2015年12月26日
奥秩父:1泊2日
破風山避難小屋:見知らぬ人だらけの山小屋忘年会。

木賊山と破風山の鞍部にある破風山避難小屋へ。


登山者には健康な方が多い印象がある。健康だからこそ出来るのかもしれないが、中には登山を始めて病気を克服した方もいる。何にしても山中で見かける方は健康そうだ。

そして、良く言われるのがコレ。

「登山を始めて風邪をひかなくなった」

休日前で気が緩むと体調を崩すことが多かった私も、山歩きを始めて風邪をひかなくなった実感があった。「平日は仕事、休日は山歩き」と、常に気を張っていた状態が良かったのかもしれない。

しかし、慣れによる気の緩みか、最近よく風邪をひいている気がする。つい最近も風邪気味になってしまい、老朽化した銭湯のカランのように鼻水が垂れ落ちる状態に悩まされていたところだ。

寝込むほど悪化しないとは言え、これではいけない。緩々になった気を引き締め直し、良い意味の緊張感を保つためにも山歩きだ。

そこで用意したのは、破風山(笹平)避難小屋だけを目的地としたのんびり宿泊プラン。

って、緊張感ナシか。




西沢渓谷駐車場からスタート。


同行のヨメから起こされ、1時間遅れで自宅を出発。それでも破風山避難小屋にしか用のない本日は、時間的なゆとりがある。

そんなことで緊張感を持てるのか?

そんな自問自答も心配無用。何故なら今回のルートは初めて歩くバリエーションルートだからだ。

【バリエーションルートとは】
一般登山道として紹介されないルートを指します。藪こぎするような道もあれば、一般山道のように歩きやすい道もあり、その状況は多様です。情報が少なく現地判断を要するため、地形図などで事前にルートを調べましょう。


3週間前に破風山避難小屋で出合ったキコリさん(仮称)に、直接登れて最短となるルートを教えてもらっている。地形図で確認すると、登りやすそうな傾斜の尾根ルートが浮かび上がってきた。キコリさんの話ではリボン(目印)もあって迷うことは無いらしい。

とは言え、バリエーションルート。

小心者の私はいつになく慎重で、ヨメの同行もあって気は緩んでいない。寝過ごしはしたが、悪くない緊張感を保って西沢渓谷から山行スタートだ。

バリエーションルートの尾根道を進みます。


快晴の西沢渓谷駐車場には数台の車が駐車してあった。

テント泊しそうな荷物を背負った若い登山者を見かけたが、年の瀬のこの時期に破風山避難小屋で宿泊なんてモノ好きは我々だけだろう。そう思いながら近丸新道へと向かう。

今回歩くバリエーションルートは、近丸新道の途中から尾根に取り付き、鶏冠山林道東線へ合流。そのまま林道の終点まで歩いて再度尾根に取り付いて直接、破風山避難小屋まで登るルートとなる。

目印となるリボンは参考程度に考え、地形を確認しながら目標の尾根に取り付く。地形図からの情報通りに歩きやすい斜度で、キコリさんの言っていた通りに目印は明確だった。

迷いようが無い尾根を登って鶏冠山林道東線に合流。ここからはしばらく林道歩きとなる。

ただ落石などが多いらしく、山側には大きめの石や土砂が堆積している。ガードレールが林道の外に激しく押し曲げられている箇所もあり、積雪時の雪崩易さも想像に難しくない林道だ。

遠くに木賊山から破風山の稜線が快晴の青空を鮮明に区切っている。その稜線の鞍部に破風山避難小屋はあるのだが、まだまだ遠くに見える。

風に追われて転がるように足元を舞う枯葉に先導されながら進むと、いつの間にか目標の鞍部が頭上にまで迫っていた。そして、鶏冠山林道東線の終点までやって来た。

上へ上へと登ります。


ここから再度、尾根に取り付く。

しゃくなげのトンネルを越えると、尾根らしい地形から笹原に覆われた平面の傾斜地へと変わる。うっすら残る踏み跡も参考に、目標物を決めて上へ上へと高度をあげてゆく。

次第に視界は開けてゆき、前方の視界が全開したところで本日の宿泊地となる破風山避難小屋が見えてきた。

あれ、小屋の前に誰かいる。
何だか見覚えがある。

ん?キコリさん?

