2012年6月11日
八ヶ岳:2日目
横岳:雄大な景色と小さな植物を堪能。

3時過ぎに何となく目が覚める。
隣にテントを張っているKさんは既に起きているようだ。

昨晩は適当な夕食だったため、コメを炊いてしっかりと朝食を摂り、空が白んできた頃に出発した。

本日のお楽しみは硫黄岳から見る爆裂火口と横岳付近の岩稜歩き。
名前からしてそそられる爆裂火口だが、ガスが掛かりやすく見れないことが多いという。

そして現在、梅雨真っ只中。
「曇り時々晴れ」の予報とはいえ、期待感なく爆裂火口のある硫黄岳山頂へと向かう。

朝日の指し込む樹林帯。


通過地点の赤岳鉱泉に着くと空が明るく青空も見えてきた。
「おや?」と、少々期待感が沸いてきた。

硫黄岳へと続く樹林帯を登り始めると朝日が差し込み、木漏れ日越しに青空が見え隠れしている。
「おやおや?!」と、かなり期待感が膨らむ。

そして視界が開けると真っ青な好天下に、昨日登った阿弥陀岳の雄姿が飛び込んできた。
「おやおやおや!!」と、爆裂火口への期待が確信的に高まる。

八ヶ岳連峰最高峰の赤岳も勿論立派だが、個人的にはどっしりと厚みのある阿弥陀岳が好きだ。
硫黄岳方面から見える赤岳~中岳~阿弥陀岳の稜線も美しく、昨日、あの稜線を歩いたと思うだけで嬉しさが込みあげてくる。ムフフ。(思い出し笑い)

直上に見えるジョウゴ沢火口も申し分ない景観。
巨大ケルンが点在し、直線的に延びる稜線は巨大なダムのようだ。

稜線上の合流地点に到着すると、まだ山頂でもないのに既に絶景。
八ヶ岳のほぼ全域を見渡すことができ、日本アルプスもクッキリ見える。

絶景に惚れ惚れしながら、ちょっとした岩場をよじ登り、広々した硫黄岳山頂に到着。
山頂広場を横断して爆裂火口へと近づいてゆくと、「爆裂」の名を証明するかのような迫力で火口が待ち構えていた。

湾曲した断崖は直径約1キロ、山頂と火口底の標高差は550メートル余という雄大なスケール。
火口の縁まで行って底を覗いてみるとまさに断崖絶壁で、崖面に営巣しているイワツバメらしき鳥類が飛び交っている。

もう興奮するなと言うのは無理な話。
「どうでしたか?」と聞かれたら、「いやぁ、爆裂でしたよ!」と返答するしかない。

直線的に延びる稜線上には巨大ケルンが点在。


赤~中~阿弥陀のうっとりする稜線。その後ろには権現岳や北岳もチラリ。


硫黄岳の爆裂火口。そのスケールを写真で表現できず残念。

爆裂の余韻に浸りながら、次なるお楽しみである横岳の岩稜歩きへ。

横岳は連続する岩峰の総称で、奥ノ院、無名峰、三叉峰、石尊峰、鉾岳、日ノ岳、二十三夜峰とそれぞれのピークに名称が付いている。と言っても、ここがどのピークかなどと気にすることもなく、緊張感ある岩稜歩きを楽しみながら進んでゆく。

クサリやハシゴを登り降りしながら岩稜を進んでいると、こんな環境でもたくましく咲いている可憐な花が目に留まった。

これまで山中で見かけた花は写真に収め、帰宅してからネットなどで調べているのだが、実際正しいのかは実に怪しいもの。しかし今回は、その場で教えてもらったのだから間違いないだろう。

岩稜を歩きながら高山植物を眺めていると、一眼レフカメラを抱えたおばさんに出会った。

花模様、山模様を撮影するのが大好きらしく、今日はツクモグサに逢いに来たのだと言う。
「逢いに来た」と表現する時点で、どれほど好きなのかが容易に想像できる。

想像通り、「ツクモグサは本州では白馬岳と八ヶ岳でしか見られないのよ。この色が可愛いでしょ~。」と目を輝かせて語ってくれた。
ツクモグサの他にも、オヤマノエンドウ、コメバツガザクラなど、プチ情報を交えながら、いかにも楽しそうに教えてくれる。

米粒を潰したような葉が特徴のコメバツガザクラ。


あちこちで見かけるオヤマノエンドウ。


白馬岳と八ヶ岳で生息するツクモグサ。

本当に好きなモノを語る人の言葉には嘘偽りがなく、聞いているだけで何だか楽しい気分になるのだが、高山植物に関する知識も関心も極めて低い私は、せっかく教えてもらったのに右の耳から左の耳。
山の名称は覚えられるのに、花などの植物になると覚えが悪い。関心がないとはこう言う事なのだろう。
それでも目をキラーンとさせたおばさんの語りに魅了され、少なからず興味が芽生えた。(「芽生えた」と表現するところからその真意を察してほしい)

