以前、奥多摩の山中で出会ったYさんのお誘いを受けて棒ノ嶺(棒ノ折山)へ。
ほとんど人のいない破線ルートで出会い、こうして山行のお誘いを受けるのだから、縁とは異なモノだ。
健脚のYさんは山岳会(?)を立ち上げており、本日は2名の山岳会メンバーも参加するとの事。
どのような山行スタイルなのか見当もつかないが、恐らく皆さん健脚揃いなのだろう。
果たして、単独でマイペース、そして節約山行(もとい貧乏山行)をモットーとしている私は付いてゆく事ができるだろうか。
不安と興味を伴いつつ出発した。
本日のスケジュールは川井駅からバスに乗り継いで八桑バス停で下車。
そこから岩茸石山へ登り、尾根伝いに棒ノ嶺、そして滝ノ平尾根で秩父側へ下山といった内容。
川井駅で皆さんと合流、軽い挨拶をして出発した。
八桑バス停で下車したのは私たちだけ。
ここから岩茸石山への山道はあまり利用されていないようだ。
それを証明するかのように、通りすがりの地元のおばあちゃんから、「あら、珍しい」と言われる。
それでも、縁側でくつろいでいた地元の方から、「いってらっしゃーい」と挨拶されると、田舎のばあちゃんに見送られて裏山へ遊びに行った幼少の記憶が蘇り、何だか懐かしい気分になる。
風がなく好天の夏日となった本日も、谷間の山道に入ると、暑さがいくらか和らいだ。
花の知識に長けたYさんの花解説も挟みながら、今回初めてお会いする二人のHさんの山歴を伺いながら歩く。
Yさんの健脚振りは、以前の山行(酉谷山:2014/04/27)で既に証明されている。
Hさんもかなりの健脚。(以降、H健さん)
Hさんは久し振りの山歩き。(以降、H久さん)
つまり、H久さんの歩行ペース次第で私のペースも決まりそうだ。
谷間の山道から尾根に乗るために急坂を登る。
H久さんは本当に久し振りの山行のようで、かなり呼吸が乱れてきた。
と同時に、私の呼吸も維持できるギリギリのラインだ。
健脚のお二人は、案の定ケロっとしている。
この状況を客観的に見ると、今回の山行はある意味、H久さんに救われたのかも。
登りはじめて1時間程で岩茸石山に到着。
岩茸石山は奥多摩入門で人気の高水三山のひとつ。
それだけに、ここから棒ノ嶺への主稜線上は登山者が多くなる。
そして、トレイルランナーも多い。
岩茸石山山頂で小休止後、棒ノ嶺へ向けて出発すると、何人かのトレイルランナーに追い越された。
ボッ。
気のせいだろうか。
Yさん、H健さんのお二人から、闘争心に火を灯す着火音が聞こえた気がした。
いや、気のせいではない。
走らずとも歩行スピードが増し、みるみる内に距離が開いていく。
テンポが良く早い。
そんな健脚のお二人を見ながら、「H久さん、共に行きましょう」と密かに思う。
この区間は、多少のアップダウンがある程度で、比較的歩きやすい。
ただ、樹林帯のため眺望はなく、今の時期は少しばかりの山ツツジが見られる程度だ。
ここは淡々と歩くのみ。
黒山からは、後40分程登れば本日の目的地である棒ノ嶺に到着だ。
この区間だけ、健脚のお二人のペースに合わせてみる事にする。
己の限界を知るためにも何事も挑戦だ。
健脚のお二人は登りになってもペースは落ちず、呼吸も安定している。
先行している他の登山者を次々に抜き去り、テンポよく登ってゆく。
そして、私の呼吸は、「大丈夫?」と思えるほどに乱れまくっている。
呼吸を乱しながらも何とか食らい付いてゆき、登山客で賑わっている棒ノ嶺山頂に到着した。
眺望の良い広々した山頂では、老若男女問わず、様々な登山者たちがお昼を楽しんでおり、ピクニック感覚のほのぼのした雰囲気が漂っている。
そんな雰囲気の山頂で乱れ切った呼吸を抑えて平静を装う私。
わざわざ『平静を装う』ところに、まだ限界を認めようとしない、もう一人の自分がいるようだ。
まずは呼吸を整え、日陰の涼しい場所で昼食の準備に取り掛かった。
Yさんたちは慣れたもので、段取りよく汁物を作っている。
汁物を温めている合間に、ソーセージを炒めて冷えた缶ビールで乾杯。
ぷっっっっはーーっ!
ウマイッ!!
これぞ単独山行では味わえない雰囲気。
食事時こそパーティー山行の醍醐味ではないだろうか。
純然たる下戸で、一切のアルコールを受け付けない私の身体も、この時ばかりはビールの喉ごしを堪能する事ができた。(※二口だけですが)
食後は、山行時に必ず淹れると言うYさんのドリップコーヒー。
山中で飲むドリップしたてのコーヒーはまた格別。
ご馳走さまでした。
後片付けをして、用事のある私は先に下山させてもらう。
下山ルートは秩父側のさわらびの湯へと下る。
このルートは歩きづらい階段(?)が多かったが、お腹も満たされ荷物も軽くなった今の私にとっては問題なしだ。
子供たちの格好の遊び場となっている『岩茸石』を通過し、更に下ると『ラジコングライダー』で遊ぶ大人たちがいた。
見晴らしの良い斜面から飛ばして遠隔操作する、何やらお金のかかりそうな大人の遊びだ。
着陸はどうするのか聞いてみると、山中の藪に落とし、道なき斜面を下って1~2時間かけて回収するらしい。
自分で投げた棒を自分で拾いに行くような、なかなかマゾ的な大人の遊びなのだな。(違う?)
その後も軽い足取りで軽快に下山。
温泉に浸る時間も確保し、スッキリして帰路に就く事ができた。
今回は、私にとってあまり機会のないパーティー山行を楽しめた感じがある。
何と言っても、ビール、食事、そしてコーヒーがあってこそ。
それらを共有できるのがパーティー山行ならではの楽しみ方だな。