若人に赤岳鉱泉での年越しパーティーに誘われた。
仕事の都合上、年末年始は実家に帰らず、行っても日帰り山歩き程度の予定しかなかったので二つ返事でOKだ。
八ヶ岳の主峰赤岳にも硫黄岳にも登らず、赤岳鉱泉に行くだけなのだが、標高2000m以上の山小屋で新年を迎えるだなんて初めての体験。
赤岳鉱泉はアイスクライミングのできる人工氷壁『アイスキャンディ』があり、冬季でも人気の山小屋。年越しには豪華景品の当たるビンゴ大会もあるらしく、こちらも楽しみ。
そして何よりも、若人チームが用意してくれる食材が豪勢と聞いている。
歳や環境が違えば『食』も変わる。
食には疎い私も、実に楽しみな要素である。
前日の夜に都内からバス(毎日あるぺん号)に乗って八ヶ岳山荘02:30着。そのまま八ヶ岳山荘の仮眠室にて半泊できる、お正月登山プランのバスチケットを利用した。
こんな便利なプランがあるなんて、ありがたい世の中だ。
仮眠室でゆっくり休み、八ヶ岳山荘の休憩所でホット牛乳を飲みながら若人チームの到着を待つ。
10:30、若人チーム4名と合流。
軽い挨拶を済ませて、若さに食らいついてゆく意気込みで出発した。
天候は穏やかで、思っていたよりも暖かい。
気合いを入れて着込んできた防寒具が、あっと言う間に暑苦しくなる。厳冬季用のグローブなんて必要なしの陽気だ。
美濃戸山荘までの林道は、結構な頻度で車が通るので、真後ろまで迫っている車に気がつかないとちょっとビックリしてしまう。
途中には脱輪している車もあって、大晦日なのに何だか気の毒極まりない。
美濃戸山荘からは北沢伝いに赤岳鉱泉を目指す。
しばらく林道歩きを続け、橋を渡るとようやく山道らしくなり、標高を上げる毎に雪も深くなってきた。
そうは言っても、多くの年越し登山客が山に入っている事もあって、踏み跡は明確。雪面も踏み固められて歩きやすい事この上ない。
軽アイゼンどころか何も着けなくても登れそうな感じだ。(下りとなると話は別)
ただ、歩きやすさの比較としてアイゼンを装着してみる。
結果は明確。
何でもっと早くに装着しなかったんだろう、と思ってしまう程に歩きやすかった。(当たり前か)
ソールの硬い重登山靴『エスハチ』との相性も申し分ナシだ。
夏道のコースタイムとさほど変わらない行動時間で赤岳鉱泉に到着した。
赤岳鉱泉には、「大晦日?正月?関係ないね」と、言わんばかりの冬山装備の登山者が多く、テン場には冬季用テントが数多く張られている。
中にはツェルト泊のツワモノもいる。
この環境下でツェルトか・・・いいな。
私の物好き精神がウズウズしてくる。
赤岳鉱泉名物の『アイスキャンディ』に登攀中の見知らぬ人。
好奇心という意味では、赤岳鉱泉名物の『アイスキャンディ』にも興味津々の私。
話には聞いていたのでチャレンジする気満々だったが、体験会は毎週日曜日のみの開催との事。今回は断念せざるを得なかった。
残念だが、氷壁に挑んでいる登山者たちを羨ましげに眺めて、まずは小屋の中へと入る。
若人チームが用意してくれたのは個室。
小屋泊なだけでも贅沢と感じているのに個室だとは・・・超贅沢だ!
ま、年越しだからこのくらいの贅沢は許されるか。
何?暖房も完備だと?!
極み・・・贅沢の極みだ・・・。(普段の貧乏山行さが伺える)
広々と部屋を使わせてもらい、まずは各自が持ってきた食糧を出しあってみる。
それぞれのザックから出てくる出てくる。
日本酒にワイン、主食からおつまみ、そしてスイーツまで、食べきれるのか?と思えるほどの食糧だ。当然、年越しソバもある。
主食からおつまみ、スイーツまで揃った食糧群。ゴクリ・・・。
天気と時間をみて付近を散策しようかと思っていたが、並んだ食糧群を前に乾杯すれば、どの様になるかは目に見えている。
おつまみを口にしながらゴロリとくつろぎモードに突入だ。
広い、旨い、温い。
もう最高。
部屋でまったりとして、アイスキャンディや夕焼けに染まる空を軽く眺めた後は、お楽しみの年末ビンゴ大会。
総額100万円オーバーの豪華景品(当然アウトドア関連)が当たるとなれば参加しない理由はあるまい。
今朝乗ってきたバスにニット帽を置き忘れた事もあって、景品ゲットに欲望剥き出し状態で参加だ。
若干26歳の赤岳鉱泉4代目社長(予定)の初々しい挨拶で始まったビンゴ大会。
読み上げられる番号に次々と「ビンゴ!」の声があがる。
そして、ザックやアウター、アイゼンなどの高額景品が出るたびに歓声と拍手で大いに盛り上がる。
若人チーム4名も次々とビンゴとなり、全員が景品ゲット。
一方、私とヨメは・・・。
ノービンゴ。
欲望剥き出しはダメですね。
結果、若人メンバーのMちゃんから、「そんなところ(ビンゴカード)に幸せはありませんよ」の名言を頂きました。
ビンゴ大会で盛り上がった(若干2名盛り下がった)後、豪華食材で今年最後の晩餐会だ。
瑞々しい野菜に始まり、焼肉(牛、豚)、あんきも、しめさば、ブリのたたき等々、豪勢すぎる食のオンパレード。
そして最後は肉の塊ローストビーフ。
肉の塊ローストビーフをかじりついてすっかり山賊気分。
山のモノ、海のモノが集結したこの豪華食材に、自炊場に居合わせたお客さんも「ここ山小屋だよね?」と、目を疑っている様子。
それらをスッカリ平らげて2013年最後の食事を満喫した。
※バーナーなどの火器は自炊場のみで使用できます。
食事に満足し過ぎて、年越しソバの入る余地は全くなくなった。
消灯時間にもなってしまったので、おとなしく部屋に戻り、寝床の準備を整える。
他の登山客は既に就寝しているのか、辺りは静まり返っている。
ここに来ている登山客にとっては、年末年始はイベント目的ではなく、連日山に入れるチャンスと言う訳か。
イベント目的の我々は、部屋に戻って布団に入り込むが、年越しカウントダウンをする気充分だ。
しかし、布団に入った時点で案の定と言うか、次第に寝息に変わってゆく。
3・・・2・・・1・・・。
2014年。
「皆さーん、起きてますかー」
・・・。
返事は返ってこない。
返ってくるのは微かな寝息だけ。
2014年、明けましておめでとうございます。
そして、静かにお休みなさい。