2017年12月28日
小金沢(大菩薩)連嶺:1日目
長峰:疲労と寒さで感情ゆるゆる。

長峰は上部で牛ノ寝通りと合流します。


大菩薩嶺のマイナールートを歩いてみよう。

と言うことで、年末で忙しいはずのこの時期に、快晴の好条件を良いことに山歩きへと出かける。目的となるルートは、知人に勧められ、以前から計画のあった長峰(ながね)、楢ノ木尾根だ。

甲州裏街道と言えば丹波山へ抜ける丹波大菩薩道が代表的だが、他にも小菅大菩薩道、牛ノ寝通りなど、目的地に応じて幾つかのルートがある。本日歩く長峰もそのひとつだ。牛ノ寝通りの途中から分岐して深城ダム方面へと続く長い尾根道で、現在は踏み跡不明瞭となり廃道に近い状態になっていると聞く。

本日はこの長峰を登る。

完全に落葉したこの時期なら藪こぎの必要もなく、見通しが効くため道に迷うことはないだろう。ただ気になるのは猟区であることか。尾根道なので大丈夫とは思うが、用心して黒ずくめではなく派手目の格好で出発だ。



深城ダムに映る八丁坂ピーク。


深城ダムのほとりにある小金沢公園に駐車して身支度を整える。当然ながら誰もいない。

この付近に初めて訪れる私としては、寂しげで寒々しいイメージを持っていたが、小金沢公園は街の公園のように綺麗で家族連れやカップルがピクニックをしていてもおかしくない雰囲気だ。でも誰もいない。

これから歩く長峰もきっと誰もいないだろう。

廃道に近い長峰に明確な登山口など当然のようになく、深城トンネルを越えたところの橋を渡り、何となく尾根に乗って主稜線めがけて登るのみだ。(※読図、ルートファインディングが必要)

細尾根箇所もあります。


積雪のない急な斜面を登り始めると、落ち葉に足を取られて滑る滑る。山道はそこそこ歩けても、ただの斜面となると使う筋肉が異なるのか、早くも筋肉痛になる予感がする。尾根に乗っても落ち葉の斜面登りは続き、足首や脹脛が安定した平らな接地面を欲しているがわかる。藪こぎ上等の山ヤや猟師、林業従事者の足腰が強靭なわけだ。

何とか三角点名『八丁坂』と名の付いた最初のピークに辿り着いた。長峰ルートの始まりとなる八丁坂には、これから始まる長い行程を励まさんばかりに朝日が降り注いでいる。日差しが暖かい。大汗をかかないよう薄着となって長峰ルートを歩き始めた。

踏み跡はほとんどない。ただ、見通しの効く尾根道なので迷うこともない。尾根上には背丈の低い石楠花が所々に群生し、左には明日に歩く楢ノ木尾根が、右には上部で合流する牛ノ寝通りの尾根が常時見えている。

エバニューの古い水筒。


しばらく歩くと過去の伐採作業の名残なのか、樹木に掛けられた残置ワイヤーが目立つようになってきた。しっかり張られているモノもあれば、だらしなくブラブラしているモノもある。今でこそ寂れているが、全盛期は活気があったのだろう。途中に落ちていた古くて味わい深い水筒からも、行き交う登山者で賑わっていた時代が想像できる。

カネツケノ頭、白草ノ頭を越えると、徐々に伐採作業の痕跡が薄くなり、離れていた牛ノ寝通りが間近に見えてきた。

ここで、目を惹く自然のデザイナーズチェアーを発見。樹木そのものが「よっこらせ」と座っているようなフォルムで、一目見て「これは座るべき」と見逃すことのできない魅力を放っている。長峰の最後には急な登りが待っている。それに備えた腰掛け休憩として、最適のチェアーに違いない。

座ってみる。

うっ・・・これだけでも長峰を歩く価値ありの座り心地!
気になる方は長峰へ!!

自然のデザイナーズチェアー。


腰掛け休憩の効果もあって、急な登りにひぃひぃ言いながらも牛ノ寝通りに合流。「長峰、長いね」くらい言いたくもなった長峰歩きはこれにて終了。ここからは主稜線に出て小金沢山、牛奥ノ雁ヶ腹摺山、そして黒岳までゆく。

主稜線上にある石丸峠まで登ると、多少の積雪と凍った山道、そして冷たい風が吹き付けてくる。急な登りでホットになった身体には丁度いいどころか、あっという間に冷え切ってしまった。装備を改めて、垂らした鼻水を風にそよがせながら再出発。

鼻水は垂れるし、手はかじかむし、疲れてきたし、休みたいけど立ち止まると寒いし、などとボヤきつつも、突き抜ける空の青さと鮮明に広がる美しい景色に心が洗われる。疲労で感情がゆるゆるになったのか「世界って美しい!」などと恥ずかしげもなく思ってしまう。それでも鼻水は垂れている。

清々しい狼平。


小金沢山からの富士山。


一点の曇りもない青空。

黒岳手前の分岐点までやってきた。明日は大峠から雁ヶ腹摺山へと登り、楢ノ木尾根を歩く。湯ノ沢峠へと下り、電気も来ている湯ノ沢避難小屋で快適に過ごすのも魅力的だが、いかんせん翌朝この分岐点まで登り返さなければならない。念のためテントを持ってきているし、水も多めに用意している。迷う必要もなく大峠へと下ることに決定。

大峠への下り斜面はガリガリ。


ここの下りは日当たりが悪く全面凍っている状態だ。ただ、凍るほどの水気がなく、土の露出も多い。アイゼンを持参しているが、この程度なら必要ない。足の裏に氷雪面をがっちりキャッチする第六の指を持つと言われる東北出身者である私(山形)には不要だ。とは言え、前日に雨など降っていたらアイゼン必須の滑りやすい山道であるのは間違いない。

