この時期、シュラフなしの避難小屋泊はまだまだ辛い。
寒さで目が覚めてしまったついでに、避難小屋の外にあるトイレに行く。
真っ暗闇のトイレで用を足していると、トイレ周辺から無数の気配が。
恐る恐る外に出てみると、ギラリと光る眼に囲まれていた。
この光景にビクっとすると、無数の光る目もビクっとして散らばっていった。
よく見ると野生のシカだ。
10頭くらいの群れがトイレ付近をウロウロしていた。
「シカせんべい出せよ」と太太しい飼育シカと違い、野生味溢れる緊張感を持っている。
なんだか「山」にいることを実感。
夜明け1時間前くらいになると、他の登山者も起床してモゾモゾと行動を始めた。
避難小屋で過ごした他の登山者には、日本100名山中98名山を制覇したツワモノ、ちょっとオカマっぽいお世話好き、『日本の名山』を読み耽っている読書家(?)など、様々な方が集っており、皆、ソロ縦走者で、私の山男のイメージには結びつかないほどに親切で紳士的だった。
※私の山男のイメージ:「これ食え!さぁ飲め!ガハハハ!」(ほとんど山賊)
そんな先輩登山者たちは別れを告げて早々と出発。
こちらも簡単な朝食を摂って、夜明け前に出発した。
ひんやりと心地よい空気の中、日陰名栗山の尾根づたいを進み、日の出を拝む。
目的地の雲取山まで行こうと思えば行ける時間だったが、ヨメの体調があまり良くないため、七ツ石小屋で休憩がてら様子を見ることにした。
七ツ石小屋についてほとんど調べていなかったが、行ってみると簡単な食事あり、物品販売あり、トイレ(有料)ありと快適そのものだ。
避難小屋で過ごしたせいか、当たり前のように並ぶ物品に「物が売ってる!」とすこぶる感動した。
挽きたてコーヒーと自家製食パンのトースト。じっくり焼きます。
この七ツ石小屋を管理している兄さんもなかなかの変わり者でよかった。
聞くところによると過去に徒歩、自転車で全国を放浪していて、数ヵ月後に今度は「バイク(カブ)」で放浪する予定という。
放浪ラブ!の私もウズウズしてしまうような話だ。
ヨメのお楽しみだった「山で豆を挽いて淹れるコーヒー」を飲みながらくつろいでいると、通りすがりの方が「あら、おいしそう」と声をかけてくれた。
もてなしラブ!のヨメは、すかさず「少しいかがですかー」と勧める。
こんな調子で通りすがりの方々からも色々な山トークを聞くことができた。
持参した自家製パンと挽きたてコーヒーを振る舞うことができたヨメは、今朝の不調が嘘のように満足顔。
たっぷり休憩できて不思議な満足感を得たまま鴨沢へ抜けるコースで下山した。
またどこかの山でお会いしましょう!(無断掲載?!)
無事に下山して奥多摩駅方面のバスを待っていると、突然車が止まり「駅方面かい?」と逆ヒッチハイクのおじさんが現れた。
このおじさんがなかなかの話し上手で、「料金は気持ち程度で構いませんよ、へへへ」と言われても嫌な気分にさせない人徳を持っていた。
すきあらば何でも商売にするタイプだが、「ビジネス」ではなく「商い」っぽいところがフーテンっぽくてイイ。
これは有り難いとばかりに乗せてもらったわけだが、よくよく考えると無警戒過ぎたか?
何にせよ、おじさんおすすめの温泉を割引料金で入り、奥多摩名物へそまんじゅうを食べて、すっかり体力回復。
ふと思い返すと、今回の山行中に出会った人々と名前や住所などの情報交換(いわゆる名刺交換的なこと)を全くしていないことに気がついた。
○○から来た人、○○へ行く人。
これだけで十分。
実にシンプル。
またどこかの山でお会いできたらいいですねー。
そういえば目的だった雲取山に行ってないがまた今度でいいかー。