何の巡り合わせか、3週間前に今回のバリエーションルートを教えてくれた当人との再会だった。お互いに、誰もいない静かな避難小屋泊を想定してやって来たのだが、偶然の再会に驚き、素直に喜ぶ。

相変わらずのキコリさんは、避難小屋の管理と今晩の薪を用意していた。私もノコギリとナタを持参してきたのだが、キコリさんの道具の前にはお遊びみたいな代物で出すのが恥ずかしい思いがする。

それでも折角なのでお手伝い。

薪割りは注意しないと大怪我のもと。


小屋の中で乾燥させてある丸太を薪用にノコギリで切り落とす。薪割りは手斧を持っているキコリさんにお任せして、その間に往復20分程の水場に水汲みに行ってくる。

ここの水場は100m程下ったところにあるのだが、この付近で最も険しいと思える山道状況に、間違っても雨上がりには行きたくないと心底思う。サンダルでは無理があり、サブザックを背負って両手フリーが推奨の水場だ。

薪と水の用意が整い、ダルマストーブに火を入れる。これで、今宵も暖かな小屋と温かな食事が約束された。

そうこうしていると、雁坂方面から3人の登山者と単独行者がやって来た。日が暮れ始めた頃には駐車場で見掛けた2人の登山者もやって来た。

雁坂方面から、甲武信方面から、そして直登してきた私たちそれぞれが、誰もいないと期待して破風山避難小屋に集結したことになる。何だか可笑しな偶然だが、最も驚いたのは一番乗りしていたキコリさんだっただろう。

こうして、偶然に集まった見知らぬ人だらけの山小屋忘年会が開催された。

皆さん気の良い方たちで、尚且つ、年齢など関係なく山歩きの大先輩だったことも判明。星空や破風山から昇る満月の撮影会を挟みながら、和気藹々とした避難小屋での夜は穏やかに更けていった。

上から夜が訪れます。


個人の所有物では無いとは言え、これまで破風山避難小屋を有志で管理し、穴場的にひっそりと楽しんでいたキコリさんには少々申し訳ない気もする。ただ、お酒や食事を振る舞い、振る舞われているキコリさんの楽しげな様子が印象的だった。




水晶山から日が昇る。


翌日、早朝の散歩へ。

小ピークに登って、今日も変わらず昇るだろう朝日を待つ。

しばらくして朝焼けに染まる山陵から御来光が訪れる。

当たり前に目にしている太陽も、寒い山中から眺めるとその暖かみが身に沁みて、朝日が射し込む瞬間は寒さすら忘れさせてくれる。

と、そう思えるのは一瞬。

すぐに寒くなって、そそくさと暖かな小屋へと引き返して朝の散歩は終了。

本日は何処にも登る予定が無いため、キコリさんの提案で一緒に下山することとなった。

山菜やキノコなど、山中の動植物に詳しいキコリさんから色々と教えてもらいながら楽しく下山。「ガイドでもしようかな」と少年のように目を輝かせているキコリさんからは、その柔軟さと前向きさ、そしてお茶目さを見習わなければな。

目指すは手斧も似合うお茶目さだ。

漫画的山行記録

3週間前に破風山避難小屋で出合ったキコリ(仮称)さん。

キコリさんから破風山避難小屋へ直接登れるバリエーションルートを聞いていたので実際に行っていみます。

天気が良さそうな西沢渓谷駐車場から出発。

良く見たらキツネが2匹いた。

今回のバリエーションルートは近丸新道の途中から尾根に取り付きます。

目印も参考にしますが基本は地形図を確認。

一般山道のように歩きやすい尾根道です。

木製エアーズロック。

下方には広瀬ダム。

鶏冠山林道東線に合流。なんて目印だ。

鶏冠山林道東線は落石が多そうなので注意。

破風山避難小屋はあの鞍部にあります。

鶏冠山林道東線終点。左側から尾根に取り付きます。

シャクナゲのトンネルをくぐってゆきます。

尾根から笹原に覆われた平面の傾斜地に変わります。

富士山眺めて一休み。

右手に破風山を眺めながら登って、

破風山避難小屋に到着です。

何の巡り合わせか偶然にもキコリさんと再会!

