2015年5月10日
赤石山脈(南アルプス):2日目
鳳凰三山:よく寝て、よく食べ、よく歩く。

よっしゃ、こちらの思惑通りの天気だ。


昨日は昼前に南御室小屋に到着。夕方頃に少しばかりの散歩はしたが、それ以外はテント内で食って寝てゆったりと過ごした。

観音ヶ岳まで行った登山者の話では、昼過ぎには雨に降られ、稜線上は強風で雪も舞っていたと言う。昨日はそんな稜線上の悪天候を想定していたためテントで待機(つまり食っちゃ寝)していたのだ。

そして、夜明け前のまだ暗い内に目を覚まし、テントの外に出てみる。

頭上は満天の星空。

よっしゃ、こちらの思惑通りだ。
鳳凰三山縦走に行くぞ。

ヘッドランプを点けて暗闇の山道を登る。山道に積もった雪は多少凍って滑りやすいが登る分には問題ない。寒くも暑くもなく、登るには丁度よい気温だ。

しばらくして樹林帯越しに見える空が朝焼けに染まりつつある事に気付く。日の出までに森林限界を抜けられるか時間との勝負だ。と言うほどに慌ててはいなかったが、砂払岳の見晴らしの好い岩場で御来光を迎える。

昨日の悪天候から回復して快晴となった本日。見事な御来光を浴びて、こちらの思惑通りに快晴の鳳凰三山縦走ができる状況にニンマリしてしまう。山陵上部から朝日に染まってゆく赤石山脈主稜線の雄大さにも惚れ惚れしてニンマリする。

快晴の稜線歩き、これぞ山歩きの醍醐味だ。

砂払岳からおはようございます。


清々しい朝の富士山。


白根三山もくっきり見えます。

空が広い。


砂払岳と薬師ヶ岳の間にある薬師岳小屋で身支度を整え、いざ鳳凰三山へ出発。

まずは薬師ヶ岳。なだらかで広々した山頂からの展望は申し分なく、北側に広がる白砂と点在する巨石群が独特の世界観を醸し出している。

実は昨日、薬師ヶ岳付近で雷鳥の目撃情報を伺っていた。数年前に「鳳凰三山で30年振りに繁殖確認」と新聞に掲載されるほど、このエリアで生息数が減少している雷鳥。それだけに貴重な雷鳥目撃者になるべくハイマツ帯付近を見回していたが、結局発見する事はできなかった。

快晴の稜線上を無警戒で歩いている訳がない、とは思っていたものの残念。それでも諦めずにキョロキョロしながら観音ヶ岳へ向かう。

白根三山を背景に薬師ヶ岳。


薬師ヶ岳の巨石と富士。


観音ヶ岳へと続く白砂の稜線。

薬師ヶ岳辺りからはバランスを崩す程の強風が吹き付けていた。観音ヶ岳へと続く見通しのよい稜線上は、遮るものが何も無く強烈な風圧が顔面を襲う。舞い上がった白砂が顔面めがけ容赦無用で飛来する状況に「痛い痛い!」と言いながら進む。

風上から顔を背けながら観音ヶ岳に辿り着いた。

風をしのげる東側の岩場で一息ついてから観音ヶ岳山頂、すなわち鳳凰三山の最高地点となる岩場から顔を出すと、真正面に現れるのは北岳バットレスの大岩壁。個人的にこの北岳の荘厳な姿は観音ヶ岳山頂ならではの景色だと思っている。

北岳の東側に面するバットレスを正面から見るとその迫力たるや圧倒的だ。しかし正面以外、特にバットレスが真横に見える位置から北岳を見てしまうと、あまりの山容の薄さに「はぁ~ん?」とさげすんだ目で見てしまいがちな私(何様か)。そう言った意味で観音ヶ岳山頂から眺める北岳は最高なのだ。

観音ヶ岳、すなわち鳳凰山の最高地点。


真正面に現れる北岳バットレスの大岩壁。


これから向かう地蔵ヶ岳とその奥に甲斐駒ヶ岳。

越えるべきピーク。


鳳凰三山の最後となる地蔵ヶ岳へと向かう。

地蔵ヶ岳には、麓からも確認できる象徴的なオベリスク(地蔵仏)があり、オベリスクをくちばし、それに続く稜線を羽と見立てたのが『鳳凰』と呼ばれる由来のひとつとされている。鳳凰三山では標高こそ観音ヶ岳が最高峰だが、このオベリスクの存在感は大きい。

ただ、なにげに遠い。

なだらかで短い薬師ヶ岳~観音ヶ岳間と比べてしまうと、観音ヶ岳~地蔵ヶ岳は険しく長い。岩場の急斜面が多く、途中に赤抜沢ノ頭の立派なピークも立ちはだかる。南御室小屋に戻ってテント撤収後の長い下山行程も考慮すると無理はできず、疲れないペースを保って行かなければ後が大変だ。

