2017年6月25日
小金沢(大菩薩)連嶺:2日目
丹波大菩薩道:旅人気分で甲州裏街道をゆく。

雨の降る中、出発。


テントに小雨が当たる音が聞こえる。この雨音から察するに、風も無く、しとしとと降る雨のようだ。この状況なら本日の山行は問題ナシ。

そんな訳で、予定通り甲州裏街道(旧青梅街道)となる丹波山大菩薩道経由で大菩薩峠を越えることにする。

甲州裏街道とは、東京都新宿を起点として青梅を経由し、山梨県甲府までをつなげた慶長8年(1608年)に整備された道路を指す。『裏街道』と呼ばれるだけに大きな関所はなく、庶民はもとより貧民や罪人なども利用していたようだ。その道中で最大の難所とされていたのが大菩薩峠となる。

今では近代的な車道が整備されているためルートは変わり、峠越えとしては『丹波大菩薩道』の山道が残るのみとなっている。それでも明治時代まで利用されていた立派な道路であり、峠付近にあった荷渡小屋で物々交換や無言貿易が盛んに行われていたと言う。

そんな歴史に思いを馳せながら大菩薩峠越えに出発だ。

【参考:当時の歩荷料】
慶応年間で米一俵(60kg)を峠まで運んで四百文(6600円)程度。結構、コクな仕事。




朝もやの樹林帯を淡々黙々と登ります。


雨に濡れながら、山道入口となる越ダワへ向かう。昨日の疲労感は残っていても、小雨を心地良く感じられる程度のゆとりを持って山道へ入った。

日が高くなるにつれて雨は弱まり、朝もやに包まれた樹林帯を淡々黙々と登る。

淡々黙々、淡々黙々。きゅぅ~。

腹の虫が鳴り始めた頃に最初の登りを終え、高尾天平に到着。広々と平らな景色を眺めながら屋根付きのあずまやで朝食をとっていると、いつの間にか雨は止んでいた。

高尾天平を越えた藤ダワから追分まではワサビ谷の谷間を登ることとなる。そして、ここの空間は実に素晴らしかった。

山道の右手に植樹林、左手に原生林の広がるワサビ谷には、今朝の降雨も相まって潤い豊かな苔が一面を覆っている。まだまだ成長著しく生命力みなぎる巨木にも苔が付き、行ったことはないが苔で有名な屋久島を彷彿させる景色となっていた。

更に登って行くと植樹林はなくなり、古き甲州裏街道の世界観一色に染まる。

右手に植樹林、左手に原生林。


苔と葉で緑一色。


折れても尚、存在感を放っています。

眼には苔の緑が美しい谷間の景色。耳には沢のせせらぎと控えめな鳥のさえずりが楽しませてくれる。この新鮮で潤い豊富な酸素は舌にも嬉しい限り。マイナスイオン120%にも思える空気感は肌も喜ぶはずだ。もういっそのこと、歴史が蓄積された自然の香りは鼻にも好いとして、五感が満たされる空間にしよう。

と、そんな御託は実際どうでもよく、理屈抜きに心地好い空間であるのは間違いない。

要所要所にベンチがあって助かります。


沢の音を遠ざけて追分まで登ると、多少のアップダウンで比較的平坦な山道となる。体力が有り余っていれば、山道を外して今倉山を経由したいところだが、今回はパスして先を急ぐ。

ちなみに、今倉山はワサビ谷のセリにあることから山葵谷山とも呼ばれ、先程感銘を受けてワサビ谷ファンになったばかりの私としては、いずれ訪れたい山だ。

ノーメダワまでの緩やかな山道はスルスルと進み、大菩薩峠への最後の登りが始まるフルコンバからは淡々と登る。

ところで『ノーメダワ』『フルコンバ』など、地名や山名にはカタカナ表記が度々登場するのだが、名称由来好きな私としては漢字表記も知りたいところ。『フルコンバ』については『古飯場』『古木場』などの説があり、漢字から何となく想像することができる。しかし『ノーメダワ』についての情報は無く、今ひとつ想像が付かない。「ノーメイクだわ、今日(略してノーメだわ)」などとOLのボヤきにしか思えないのが悲しいばかり。

