R君とヨメとで黒戸尾根から甲斐駒ヶ岳のパーティー山行へ。
パーティーと言っても誰かのお祝いをする訳ではなく、複数人での山行の意味だ。
ヨメの知人であるR君はバリバリの20代。
40代間近のバリバリのオッサンである私は、若い歩みに果たして付いていけるのか少々不安。しかしこの状況も楽しんでみよう。
尾白川渓谷の駐車場で前泊。早朝に登り始めて七丈小屋でテント泊。
翌日、甲斐駒ヶ岳に登って下山するスケジュール。
一昨年に単独で登って以来、2回目となる黒戸尾根からの甲斐駒ヶ岳。
前回とは異なる季節、異なる状況であるのも楽しみだ。
目覚めると天気は良好。
早朝でも寒くはなく、むしろ少し暖かい。
これは汗ばむ登りとなりそうだ。
それよりも何よりも登山者が多い。
尾白川渓谷の駐車場から登り始める登山者を見る限り、去年より断然多く、テント泊装備の方も目立つ。
混雑するテン場を予測しつつ、我々も日本三大急登である黒戸尾根に取り付いた。
若いR君とヨガの呼吸法を心得ているヨメ。両者とも流石に呼吸を乱す事なく平然と登って行く。
私もさも平然かのように登る。表向きは。
パーティー山行の状況では、私の場合、どれだけ平静を装えるかで、自分の『歩き』に対するテンションが変わってくる。
競ったり比較したりする訳ではなくとも、どこかで「負けたくない」「迷惑をかけたくない」と思う事が多々ある私。ちっぽけなエゴと言えばそれまでだが、自ら「疲れたー、休憩しよー」と言ってしまうと悪い意味で吹っ切れてしまい、堕落の一途を辿ってしまう事が容易に想像できてしまう。
ここは自分自身に対して活を入れる意味でも平静を装わなければ。
こんな文章化すると薄らみっともないと思える心の葛藤も、登り始めの少しの間だけ。
淡々と登るにつれて、単独行では無心モードになるところ、パーティー山行では楽しげな感じに早変わりだ。
こんな楽しい気分で長い樹林帯歩きを一段落させ、『刃渡り』のチェックポイントに到着した。
先鋭な岩場の『刃渡り』上空は気持ち良いほどの秋晴。
絶好の撮影状況に、上から下から写真を撮りあって楽しむ。
『刃渡り』からは細尾根を進み、黒戸山の北側を巻いて進む。
そして、五合目小屋跡のある鞍部まで下って軽い昼食タイム。
屏風岩のある鞍部から七丈小屋まではハシゴやクサリ場が連続します。
ここからがハシゴやクサリ場の連続する急登の始まりだ。
パーティー山行の楽しさのあまり、羽目を外さないよう注意して登る事にしよう。(調子に乗って失敗した事、数知れず・・・)
ハシゴやクサリ場の高度感を写真におさめるのはなかなか難しい事だが、人物が入るとてきめんにイイ感じになる。
「羽目を外さないように」と、言ったそばからクサリ場で「ファイトーォ、イッパァーツ!」のポーズをしてしまい、またしても上から下から写真を撮りあって楽しむ。(※調子乗り過ぎに注意!)
「羽目、外し過ぎ?」と若干思いつつ、調子に乗った迷惑千万な事故を起こす事なく七丈小屋に到着した。
七丈小屋から5分程登ったところにあるテン場は、早くも奥から詰めるようにびっしりとテントが設営されている。有難い事に快適に過ごせそうなスペースは確保できそうだ。
とは言え、まだ後続の登山者は多く、テン場がテントで埋め尽くされるのは時間の問題。
こちらも無駄な隙間を空けずに詰めてテントを設営する。
当初の予定では、余裕があれば今日中に山頂を目指すつもりだった。
だが道中の会話の中で、八合目辺りから夕日を見るプランに変更している。
設営したテントで午睡後、そのプラン通りに八合目に向けて出発した。
それから数分後。
「・・・腹、減ったよね」
「・・・そうだね」
「・・・・・・」
覇気を微塵も感じられないこの雰囲気で、もう全員の意見は一致したも同然。
「どうせ明日登るし、戻ってゴハン食べない?」
ぱぁっと全員の表情が明るくなり、「イイね!」と言って引き返す。
ああ、皆も私同様に平静を装っていたのだな。
そう思うとちょっと嬉しくなる。
さあ、メシだ。
単独行とは違い、三者三様、それぞれの夕食をつつきあえるのもパーティー山行の醍醐味。
人のモノほど旨そうに見えるモノはないのだ。(いやしい)
かくして、私にはひっくり返っても思いつかないだろう食材の組み合わせに舌鼓を打って大満足の山中ディナーとなった。
ご馳走さまー!