稜線西側の山道では相変わらずの強風が吹き付けてくる。一部に残る雪の斜面を下り、赤抜沢ノ頭を越えて鞍部にある『賽ノ河原』までやって来た。

ここには多数の石仏が並んでいる。甲斐駒ヶ岳を背景にして白砂上に石仏が密集しているこの場所は、これまで目にした賽ノ河原の中でも最も雰囲気があり、すぐ側にそそりたつオベリスク(地蔵仏)がこの世とあの世との曖昧な世界観をより一層引き立てている。

この世とあの世との曖昧な世界観の賽ノ河原。


甲斐駒ヶ岳を背景に多数の石仏が並びます。


数年前にも同じお地蔵さまを同じ構図で撮りました。相変わらず穏やかなお顔。

この賽ノ河原に地蔵ヶ岳の山頂道標(?)があり、これにて鳳凰三山縦走は終了だ。だが、折角ここまで来たのでオベリスクに登ってみる。

登るごとに垂直に近い傾斜となってゆく岩場を極めて慎重によじ登る。足場がしっかりしているため比較的安心感はある。

オベリスクのてっぺんまでもう少しの所まで登った。てっぺんからは「使って下さい」と言わんばかりのロープが垂れ下がっている。

しかし、ここまでにしておく。

相変わらず強風が吹き付ける状況で、いつのモノかわからない残置ロープに命を預けるより、ロープに頼らず登れる技術を身に付けた時に改めて挑戦した方がいい。こう言っておけば聞こえは良いが、実際のところは高所が怖いだけ・・・。

オベリスク(地蔵仏)に登ってみます。


ずいぶん登って高度感も出てきました。・・・怖ひ。


てっぺんからはいつのモノかわからない残置ロープが垂れています。

成就されただろう真新しい子授け地蔵。おめでとうございます!


オベリスクを下る途中には多数のお地蔵さまが見られる。

地蔵ヶ岳には、山頂付近のお地蔵さまを持ち帰り、子を授かったらお礼に2体のお地蔵さまを返す『子授け地蔵』の風習がある。そして何と、つい数日前に返された真新しいお地蔵さまがあった。きっと最近に成就されたのだろうと思うと、何だかちょっとした感動を覚える。

どなたかはわかりませんが、おめでとうございます!

さーて、これから長い帰り道のはじまり。夜叉神峠からのピストン山行をする者の定めであり、避けて通る事はできない。広がる花崗岩の白砂に立ち並ぶ巨石は、一見、総立ちとなった観戦席の様相を呈している。その愛嬌ある巨石たちの視線を一手に受けるのは勇壮な北岳。長い帰り道を思ってタメ息を付く私など眼中に無いようだ。

極力疲れないようにゆっくり戻る。観音ヶ岳への登り返しに嘆きたくなったが、面には出さず黙々と来た道を戻る。途中に出会った地元のおじさんや薬師岳小屋の小屋番さんと話し込みながらもボチボチと引き返す。

標準的なコースタイムなどお構い無しに時間をかけて南御室小屋まで戻ってきた。すっかり温室化したテントを撤収、まとめた荷物を背負って更に続く帰り道に就く。

最高の景色をありがとう。


昨日の曇り空では鬱蒼としていた樹林帯も、本日の好天下では清々しいばかりか緑が色鮮やかに映えている。山道脇に咲く小さな花も華やかな雰囲気だ。そんな風景に励まされながら、無事に夜叉神峠駐車場へと下山した。

ザックの重みで肩はこったし、長い行動時間に足首も疲れた。しかし、終わってみればそんな苦労も払拭される程に大満足の鳳凰三山縦走となった。これも好天のお陰だ。

ひとつ気になるのは、持参していた『北アルプスの天然水』(2リットル)は一滴も使わずそのまま持ち帰り、南御室小屋の水場で汲んできた『南アルプスの天然水』が増えている不思議。

これには「南に北の水を持ってゆく事は二度とするまい(逆もまたしかり)」と心底思う。

漫画的山行記録

悪天候の昨日は、南御室小屋のテン場で昼から寝て食べてゴロゴロして過ごした。

おかげで体調は万全。

外に出てみると満点の星空にお月さま。

よし、こちらの思惑通りだ。

では鳳凰三山縦走へ出発。

樹林帯の向こうが朝焼けに染まってきました。

お月さまの下にガマ岩。

砂払岳の岩場から御来光。

富士山もよく見えてます。

白根三山もくっきり。

本日もよろしくお願いします。

これから向かう薬師ヶ岳に観音ヶ岳。

白根三山にもようやく日が差します。

北岳バットレスにも日が差します。

砂払岳を下って薬師岳小屋へ。

振り返って砂払岳。意外と好きなシルエット。

ダケカンバと合わせてもイイ感じ。

空が広い。

薬師ヶ岳に到着しました。

こちらは青木鉱泉への下山道側。遠くに八ヶ岳が浮かんでます。

薬師ヶ岳の巨石と富士山。

観音ヶ岳へ向けて白砂の稜線を進みます。実は強風です。

ああ、ヤグラが・・・。

鳳凰三山の最高峰、観音ヶ岳に到着。

山頂の岩場を登ると正面には勇壮な白根三山。

地蔵ヶ岳へ続く稜線とその奥に甲斐駒ヶ岳。

素晴らしい景色です!

