぎて下山中に眠くなってきた。
異様に眠い。
ここで体調の異変に気が付く。
これってもしや高度障害?!
多少睡眠時間は短い気もするが寝ていないわけでもないし、ゼイゼイと過呼吸で登っていたわけでもない。
あるとすれば・・・岩登りの興奮と恐怖心で心拍数が上昇したことぐらいか。
原因は何であれ睡魔と闘いながら何とかテン場に戻ってきた。
食欲もイマイチ沸かず、シュラフに潜り込んで眠ること1時間。
起きるとウソのように体調は全快。猛烈に腹も減っていた。
何が原因だったのか分からないが、夕食を腹一杯食べてお客さんで賑わう富士見平小屋にコーヒーを(ヨメはホットワインを)飲みに出かける。
富士見平小屋で出してくれるコーヒーはボブ・マーリーの息子が手がけたオーガニックコーヒーらしく、深い苦味だが後味スッキリで実に飲みやすい。
沢の水を使っているから尚のこと美味いのかもしれない。
そんなコーヒーをカウンターで飲みながら、管理人のご夫婦からたっぷりと話を伺うことができた。
途中、愛知からお越しの土建屋ご夫婦(?)も一緒になり、お酒も入ったこともあっていよいよ盛り上がる。
あまりにも楽しすぎて、宿泊客に「もう少し静かに・・・。」と、注意される始末。
スイマセンでした・・・。