2014年5月31日
那須連山:1日目
朝日岳:荒野の葛藤。これでもオレたち大人なの。

朝日岳の肩から見上げる朝日岳山頂。


友人Kと那須岳の火山地帯歩きへ。

那須岳の北西部には、徒歩でなければ辿り着けない三斗小屋温泉がある。
そこには2軒の温泉宿があり、そのひとつである『煙草屋』には小さいながらもテン場があるとの情報を得た。
テント泊ができて、尚且つ山中の秘湯にも入れるなんて嬉しいではないか。

が、事前に問い合わせたところ、既にテン場は予約で一杯。(※2~3張りしかできません)
そして、新婚である友人Kの奥さんも同行する予定だったが、キャンセルとなった。

男二人の山歩きとなった今、当初の予定であった三斗小屋温泉の宿泊を変更して、避難小屋泊、ビバーク上等なスケジュールで出発した。

まあ、雑だ。




那須ロープウェイでラクラク。


黒磯駅で友人Kと合流して、車で那須ロープウェイに向かう。

到着した那須ロープウェイの駐車場は既に満車状態。
タイミング良く入れ替えの車があり駐車はできたものの、人気の観光地である事を思い知らされる。

「那須岳(茶臼岳)と言えば紅葉シーズン」と、勝手なイメージを持っていたが、新緑のシーズンにもなると毎週のように混雑するそうだ。
紅葉シーズンでは、更に混雑するのだろう。

標高1000mを越えているとは言え、駐車場は暑い。
快晴の本日は夏日の日差しとなっていた。

もう10時を回っている上にこの暑さだ。
「一気に標高を上げてしまおう」と、那須ロープウェイを利用する事で友人Kとの意見は一致した。

汗だく徒歩40分のところ、ロープウェイを利用すれば汗ばむ事もなく約4分。
素晴らしきかな文明の利器。

山頂駅で身支度を整え、私にとって初めてとなる那須岳エリアの山歩きスタートだ。

【マメ知識】
那須岳とは茶臼岳をはじめとする那須連山の総称です。
最高峰は三本槍岳の標高1916.9mです。


茶臼岳への登り。


まず目指すは茶臼岳。
火山帯らしい雰囲気のザレた斜面を登り始める。

快晴で日差しは強いのだが、乾燥しているせいか暑さは感じられず心地よい。
仮に暑くても、雄大に広がる茶臼岳の岩山を前にすれば、カメラ撮影に夢中になっていたに違いない。

山頂駅と茶臼岳の中間地点である『大岩』までやって来た。
何の捻りもなく見た目通りの『大岩』から下界を見下ろすと、登山者は豆粒のように小さく、茶臼岳自体が神々しいからか、神にでもなった気分だ。

ひとしきり神様気分に浸ってから、登りを続行。

ここからはザレ場からガレ場へと変わり、浮き石だらけの険しい登りとなる。
登山者が多く、普通の観光客もいるため、落石には注意が必要だ。

難無く茶臼岳山頂に到着。

岩だらけの山頂には那須嶽神社の石祠があり、その傍らには多くの観光客が登っただろう見晴台のような岩場があった。

当然のように私も登る。

岩場の上からの眺めは壮観の一言に尽きる。
火山帯の荒々しい景色もあって、天地創造主にでもなった気分。

神様気分、再びだ。

キリッ。茶臼岳山頂で神様気分。


火口を隔てて北側に対峙する朝日岳は、ドッシリとした茶臼岳とは異なり、黄褐色で鋭利な山頂が空を突き上げている。
これからあの鋭峰に登ると思うだけでテンションがあがる。

まずは茶臼岳を下り、峰の茶屋跡避難小屋で昼食タイム。

友人Kのスマホには、奥さんから「ランチ、食べてまーす」と、オシャレで美味しそうな写真が届いている。
それを受けて友人Kは、食べかけのパン、コップ半分の水、砕けたカロリーメイトと、見て呉れがさも惨めったらしい写真を送り、男二人山行の雰囲気を報告していた。

こんな食事でもありがたく頂けるのが山行の醍醐味(か?)。
昼食を済ませ、改めて朝日岳へと出発した。

剣ヶ峰のトラバース道を進むと、灰色だった岩場から黄褐色の岩場へと周囲の色見が変わってきた。
そこには日本らしい情緒はなく、殺伐とした無法地帯的な雰囲気が漂っている。