荷渡場を越えれば大菩薩峠はもうすぐだ。

真っ白な大菩薩峠。


雨こそ落ちてこないが、曇り空で景色は望めない。そんな中、淡々と丹波大菩薩道を登りつめ、ようやくたどり着いた大菩薩峠は予想に反せず真っ白。いつもなら賑わっているこの場所も、本日ばかりは登山客皆無だった。

それでも心地好い疲労感。

達成感からくる心地好さと言うよりも、古来の甲州裏街道をゆく旅人としての気分に浸れた心地好さだ。ワサビ谷で受けた感銘の余韻がまだ残っているのかもしれない。

今回の終着地点である上日川峠に向けてぼちぼち下り、福ちゃん荘にて峠越えの旅人気分でトコロテンをすする。今回の旅も終わりが近づいてきた。

早く休みたい思いよりも名残惜しさを感じる。

これは良い傾向。名残惜しいほどに良き山行だったという証に他ならない。色々あって疲れたりもしたが(特に昨日)、最後にこう思えたのが全てだ。

馬頭観音様に無事な旅路を感謝。


到着した上日川峠で、昨日の出発時にも手を合わせた馬頭観音様に、無事な旅路を感謝する。

こんなに謙虚になれるとは、恐らくワサビ谷効果に違いない。

漫画的山行記録

丹波山から甲州裏街道(旧青梅街道)による大菩薩峠越えに出発。

雨降りですが、この程度の雨では問題ありません。

グリーンロードを歩いて登山口へ向かいます。

こちらが登山口。

小雨は止み、朝もやとなりました。

高尾天平に到着。

高尾天平は広くなだらかなので散歩には最適。

高尾天平で朝食。みきゃん。

藤ダワまで来ました。

見よ、この直立振り!

カケスの殺害現場!?に遭遇。

しばらく歩くと・・・

緑に染まるワサビ谷が見えてきました。

右、植樹林。左、原生林。

樹皮にも苔が覆う圧倒的緑感です。

存在感溢れる巨木が目立ちます。

折れても尚、健在ッ!

ワサビ谷は個人的にお勧めスポットです!

ワサビ谷を離れ、追分まで登ってきました。

何の跡だろうか。炭焼き場?

ほんのり色付き。

丹波山大菩薩道には要所要所にベンチが設置されていて大助かり。

行き交う旅人を見守ってます。

ノーメダワ。ああ、矢印をなおしてあげたい。

折角の視界ですが景色は雲の中。

ま、ベンチに座って一休み。

足元には可愛らしい花。

こちらフルコンバ。小菅大菩薩道との合流地点です。

大菩薩峠への最後の登り。

荷渡場。元々は別の場所です。

丹波山から歩き始めてようやく・・・、

大菩薩峠に到着!

登山者皆無!

あとは上日川峠へ下るだけ~。

休憩がてらに福ちゃん荘でトコロテンをすすります。

何だか旅の終わりが名残惜しく思えてきました。

感慨に浸りながら、甲州裏街道(旧青梅街道)での大菩薩峠越えは無事終了。

馬頭観音様に無事な旅路を感謝。

そして、旅路の締めは、

やっぱりコレ。(※人物はイメージです)

おわり

漫画的山行記録
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本日の山行情報

複数人山行/2日目/テント泊/8時間以上歩行/マイカー登山

高尾天平(たかおてんでえろ)
標高1036m
大菩薩峠(だいぼさつとうげ)
標高1897m
詳細(外部リンク)

本日のスケジュール

奥秋テント村[着] 04:58 - [発] 04:58
 ↓ 70分 グリーンロード
山道入口(越ダワ)[着] 06:09 - [発] 06:09
 ↓ 79分 
高尾天平[着] 07:29 - [発] 08:00
 ↓ 11分 
藤タワ[着] 08:12 - [発] 08:12
 ↓ 97分 
追分[着] 09:49 - [発] 10:00
 ↓ 47分 
ノーメダワ[着] 10:48 - [発] 11:34
 ↓ 63分 
フルコンバ[着] 12:38 - [発] 12:53
 ↓ 45分 
大菩薩峠[着] 13:39 - [発] 13:52
 ↓ 38分 
福ちゃん荘[着] 14:30 - [発] 14:44
 ↓ 26分 
上日川峠[着] 15:11 - [発] 15:11

行動時間:8時間1分(休憩含む)

本日のおすすめ(お土産/温泉情報)

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