2014年5月6日
八ヶ岳:3日目
蓼科山:北八ヶ岳歩き、最高の締めくくり。

『信濃富士』『諏訪富士』とも呼ばれる蓼科山。(下山後に麓から撮影)


目が覚めると昨日までの雨は止んでいる。
その代わり、宿泊地の蓼科湖畔オートキャンプ場は濃霧に包まれていた。

本日は北八ヶ岳歩きの締めくくりとして蓼科山を登る。

その端麗な山容から『信濃富士』『諏訪富士』とも呼ばれる蓼科山。
見晴らしの良さそうな山頂には、大興奮の景色が待っているはず。

早朝の濃霧は快晴の予兆。

霧が晴れる事を期待して、ビショ濡れのテントを車に放り込み、ビーナスラインにある女乃神茶屋登山口の駐車場へと移動した。

【蓼科(たてしな)情報】
『蓼科』は古来『立科』と称されており、
『立』→立て板のように急傾斜
『科』→古語で階段上の地形/傾斜地
の意味が含まれています。つまり蓼科山はキツい傾斜の山です。




驚きの白さの女乃神(めのかみ)茶屋。


登山口もやはり濃霧。
それはもう驚きの白さだ。

まあ、これはこれで幻想的な雰囲気だとも言える。
身支度を整え、いざ入山。

蓼科山の登山道は分かりやすい。
山頂めがけて一直線に登る、これだけだ。

女乃神茶屋登山口からのルートでは、登山口付近の笹原や、途中にある小ピークを越えた辺りを除けば急斜面の直登。
実にわかりやすく潔い。

霧が立ち込める笹原をしばらく進むと、小ピークまでの最初の急登が始まった。

登り始めると体調良好なのがわかる。
と言うより、自分のペースを保てている。

景色は真っ白いだけなので、身近なモノを写真に収めながら登ってみる。
朝露の水滴をまとった針葉樹の葉などは、この雰囲気に打ってつけの被写体だ。

朝露の水滴をまとった針葉樹の葉。


何か意味ありげな積み方。


地球外生命体っぽい何か。

岩場の急登が続きます。


こんな感じで登っていると、「小ピークはまだか・・・」などと考える事なく、深いリラックス状態になっている事に気付く。
山中で時々感じる心地好い状態だ。

こうなると何処までも登っていけそうな気分になれる。
しかし、この状態を維持しようと欲を出した途端に疲労を感じたりする。

逃がすまいと意識すればする程に遠ざかる。
良い状態とは儚いモノだ。

去り行くリラックス状態を見送った頃に、チェックポイントの小ピークに到着した。

標高を上げると残雪の急登になります。


ここまで一部残雪(氷?)はあったが、アイゼンは必要なかった。
だが、ここからは残雪が目立つようになる。

山頂までの急登では残雪と露岩の混合状態。
アイゼンがなくても登れる状態かもしれないが、装着しない理由もない。

アイゼンを装着して休まずに登り続けると、冷気を感じるようになってきた。
周囲を見ると、針葉樹の葉に付着するのは水滴から氷へと変わっている。

森林限界の境目まできた。
樹林帯を越えたすぐ上のゴーロ帯(大きめの岩場)では猛烈な風が吹いているのがわかる。

ここでアイゼンを外し、防寒装備を整える。

このゴーロ帯を登りきれば山頂だ。
周囲は相変わらず真っ白だが、山頂からの景色に期待を込めて、強風が吹き付けるゴーロ帯に突入した。

強風に煽られながらゴーロ帯を登っています。


この強烈な風に身をさらしていると、身体の熱が奪われ末端から冷えてゆく。
末端冷え性の私の指先は余計に冷たくなっている。

それでも登り続ける事を止める訳にはいかない。

何となく空が明るくなった気がした。
ふと、先行しているヨメを見ると、何やら遠くを直視している。

ヨメの視線の方向を見てみると、その先には雲海上に浮かぶ八ヶ岳の姿が。

空と稜線との境界が明確に浮き上がり、尾根と谷が造り出す陰影には、寒い時期特有の鮮明な美しさがある。
そんな八ヶ岳が、神々しくも空の青と雲の白の中に浮かんでいるのだ。

ヨメが遠くを見ている。その先には・・・。


雲海上に浮かぶ八ヶ岳の姿が!