ここはウエスタンの世界観だ。

岩陰からライフルで狙われても、大きなホコリ玉のような例のヤツがカサカサっと転がっていても違和感は全くない荒野の世界。

噛み煙草を口に含んだ登山者(全員髭面)が、通り過ぎ様に睨みを利かせてツバを吐き捨てる。
こんな光景があっても不思議ではないこのエリアに、多くの男子はときめきを感じるはず。
私も西部開拓時代のガンマン気分となり、素早く抜かれたカメラで異国情緒溢れる景色を撮影する。

荒野を進む男。


茶臼岳からここまで岩場歩きです。


岩場をトラバース。

ウエスタンエリアを抜けて、朝日岳の肩に到着。
ここにザックをデポ(残置)して、鋭峰である朝日岳山頂に登り詰めた。

山頂から南側に見える茶臼岳の存在感がとにかく凄まじい。

その重量感ある山容には、人類の歴史程度では足元にも及ばない荘厳さがあり、いつかは噴火する活火山特有の『生命力』を感じられる。
この圧倒的な生命力を感じさせる茶臼岳が噴火したら、とんでもないエネルギーを放出しそうだ。

こんな壮大な景色を前に、私の密かな趣味である『他人の記念撮影』を少量のエネルギーで楽しみ朝日岳を後にした。

朝日岳山頂に到着。


重量感ある茶臼岳。


1900m峰から朝日岳(左)と茶臼岳(右)。

夕暮れ時が近づくにつれて赤みの増す岩肌。


本日は快晴だが雷注意報が出ており、夕方頃に一雨降られる心配があった。
しかし、周囲を見渡す限り天気が崩れそうな気配はなく、この分だと夕焼けも見れそうだ。

三本槍岳まで行くと遅くなるため、1900m峰から引き返し、夕焼け観賞地として選んだ峰の茶屋跡避難小屋まで戻ってきた。

まだ日は高いが、朝日岳へと続くウエスタンエリアの岩肌は、夕暮れ時が近づくにつれて赤みが増している。
後は夕焼けショータイムの開演を待つばかり。

コーヒーを飲みながらくつろいでいると、「ここで宿泊したらラクだよね」という話になった。

この『峰の茶屋跡避難小屋』は緊急避難時のみ使用と聞いている。
そのため、ここから20分ほど下った那須岳避難小屋を本日の宿泊地として予定している。

夕焼けまでくつろぎのひと時。


どの避難小屋も宿泊施設として利用するのは間違っているとの考え方を時折耳にするが、私としては利用者のモラルや一点集中による環境への影響から、表向きには開放していると言えないのだろうと解釈している。
つまり、荒らすような行為が問題であり、利用自体は問題ないという考え方だ。

ただ、峰の茶屋跡避難小屋に関しては別の問題がある。
活火山として茶臼岳から噴出している有毒ガスだ。

風向きが変わり有毒ガスが流れてくる可能性から、宿泊のような長時間の滞在が禁止されているのではないだろうか。(※想像です)
実際、峰の茶屋跡避難小屋は噴出口から近く、「ブシュー」と噴出音が聞こえる位置にある。

通常ならば、予定通り那須岳避難小屋まで下るケースだ。
しかし、本日は学生時代からの友人と男二人山行。

「下るの面倒じゃね?」
「だよな、面倒だな」

「「・・・」」

「(ガスは)大丈夫じゃね?」
「だよな、大丈夫だよな」

ガシッ!(意見一致による固い握手音)

お互いにダメだろうと思いつつ、安易な選択肢を優先させてしまう悪例ここに有りだ。
それでも、それぞれの葛藤があり、夕日を眺めたら予定通り那須岳避難小屋まで下る事となった。

