2015年3月21日
八ヶ岳:1日目
天狗岳:(オッサンが)心ときめくミドリ池の畔。

しらびそ小屋前の神秘的な空間。


「厚切りトーストを食べたい」

これだけの理由で八ヶ岳のしらびそ小屋へ泊まりにゆく。

しらびそ小屋の厚切りトーストは有名らしく、鈴木ともこさんの漫画『山登りはじめました』でも取り上げられており、それを見たヨメは事ある毎に「食べたい食べたい」と訴えていた。

食べてみたいのは私も同じ。
ただ、小屋に宿泊、尚且つ予約した方のみ食べられるメニューとのこと。

山中ではテント泊がモットー(貧乏性なだけ)の私としては、厚切りトーストだけのために小屋泊するのは贅沢すぎる。しかし、ヨメには珍しく今回の山行を率先して計画して、ちゃっかり予約までとっていた。

こうなったら行くしかない。
快適で贅沢な山行に出発だ。




暖かい無風の樹林帯。


稲子湯から少し登ったところにあるゲート手前のスペースに駐車して、ゲート脇にある登山ポストに登山届けを提出。焦る事もなく歩き始めた。

天気は上々、風もなく穏やかな樹林帯を歩く。

ザクザクと雪を踏みしめて進むと、所々で小川のせせらぎや鳥のさえずりが聞こえてきた。天然のバックミュージックが静かに流れる雪の樹林帯歩きは実に清々しく、デスクワークによって滞った首回りの血液がほぐされてゆく心地好さだ。

1時間半程歩いて頭がスッキリしたところで、本日の宿泊先『しらびそ小屋』に到着した。

小屋の前には大きなダケカンバと一面真っ白に凍っているミドリ池があり、それを見下ろすように天狗岳の険しい岩山がそびえ立っている。天狗岳からは頑固親父のような厳しさと共に、この場を守ってくれる頼もしい印象を受ける。ここは季節によっても印象がガラリと変わりそうな空間だ。

しらびそ小屋までは天然の滑り止めのおかげでアイゼン要らず。


しらびそ小屋に到着。


しらびそ小屋前のミドリ池と天狗岳。

小屋で受け付けを済ますと、しらびそ小屋の見所のひとつである森の小動物観察の時間だ。旧館内のガラス戸のすぐ外には種(?)が撒かれており、それを目当てに森の小動物たちがやって来るのだ。その観察距離は数十センチ。まさに目の前だ。

この時は冬毛で耳がピンと立ったリスが来訪中。

・・・かわいい。

いい歳のオッサン(私)でさえときめいてしまう可愛らしさ。リスの他に小鳥たちもやって来るが、いかんせん知識のないオッサン(私)には種類がわからない。そこでありがたいのは詳しいオッサン(こら!)だ。

山中で出会う高山植物好きと同じように、動物好きな方も研究でもしているかのような知識量で、1の質問にたいして10の回答を返してくれる。こういった方たちは実に嬉しそうに教えてくれるので、聞いているこちらも嬉しくなる。

コガラとヒガラ。一見どちらも似ているが、寝癖のついている方がヒガラ。そしてウソ。オスとメスとでは首回りの色が異なりオスは綺麗な赤色をしている。男はすぐに嘘を付くから真っ赤なウソはオスと覚えると良い。

なるほど、すぐに忘れてしまう私もこれなら記憶に残りそうだ。

冬毛で耳がピンと立ったリスが来訪中。


こちらはオスのウソ。赤い模様がオスの印。


しらびそ小屋には年季の入ったミルがありました。カッコイイ。

中山峠へは急登です。落石の恐れもあるため長居しないように。


小動物たちにときめいたところで天狗岳へと向かう。安定した天候で時間的ゆとりもあるのだから登らない手はない。ただ、しらびそ小屋から見える通り、稜線に出るまではかなりの急勾配となる。山道の積雪状態を気にしながら無理せずに、まずは中山峠へ。

実際に歩いてみると、事前の地形図チェックと見た目の険しさは完全に一致。登るほどに急勾配となり、稜線直下では落石の恐れもある状況だ。それでもトレースが出来上がっているため、道迷いのリスクが低いのはありがたい。と思っていた側から、先行しているヨメはトレースを外して直登していく。

「そっち、違う違う!」

足元ばかりに集中していたのか、まったくもって猪突猛進型だな。

無事、稜線に乗ると視界は一気に開けてくる。進行方向の先には、しらびそ小屋から見上げた荒々しい山容とは異なる、女性の豊満な胸を連想させる曲線美の東天狗岳、西天狗岳が並ぶ。それが純粋な感動であっても「おっ、ボインみたいだ」などと表現すると白い目で見られるので要注意だ。(経験者は語る)

ここからは雪稜を黙々と登る。東側の崖に残っている雪庇には大きな亀裂が入り、今にも音をたてて崩れ落ちそうだ。実際、崩れ落ちる時は物凄い轟音を伴うそうだ。くわばらくわばら。

確実に登っていると一昨年に訪れた記憶が鮮明に甦り、「まだかな」と思う事なく東天狗山頂に到着した。

東天狗と西天狗。曲線美です。


黙々と登ります。


硫黄岳の爆裂火口。奥には赤岳も見えます。

周囲に拡がる八ヶ岳の峰々。眼下には森のなかに白く固まったミドリ池とその畔にしらびそ小屋がぽつんと見える。

さ、夕御飯を食べに戻ろう。

夕御飯の時間は17時30分。西天狗に行く時間はあるが、気持ちはもう夕御飯に向いている。7対3で西天狗より夕御飯への欲求が勝っている私は、未練無く天狗岳をあとにする。ゆとりを持って挑みたいのだ。夕御飯を。

中山峠からの急な下りでは腹の虫も鳴き始め、いよいよ高まる夕御飯モード。(下山は集中して!)