はい、消えたー。

もうね。
テンション炸裂ですよ。

寒さなど忘れてしまうテンションになり、素早くカメラを構えるも八ヶ岳は雲の中へと消えていった。
しばらくすると、その姿を現し、また雲の中へ。

こんな数秒間のショータイムが繰り返される。

出たーーーッ!!
はい、消えた~。

カメラを構えたりしまったり。

テンポ良く繰り返される一連の行動に、妙な可笑しみが込み上げてくる。
些細な事でも笑ってしまう徹夜明けのアレと似ているが、この時は素晴らしい景色を前にした喜びからくる笑いだ。

何度もシャッターチャンスを逃し、真っ白な状態の写真を何枚も撮りながら、蓼科山山頂へ到着した。

八ヶ岳と右手に赤石山脈が見えます。


円形状の平らな岩場で広々としている山頂。


山頂の中心には蓼科神社奥宮の石祠が祀られています。

山頂は円形状の平らな岩場で広々としている。
そんな山頂の真ん中にポツンと、蓼科神社奥宮の石祠が祀られていた。
他のどの山域でも見た事がない、何とも不思議な光景だ。

眺望と山頂到達の喜びを鎮めて心静かに参拝。
そして、広く平らな山頂の西側にある方位盤にも行ってみた。

もうね。
テンション再炸裂ですよ。

この方位盤から見渡せる景色といったら、何にも代えられるモノではない。
この場所、この状況、この瞬間でしか感じられない景色がそこにはあった。

八ヶ岳のみならず、赤石山脈、木曽山脈、そして飛騨山脈と『日本の屋根』が雲海上に浮かんでいる。
そして、その全てが透明感のある澄んだ空気によって映し出されている。

もう、強烈な西風に煽られている事もお構いなし。
しばらくこの唯一無二の景色を眺めていた。

方位盤へと続く道。


尾根と谷の陰影が鮮明な八ヶ岳。


小高い所が蓼科山の最高地点です。

『まだ見れる』気分だが、蓼科山頂ヒュッテにも行ってみる。

この山小屋には何とピアノがあり、数年前までは音楽家を招いてコンサートを開催していたと言う。
今では音楽家も常連のお客さんも歳を取ってしまったためコンサートは開催していないと、小屋番さんに教えてもらった。
一度も訪れた事が無いにしても、受け継がれなかったのは少し残念な気がする。

※コンサートは麓で開催されています。

それにしても、蓼科山頂ヒュッテの小屋番さんは人懐っこい方だった。

私の中で、昔ながらの山男は二分される。

『柔』か、『堅』か。
その中間など一切無く、無器用なまでに1か10。
どちらが良い悪いなど関係なく1か10だ。

周囲の山やルートについて少々話を伺った限り、この小屋番さんはまさに『柔』な感じがした。
※私の勝手なイメージです。

ピアノのある蓼科山頂ヒュッテ。


昨日まで歩いていた北八ヶ岳も姿を現そうとしています。


名残惜しいですが下山します。

熱々のおしるこを頂きながら小屋番さんと話をしていると、すっかりくつろいでしまった。
名残惜しいが下山の途に就く事にしよう。

小屋の外に出ると雲は上がり青空が広がっていた。
先程まで雲海に沈んでいた北八ヶ岳の山々も姿を現しつつあり、麓の街並みまで見えるようになっている。
空気感の違いなのか、先程までとは違った印象の景色となっていた。