色々教えてくれたおばさんとは稜線上で別れたが、行者小屋に戻りテントを撤収していると、また再会。
今度は下山ルートの南沢に咲くホテイラン情報を教えてくれた。

絶滅危惧種に指定されている希少植物ホテイラン。


ホテイランはラン科の多年草で、絶滅危惧種に指定されている希少植物。
唇弁の形を布袋様のお腹に見立てて名付けられたその姿は、おばさん曰く、たくましく可憐で最も好きなランだと言う。

おばさんの情報通り、ホテイランは山道脇にひっそりと咲いていた。
昨日は全く気が付かず素通りしていたのに、少しの情報を得ただけで目に留まるのだから不思議なものだ。

葉は一枚しかなく、布袋様っぽい丸みを帯びた花弁が付いているのが特徴的なホテイラン。
こんなホテイランも可憐ではあるが、個人的にはコメバツガザクラが好きだ。
「サクラ」と言いつつ実はツツジ科で、米粒を潰したような葉(だから「コメバ」)が特徴の可愛らしいヤツだ。

花期は6~7月。
高山の砂礫地、岩礫地に生育するようなので、他の山域でも機会があれば「逢い」に行ってみよう。

本日の写真

行者小屋。

ヘリポート。快適テントサイトではありません。

赤岳鉱泉。

アイスクライミング体験ができる『アイスキャンディー』の残骸。

硫黄岳への登り始め。

阿弥陀岳が現れた!

日陰はツルツル箇所あり。

朝の樹林帯。

ジョウゴ沢火口がポッカリと開いている。左が硫黄岳山頂。

横、赤、中、阿弥陀の稜線。

稜線に到着。硫黄岳に向かいます。

赤岳、中岳、阿弥陀岳の稜線美にはうっとりする。

そのうち行きたい中央アルプス。

照りつける太陽。日焼け注意。

南アルプスをバックに稜線美が映える。

広々している硫黄岳山頂。

これは三角点か。

硫黄岳山頂。

爆裂火口。その爆裂っぷりはコンデジ写真で再現不可。

ケルンに沿って下ります。

鞍部にある硫黄岳山荘に向かいます。

コマクサ群生地の台座ノ頭。

硫黄岳山荘で小休止。

駒草神社。御祭神はコマクサ?

これでもツツジ科のコメバツガザクラ。

オヤマノエンドウ。

富士山っぽい砂礫道。

軽い。

赤い。

広い。

クライミングで人気らしい大同心。

少しばかりですが富士山。

切り立った岩稜を進みます。

恐々と下を見下ろして撮影。写真では高度感ゼロ。

カニの横ばい。足場はシッカリしています。

お天道様を見てテンションアップ。

横岳山頂。

ハシゴ多数あり。

三叉峰(さんじゃほう)。

雨の日は滑りそう。

鮮やかなオヤマノエンドウ。

本州では横岳と白馬岳周辺だけに咲くツクモグサ。

岩稜をひたすら進みます。

岩々しい。

岩場でも可憐に咲くツクモグサ。たくましい。

登りと下りで渋滞しないように。

ちょっとした岩場の先端から。やはり写真では高度感ゼロ。

クサリも足場もしっかりしてます。

赤岳を確認。

二十三夜峰(にじゅうさんやほう)。

何気に危険。

歩いてきた岩稜を振り返る。

下方に見える行者小屋まで下ります。

慎重かつ一気に下山。

昨日に続き、今日も通るとは。

ズルっと滑らないように。

突起した岩だらけの横岳が見える。

快適トイレ。でも1番手前は気をつけろ!

暖かくなったのか羽虫が多い。

パワースポット的な雰囲気。

三つ葉が可愛らしいコミヤマカタバミ。

南沢のちょっとした滝。

怪しげなキノコ。

治山工事中。

小さいながらにもしっかり咲いています。

希少植物で絶滅危惧種1A類に指定されているホテイラン。

何だ、このキノコ。

無事に下山。

本日の山行情報

複数人山行/2日目/テント泊/8時間以上歩行/マイカー登山

硫黄岳(いおうだけ)
標高2760m
詳細(外部リンク)
横岳(よこだけ)
標高2829m
詳細(外部リンク)

本日のスケジュール

行者小屋[着] 04:40 - [発] 04:40
 ↓ 35分 
赤岳鉱泉[着] 05:15 - [発] 05:20
 ↓ 125分 
硫黄岳[着] 07:25 - [発] 07:35
 ↓ 25分 
硫黄岳山荘[着] 08:00 - [発] 08:30
 ↓ 65分 
横岳(奥ノ院)[着] 09:35 - [発] 09:40
 ↓ 90分 
地蔵尾根分岐[着] 11:10 - [発] 11:10
 ↓ 55分 地蔵尾根
行者小屋[着] 12:05 - [発] 13:45
 ↓ 130分 南沢ルート
赤岳山荘(駐車場)[着] 15:55 - [発] 15:55

行動時間:8時間45分(休憩含む)

本日のおすすめ(お土産/温泉情報)

この山域の関連記事