天気よし。
やるべき仕事も何とかこなした。
よし、行ってみよう!日本三大急登『黒戸尾根』。
日本三大急登とは、
『飛騨山脈:烏帽子岳へのブナ立尾根』、
『上越:谷川岳への西黒尾根』、
そして、
『赤石山脈:甲斐駒ヶ岳への黒戸尾根』と言われている。
これを誰が決めたのかは分からないが、数ある急登の中から3つを厳選しているのだから、多少の主観が入っていても「急登」である事は間違いないだろう。
中でも黒戸尾根は、登山口の標高が低いこともあり、山頂までの標高差は三大急登の中でも群を抜いている。
このように「日本三大急登、黒戸尾根」と言われてしまうと、私の中の「好奇心」と、ささやかな「挑戦心」がウズウズしてくる。
「チャンスがあれば歩いてみたい」
そんな思いを持っていた事もあり、バタバタっと支度を整え、意気込んで黒戸尾根へと出発した。
最終の電車に揺られ、00:30に長坂駅に到着。
誰もいない待合室で仮眠させてもらい、10Kmほど先の登山口まで徒歩で向かう。
タクシーを使わず徒歩とは我ながら情けないのだが、「節約」目的だけではなく、純粋に歩いてみたい「好奇心」も当然ある。(節約8割、好奇心2割)
「普通の舗装道路だし10Kmぐらいなら歩けるだろう」と高を括って歩き始めたものの、テント泊装備の荷物の負担を甘く見ていた。
2時間半程歩いて登山口に到着する頃には、そこそこの疲労具合。
ペタリと座り込んで、「いい歳して無謀な事をしたか・・・」と、しんみり感じながら朝食を摂る。
小休止後、竹宇駒ヶ岳神社に参拝し、黒戸尾根に取り付く。
まずは淡々とした樹林帯歩き。
「八丁登り」と呼ばれるこの区間は、ペースにもよるが3時間程たっぷりと続き、急登ではなくても心が折れそうになる程長い。
実際、心折れる前に休憩すること度々。
「何故、駅から歩こうなどと思いやがった!」と自分で自分を責めること度々。
それでも望んでいた黒戸尾根にチャレンジできているのだから嬉しい限り。
何だかんだ言いながらも、実際楽しんでいるのだから心が折れる訳もなく先へと向かう。
尾根が細くなり視界が開けてくると、チェックポイントのひとつ「刃渡り」の登場だ。
「刃渡り」は、両側が深い谷になっている尖った岩場で、落ちたら一発アウトの危険箇所。
とは言ってもクサリ等の整備がされていることもあってか、想像より危険な感じがしないまま通過。(雨の日や積雪時となると話は別)
ここからハシゴ(階段?)やクサリ場が徐々に現れ、急登らしくなってきた。
「刃渡り」よりも、ここで足を滑らせてケガする方が怖い。
荷物を背負ってのハシゴ登りは足腰に堪えるが、一歩一歩、一手一手着実に進む。
五合目小屋跡を過ぎ、屏風岩のある鞍部でちょっと一息。
ここから更に急登になり、クサリ場も多くなる。
疲労しながらも上がるテンション。
本日の幕営地である七丈小屋まではもう1時間程度だ。
淡々とした樹林帯を淡々と登るのも嫌いではないが、ハシゴありクサリありのバリエーション豊富な山歩きもまた楽しい。
そして森林限界を越えてからは岩稜歩きも待っている。
これにはワクワクせずにはいられない。
何よりも疲れていながらも日本三大急登を楽しめているのが嬉しいではないか。
そして七丈小屋へ到着。
小屋の前でザブザブ出ている冷えた水を汲み、ゴキュゴキュっと喉を鳴らして飲み干す。
うわーーっ!ウマイ!!
まだ山頂ではないが、駅から歩いてきた事もあって、「果たして登れるかな?フフフ・・・」と常に挑発してくる自分自身に、「見たか!コノヤロー!」と叫びたい気分だ。
テントを設営して休憩しているとガスがかかってきた。
時間的な余裕があり、これから山頂まで行こうと思えば行けるのだが、せっかく登ってもガスっていてはなぁ、とテント内でゴロゴロする。
「アレアレ?登らないのぉ?」
もう一人の自分に挑発されるも完全無視だ。
他の登山者も同じ判断をしたのか、すっかりくつろぎモードで暇を持て余している。あまりにも暇すぎて、「このテントどう?」と聞いて回るオジサンも出てくる始末だ。
こちらも負けじとお隣さんへ訪問。
その後、たっぷり読書する贅沢な時間を過ごし、体を休めながら明日に備えた。
明日は黒戸尾根を登り切って山頂から御来光を拝むぞ!