戻ってきたしらびそ小屋では暖かい寝床が用意されていた。そして、何もしなくても着々と準備される夕御飯。小屋泊なのだから当然かもしれないが、やはり有り難く、山中では尚のこと特別に感じられる。

他の宿泊客と並んで和気あいあいと夕食を頂きまーす。

食後はウイスキーを飲みながらの語らい。


夕食に満足した後は、薪ストーブを囲んでウイスキーを飲みながら(私は下戸なので飲むのはヨメだけ)語らいの時間だ。野鳥の会の方、某市長さん、高校生を引き連れた先生、ウイスキーを携えてやってきた女性ソロ。こんな組み合わせも山小屋であれば不思議はなく、社会における地位や立場も関係なし。ここでは『山好き』と言った共通認識があるだけだ。

さて、明日の朝食は今回の山行の目的である厚切りトースト。

むふふ、楽しみ過ぎる。

漫画的山行記録

厚切りトーストを食べに八ヶ岳のしらびそ小屋へ。

しらびそ小屋に宿泊、予約する事で朝食に厚切りトーストが食べられます。

最近、山登りメインじゃない事が多い気が・・・。

しらびそ小屋は天狗岳の東側の麓にあります。

天狗岳にも登るのでゲート手前で登山届を提出。

無風の樹林帯歩き。

雪解けで小川のせせらぎが心地よい状態です。

何となく中間付近を通過。

天然のすべり止めが撒かれているのでアイゼンが無くてもへっちゃら。

気持ちいい~。

そろそろしらびそ小屋に着きそうな気配。

見えてきました、しらびそ小屋。

到着しました。

小屋の前には白く固まったミドリ池とそれを見下ろす荒々しい天狗岳。

宿泊の受付を済ませて軽いお茶タイム。

年季の入ったミル。カッコイイ。

窓の外には・・・。

冬毛でピンと耳の立ったリスが来訪中。

ウソも来てます。

ちなみに、メスのウソは赤い模様がありません。
男はすぐに嘘を付くので「真っ赤なウソはオス」と覚えておくと記憶に残りやすいとか。

ではもう一度。真っ赤なウソ。

新館にあるこたつでちょっと一息。

せっかくなので中山峠から天狗岳に登ってきます。

まずは緩やかな傾斜の樹林帯を歩いてゆきます。

右手には険しい稲子岳の岩肌。

中山峠直下は急傾斜になります。山道状態には十分に注意!

急斜面を登って中山峠に到着。

視界が開けて見えてきたのは東天狗と西天狗。

いつの間にか稲子岳も見下ろせる標高です。ずっと奥にはニュウ(山です)も見えます。

東側は断崖絶壁の稜線。

黙々と上を目指します。

眼下にミドリ池としらびそ小屋が見えます。

岩場が多くなってきました。東天狗岳山頂までもう少し。

西側にはまるっとした西天狗が見えます。

東天狗岳山頂に到着。

八ヶ岳の主峰赤岳から阿弥陀岳へと延びる稜線。

すぐ南側には迫力の爆裂火口。

夕御飯の時間に間に合うよう、西天狗には行かずにこのまま戻ります。

中山峠からの下りは立ち止まらずに一気に下ります。

一気に下ってちょっと一息。

この時期では暖かみを感じます。

稲子岳。雪が融けたら一度登ってみたいな。

この木なんの木?(樹木の知識ナシ)

日差しを浴びて剥がれかけた樹皮が光ります。

良いダシが出そう。グゥ。(腹の虫)

戻ってきたミドリ池には楽しそうな子供・・・いや、大人たちの姿。うん、そうなるよね。

真新しい新館が本日の宿泊場所。快適。

用意された寝床からは天狗岳が見えます。

ランプも雰囲気あります。

夕御飯まで暮れゆくミドリ池を眺めます。

ポツンと残された雪だるまが一人。

ちょっと肥え過ぎですよ。

薪の炎をただ眺める贅沢な時間が流れます。

夕御飯、いただきまーす。

明日の朝食はこれ。ふふふ、楽しみ。

食後は小屋の方やお酒大好きな常連さんたちと語らいます。

普段はテント泊の私ですが、小屋泊もイイですね。

マネーの都合次第ですが。

おわり

漫画的山行記録
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本日の山行情報

複数人山行/1日目/小屋泊/ハイキング/マイカー登山

東天狗岳(ひがしてんぐだけ)
標高2640m
詳細(外部リンク)
しらびそ小屋(しらびそごや)
標高2097m
詳細(外部リンク)

本日のスケジュール

稲子湯ゲート前駐車場[着] 08:55 - [発] 08:55
 ↓ 80分 
しらびそ小屋[着] 10:15 - [発] 11:30
 ↓ 80分 
中山峠[着] 12:50 - [発] 12:50
 ↓ 55分 
東天狗岳[着] 13:45 - [発] 13:45
 ↓ 45分 
中山峠[着] 14:30 - [発] 14:30
 ↓ 60分 
しらびそ小屋[着] 15:30 - [発] 15:30

行動時間:5時間20分(休憩含む)

本日のおすすめ(お土産/温泉情報)

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