標高を下げるごとに積雪は減り、心なし風も暖かく感じられる。夕焼けで暖色系に染まる雁ヶ腹摺山が正面に見えるのも、ほっこりさせられる要因のひとつだ。

疲労しながらも日が落ちる前に大峠に辿り着いた。

脳内で「長峰、長いね」と何度も呟いた本日の長い行程を思い返すと、それほど長さを感じさせない充実感がある。今は廃れた人の営みや自然の造形、そして一点の曇りもない青空があったからこそ得られた充実感だ。ただ疲労困憊。早いところ横になって明日に備えよう。

ちなみに、明日に登る『雁ヶ腹摺山』の山名由来は幾つかあり、雁(鳥)が腹を摺るように山を越えてゆく様子が有力だ。他にも諸説あるが、中にはこんな珍説もあった。

「どれが腹摺山ですか?」
「あれが腹摺山」

「あれが」が転じて「がんが」になるって・・・「腹摺」の方は完全無視か?これは由来と言うより、著しくクオリティの低いオヤジギャグが間違って伝わったとしか思えない。と言うか絶対そうだ。「長峰、長いね」よりもひどい。

そんな雁ヶ腹摺山はまた明日に。

漫画的山行記録

大菩薩嶺のマイナールートを歩いてみよう。

と言うことで本日は長峰(ながね)を歩いてきます。

出発地点は小金沢公園駐車場。

深城ダムに映る八丁坂ピーク。あそこが長峰の起点です。

まず深城トンネルをくぐって取り付き点へ向かいます。

ここから登ろう。

ちなみに長峰は廃道に近いため正規の登山口はありません。

ひとまず細尾根に乗って八丁坂ピークへ。

開けてきました。

到着。ちなみに八丁坂は三角点の点名です。

この名称です。

長峰の左手には楢ノ木尾根。

右手には牛ノ寝通りの尾根が見えます。

七本木山ノ神を祀る祠。

伐採作業をする際は必ず供え物をしたそうです。

長峰はまだまだ長い。張り切って歩こう!

石楠花がちらほら群生しています。

伐採の名残か、ワイヤーがあちこちに駆けられています。

この辺りには巨木、古木が立ち並んでいます。

挨拶の意味を込めて樹木にタッチ。

長峰の中間地点となる白草ノ頭に到着。

山で食べるおにぎりはイイよね!潰れた見た目はともかく。

上部で合流する牛ノ寝通りが近づいてきました。

放置されていたエバニューの古い水筒。ヤカン兼、湯たんぽにもなりそう。

自然のデザイナーズチェアーを発見。

座ってみます。

ぴったりフィット!!

腰掛け休憩をしたところで、長峰最後の急な登りに取り掛かります。

おや、あれは・・・。

牛ノ寝通りと合流。これで長峰は終了です。

主稜線に近づく程に寒さが増してきます。

石丸峠に到着。

拡がる爽快な景色!

でも冷たい風が吹き付け、長く立ち止まっていられない寒さです。

狼平と一点の曇りもない青空。

小金沢山山頂。

から望む富士山。

左は雁ヶ腹摺山。右は牛奥ノ雁ヶ腹摺山。

日本一長い山名の牛奥ノ雁ヶ腹摺山山頂。

から望む富士山。

何て綺麗な色なんだ・・・。

次なるピークへ。

完全無欠の青空だと何でも綺麗に見えます。

川胡桃沢ノ頭から望む富士山。

巨岩をすり抜け、

黒岳分岐に到着。

この分岐から大峠へと下るのですが・・・

日陰の山道は全面凍結。

アイゼン必須です。

結構下って陽のあたる場所へ。

赤岩ノ丸。

から望む富士山。

正面には夕焼けに染まる雁ヶ腹摺山。

日が沈む前に大峠まで下りました。

大峠の休憩所から富士山を眺めつつお疲れ様でした。

明日はマイナールートその2。楢ノ木尾根を歩きます。

おわり

漫画的山行記録
(新規ウィンドウ表示)

本日の山行情報

単独行/1日目/テント泊/縦走/マイカー登山

八丁坂(三角点名)(はっちょうさか)
標高939.6m
白草ノ頭(しらくさのあたま)
標高1326.4m
小金沢山(こがねざわやま)
標高2014.3m
詳細(外部リンク)
牛奥ノ雁ヶ腹摺山(うしおくのがんがはらすりやま)
標高1990m
赤岩ノ丸(あかいわのまる)
標高1792m

本日のスケジュール

小金沢公園駐車場[着] 07:12 - [発] 07:12
 ↓ 12分 舗装道路
長峰取り付き[着] 07:24 - [発] 07:24
 ↓ 38分 
八丁坂[着] 08:03 - [発] 08:11
 ↓ 69分 
カネツケノ頭[着] 09:20 - [発] 09:20
 ↓ 18分 
白草ノ頭[着] 09:38 - [発] 09:57
 ↓ 169分 
石丸峠[着] 12:46 - [発] 12:46
 ↓ 49分 
小金沢山[着] 13:36 - [発] 13:48
 ↓ 43分 
牛奥ノ雁ヶ腹摺山[着] 14:31 - [発] 14:31
 ↓ 62分 
黒岳分岐[着] 15:34 - [発] 15:42
 ↓ 30分 
赤岩ノ丸[着] 16:13 - [発] 16:13
 ↓ 20分 
大峠[着] 16:34 - [発] 16:34

行動時間:8時間34分(休憩含む)

本日のおすすめ(お土産/温泉情報)

この山域の関連記事