着地しそうになった(と言うか完全に着地した)結論から再び考え直すなんて、大人になったモノだ。
お互い伊達に所帯を持ってはいないな。

本日の宿泊地が確定したところで周囲が夕暮れ色に染まってきた。

他には誰もいない那須岳の夕暮れ時。
そこには、大はしゃぎで写真撮影に興じる大人とは思えない男二人が居た。

※一応、二人とも所帯持ちです。

夕焼けショータイム。


今日という日よサヨウナラ。


落日してもなお赤く染まる空に細い三日月(既朔:きさく)が浮かびます。

夕暮れの時間帯を稜線上で過ごし、落日してもなお赤く染まる空を眺めながら那須岳避難小屋へと下降。
先客が既に休んでいたため、静かに本日の山行を締めくくった。

さすがに先客がいれば、わきまえて静かにするというモノ。
これでも大人ですからね。

漫画的山行記録

友人と那須岳の火山地帯歩きへ。

女っ気皆無の男二人の山歩きです。

始発電車にのって黒磯駅へ向かいます。

黒磯駅で友人と合流。
車で茶臼岳へと向かいます。

峠の茶屋駐車場に駐車して歩きスタートです。

那須ロープウェイを利用するため山麓駅へ向かいます。

那須ロープウェイ山麓駅。

ものの数分で高低差約300mを登ります。

貸出の靴、何と靴下まであります。

まずは茶臼岳へ。

浮き石だらけです。

少し登っただけでこの景色。

火山っぽい雰囲気になってきました。

チェックポイントの『大岩』。

つん。

北側には荒々しい朝日岳。

火口縁に到着。

那須嶽神社の入り口から失礼します。

那須嶽神社の石祠。

茶臼岳山頂です。

西側に位置する裏那須。

南側に位置する南月山。

火口縁を回ります。

キリッ。茶臼岳の岩場で神様気分。

朝日岳へ向かいます。

その前にココ(峰の茶屋跡避難小屋)へ。

こんな岩がゴロゴロしています。

岩山の夏。

峰の茶屋跡避難小屋まできました。

中は綺麗です。

朝日岳へ。

荒野へ向かう男。

これでも残雪のトラバース。

ここは西部劇の世界観です。

殺伐とした景色が広がります。

ウエスタンの世界に飛行機雲?

急峻な岩場を登ります。

異国情緒溢れる景色。

きわどいバランスの岩からの茶臼岳。

岩のみ。

壮大な景色が広がっています。

茶臼岳からの道のりを振り返ります。

岩場をトラバース。

気分は神様。

トラバース箇所にはクサリが設置されています。

朝日岳へ最後の登り。

雄大な茶臼岳。

中腹にある山道には人の列が。遠足?

朝日岳山頂です。

小さな鳥居。さすがにくぐれません。

ベンチに寝転んで疲労放出。

ちょっと歩いて熊見曽根へ。

荘厳なる茶臼岳。

1900m峰。

左に朝日、右に茶臼。

茶臼をつん。

熊見曽根の分岐点。

ここからは茶臼岳方面へ引き返します。

こんなところにミネザクラ。

日本とは思えない荒野の景色です。

うーん、奥深い。

ここだけ雰囲気の異なる石が。

空の色が濃くなってきた。

夕暮れ時が迫り、より赤みを増す荒野の世界。

夕暮れの光になってきました。

峰の茶屋跡避難小屋まで戻ってきました。
ここで日没を拝む事にします。

コーヒーでも飲んでくつろぎます。

夕焼けショーが始まりました。

この時間帯は好きです。

夕日に照らされる茶臼岳。

日が沈む。

落日。

今日という日よサヨウナラ。

細い三日月(既朔:きさく)が浮かびます。

床に落ちている爪ではありません。

まだ明るい内に那須岳避難小屋まで下ります。

那須岳避難小屋に到着しました。

お疲れさーん。

明日は早朝出発で茶臼岳から御来光を拝みます。

おわり

漫画的山行記録
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本日の山行情報

複数人山行/1日目/避難小屋泊/ハイキング/マイカー登山

茶臼岳(ちゃうすだけ)
標高1915m
詳細(外部リンク)
朝日岳(あさひだけ)
標高1896m
詳細(外部リンク)
1900m峰(1900めーとるほう)
標高1900m

本日のスケジュール

峠の茶屋駐車場[着] 11:00 - [発] 11:00
 ↓ 20分 
山麓駅[着] 11:20 - [発] 11:20
 ↓ 5分 那須ロープウェイ利用
山頂駅[着] 11:25 - [発] 11:35
 ↓ 55分 
茶臼岳[着] 12:30 - [発] 12:40
 ↓ 45分 
峰の茶屋跡避難小屋[着] 13:25 - [発] 13:55
 ↓ 65分 
朝日岳[着] 15:00 - [発] 15:20
 ↓ 10分 
朝日岳の肩[着] 15:30 - [発] 16:00
 ↓ 30分 
1900m峰[着] 16:30 - [発] 16:30
 ↓ 25分 
朝日岳の肩[着] 16:55 - [発] 16:55
 ↓ 60分 
峰の茶屋跡避難小屋[着] 17:55 - [発] 19:00
 ↓ 15分 
那須岳避難小屋[着] 19:15 - [発] 19:15

行動時間:5時間30分(休憩含む)

本日のおすすめ(お土産/温泉情報)

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