では鳳凰三山縦走最後の地蔵ヶ岳へ。

この辺りの岩場は独特の雰囲気を持っています。

謎のオブジェクト。

美しい白砂の稜線を歩きます。

総立ちとなった観戦席っぽい。

踏ん張って強風に耐えている人っぽい。

赤抜沢ノ頭まで来ました。

ここを下れば地蔵ヶ岳。遠くには八ヶ岳。

鞍部にある賽ノ河原まで下りました。

強風でも静かにたたずんでいます。

甲斐駒を背景に多くの石仏が見られます。

ここに地蔵ヶ岳の道標がありますが、オベリスク(地蔵仏)の途中まで登ってみます。

地蔵仏は岩山です。

あちこちに石仏が見られます。

ここにも。

かなり登ってきました。

オベリスクのてっぺんはすぐそこ。

山頂直下に残置ロープが垂れていますが正直信用できません。

ロープに頼らず登れる技術を会得してから改めて来ます。

強風だし、高所が怖いと言うのが本音ですが・・・。

また来ますよ、地蔵仏様。

おやっ、こんな所に最近の子授け地蔵が!

地蔵ヶ岳には、山頂付近にある子授け地蔵を持ち帰り、子を授かったらお礼に2体の地蔵を山に返す風習があります。

最近、どなたかが成就されたようです。

おめでとうございます!

数年前にも同じお地蔵様を同じ構図で撮りました。

相変わらず穏やかなお顔です。

これにて鳳凰三山縦走は終了しました。

ピストン山行のため、これから長い帰り道が待ってます・・・。

愛嬌のある石たちが総立ちで何かを眺めています。

視線の先はやっぱり北岳です。

私も見ます。

観音ヶ岳の下に石仏を発見。

隣には木仏も。

タテがいいかな。

それともヨコかな。

薬師ヶ岳まで戻ってきました。

仙丈ヶ岳の上に日除け雲。

砂払岳と富士山。それにしても富士山は絵になるなぁ。

何故か檜洞丸の缶バッジを発見。

白砂と巨石の稜線に別れ告げて樹林帯へ。

今朝と変わらずガマ岩がいます。

南御室小屋まで戻ってきました。

ここまでに拾ったギアたち。上モノもありますよ。

昼食休憩に玉羊羹。面白くて美味しいヨ。

美味しいので正真正銘の『南アルプスの天然水』を頂いて帰ります。

小屋番さんは先に下山しちゃいましたがお世話になりました。

素敵な字体の誘う方へ。

晴天だと樹林帯も爽やかです。

曇りだった昨日と比べ物にならない明るさ。

涼しくて気持ちイイ。

緑も良く映えます。

頭上では鳥がさえずります。

昨日は気付かなかった石仏にも目がとまります。

積雪地帯は終了。

杖立峠まで来ました。ザックの重みで肩が凝った・・・。

木漏れ日を浴びながら休憩。

夜叉神峠まで戻ってきました。昨日とは違って景色が良く見えます。

山道脇にはツルキンバイ。

タチツボスミレもよく見かけました。

調べてもよく分からない小さい花も。

あああああ、やっと下山だぁー。

帰りはゆっくりペースでも疲れましたが、快晴の鳳凰三山縦走を満喫した感じです。

そして、持参した『北アルプスの天然水』は全く使わず、下山時に『南アルプスの天然水』が増えてる不思議。

南御室小屋に行く際は、もう無駄な水を持参しない事にします。

おわり

漫画的山行記録
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本日の山行情報

複数人山行/2日目/テント泊/縦走/マイカー登山

砂払岳(すなばらいだけ)
標高2740m
薬師岳(やくしだけ)
標高2780m
詳細(外部リンク)
観音岳/鳳凰山(かんのんだけ/ほうおうさん)
標高2841m
詳細(外部リンク)
赤抜沢ノ頭(あかぬけざわのあたま)
標高2750m
地蔵岳(じぞうだけ)
標高2764m
詳細(外部リンク)

本日のスケジュール

南御室小屋[着] 03:41 - [発] 03:41
 ↓ 81分 
薬師岳小屋[着] 05:02 - [発] 05:07
 ↓ 22分 
薬師ヶ岳[着] 05:29 - [発] 05:41
 ↓ 21分 
観音ヶ岳[着] 06:02 - [発] 06:15
 ↓ 81分 
地蔵ヶ岳[着] 07:36 - [発] 08:11
 ↓ 93分 
観音ヶ岳[着] 09:44 - [発] 10:08
 ↓ 52分 
薬師ヶ岳[着] 11:00 - [発] 10:08
 ↓ 116分 
南御室小屋[着] 12:04 - [発] 13:23
 ↓ 37分 
苺平[着] 14:00 - [発] 14:01
 ↓ 70分 
杖立峠[着] 15:11 - [発] 15:12
 ↓ 72分 
夜叉神峠[着] 16:24 - [発] 16:24

行動時間:10時間45分(休憩含む)

本日のおすすめ(お土産/温泉情報)

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