相変わらずキコリさんは、有志で避難小屋を管理していました。

水場に水汲みに行ってきます。

往復20分程度ですが、サンダルでは無理があり、サブザックで両手フリーが推奨です。

細いですが水ゲット。

水場から登り返すのも一苦労。

この突き抜ける青空の稜線まで戻ってきました。

ちなみに山で汲んだ水は凍りやすいようです。

その違いを小屋に置いてあった水で確認してみましょう。

左が下から持ってきた水道水、右が山中の水場で汲んだ水。

凍り具合がまるで違います。

さて、薪の準備。

薪割りはキコリさんにお任せしてダルマストーブに火を入れます。

日も暮れ始めたので、

山小屋忘年会の始まりだ!

外では日が落ちて、上から夜が訪れます。

破風山から昇る満月。

翌朝。

御来光を拝みに朝の散歩へ。

期待して待ちます。

水晶山からおはようございます。

今日も変わらず日は昇りました。

枯れ木も朝日を浴びてます。

お世話になりました、と軽く掃除してから下山します。

昨日登って来た道を下ります。

シャクナゲのトンネル箇所。

来春用のツボミがスタンバイしています。

鶏冠山林道東線まで下りました。

美味しい水場で一息。

来春まで氷漬け。

少し前のクマの爪跡や、

ヤドリギや、

最近のクマの爪跡を見ながら、

無事に下山。

せーのっ、「「「お疲れっ!」」」

無事に下山して、帰りは寄り道。

まずは山梨県名産で干し柿の最高峰と言われる枯露柿を作っている妙見食堂。

こちら天日干し中の枯露柿。

こちらは柿の皮。

出来あがった枯露柿は大事に箱に入れられます。

次の寄り道は武田信玄の葬儀が行われた恵林寺へ。

武田菱と門松は素通りして、

コレが目的。

境内の庭園を眺めながら優雅に頂きます。

最後ははやぶさ温泉へ。

加水・加熱・塩素投入もしない天然掛け流し温泉で、源泉がどばどば出てます。

と言うことで2015年も残りわずか。

最後まで良いお年をぉおッ!

おわり

漫画的山行記録
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本日の山行情報

複数人山行/1泊2日/避難小屋泊/バリエーションルート/マイカー登山

破風山避難小屋(はふさんひなんごや)
標高2074m
別名:笹平避難小屋

本日のスケジュール

西沢渓谷駐車場[着] 09:18 - [発] 09:20
 ↓ 22分 舗装道路
近丸新道分岐点[着] 09:42 - [発] 09:43
 ↓ 68分 
林道分岐点[着] 10:51 - [発] 10:52
 ↓ 40分 鶏冠山林道東線
林道終点[着] 11:32 - [発] 11:43
 ↓ 96分 
破風山(笹平)避難小屋[着] 13:19 - [発] 13:59
 ↓ 9分 
水場[着] 14:08 - [発] 14:38
 ↓ 10分 
破風山(笹平)避難小屋[着] 14:48 - [発] 08:21
 ↓ 46分 
林道終点[着] 09:07 - [発] 09:08
 ↓ 43分 鶏冠山林道東線
林道分岐点[着] 09:51 - [発] 09:52
 ↓ 43分 
近丸新道分岐点[着] 10:35 - [発] 10:35
 ↓ 20分 
西沢渓谷駐車場[着] 10:55 - [発] 10:55

行動時間:6時間37分(休憩含む)

本日のおすすめ(お土産/温泉情報)

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