景色を眺めながらゴーロ帯を下り、感謝の念と共に蓼科山頂を仰ぎ見てから樹林帯へと下った。

真っ白だった今朝の景色も、今では正面に木曽山脈を眺められる。
これがあるから山歩きは止められんのだ。

その後、絶景の余韻に浸りつつ、ゆっくりと時間をかけて下山した。

聖光寺の桜。麓は春です。


天狗岳から北横岳、そして蓼科山と、3日間に渡る北八ヶ岳歩き。
最終日に相応しい景色を見る事ができて大満足の山行となった。

今度は夏ならではのメルヘン溢れる雰囲気も堪能しに来ようかな。
40男の柄でも無いが。

漫画的山行記録

北八ヶ岳歩き、最終日。

本日は『信濃富士』『諏訪富士』とも呼ばれる蓼科山を歩きます。

女乃神茶屋登山口の駐車場からスタート。

どことなくレトロなビーナスラインのシンボル。

女乃神茶屋。まさか『女乃神』で『ビーナス』とか読ませないよね。

笹原を進みます。

滑らないように注意して登ります。

ガスで何も見えないので近くのモノを撮影。

瑞々しい。

ボーイスカウトによる何かの合図か。

いよいよ険しくなってきました。

新緑っぽい色合いに癒されます。

ワンシーズン散らずに耐えたようです。

チェックポイントのピークに到着。

地球外生物っぽい雰囲気。

一端なだらかな山道になります。

また急登の始まりです。

もう、アイゼン装着推奨。

気温が下がってきました。

樹林帯を抜ける前に防寒装備をした方がよさそう。

ここからは岩場になるのでアイゼン不要。

風でバランスを崩さないように登ります。

寒い寒い。

ヨメが何かを見ている・・・。

むっ、八ヶ岳が!

あー、消えたー。(繰り返す)

鮮明に姿を現した周囲の山々。

そしてまたガスの中へ・・・。

蓼科山山頂に到着。

平らで広々した山頂です。

山頂には蓼科神社奥宮と方位盤があります。

蓼科神社奥宮に参拝。

振り返って山頂方面。改めて広い。

強風が吹き付ける方位盤へ。

方位盤から八ヶ岳。

飛騨山脈。

赤石山脈。

またガスの中へ消えるー。

山頂方面。

蓼科山頂ヒュッテに寄ります。

寒い中でアツアツのおしるこ。最高。

山頂音楽祭は現在やっていないそうです。残念。

青空が広がってきました。

北八ヶ岳も現れそうです。

名残惜しいですが下山します。

未だ行った事のない木曽山脈。興味津津。

寒くても青空はイイ。

雲が上がり、霧ヶ峰(車山)も見えてきました。

最高の眺望をありがとう。

これから樹林帯へと下山します。

最後にもう一度山頂を仰ぎ見ます。

冷凍冬眠中。

自然の寄せ植えの作品。

チェックポイントのピークまで下りてきました。

景色を眺めながら下山。

段々に重なる山々に三角屋根ポツリ。

滑らないよう慎重にお願いします。

神社の屋根みたい。

今朝とは変わってすっかり乾いています。

無事下山しました。

今回の山行で穴が・・・。

麓はすっかり春めいています。

麓から蓼科山。

こちらは車山高原。

聖光寺の桜は満開です。

3日間に渡る北八ヶ岳歩き。

最終日に相応しい景色に大満足の山行でした。

おわり

漫画的山行記録
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本日の山行情報

複数人山行/3日目/テント泊/ハイキング/マイカー登山

蓼科山(たてしなやま)
標高2531m
詳細(外部リンク)

本日のスケジュール

女乃神茶屋近くの駐車場[着] 05:50 - [発] 05:50
 ↓ 190分 
蓼科山[着] 09:00 - [発] 09:30
 ↓ 180分 
女乃神茶屋近くの駐車場[着] 12:30 - [発] 12:30

行動時間:6時間10分(休憩含む)

本日のおすすめ(お土産/温泉情報)

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