2012年6月23日
常念山脈:1日目
常念岳:暮れなずむ山頂で船を漕ぐ。

奥さんの出産を控え、そうそう山歩きに行けなくなるKさんたっての希望で、北アルプスに出かけた。

北アルプスデビューは一ノ沢登山口から。


行き先は常念岳で、私にとって初めての北アルプス。
大人気の北アルプスを「遠い=お金がかかる」ことで敬遠していたが(悲しい!)、思わぬタイミングで体験することができそうだ。

初日は一ノ沢ルートで稜線まで登り、常念小屋にテント設営。
翌日、翌々日の状況を見ながら、常念岳、大天井岳を登る、ゆとりあるスケジュールだ。

一ノ沢登山口から1キロ程手前の駐車場(無料)に到着すると、梅雨真っ只中と言う事もあってか想像していたより先客は少ない。
そのかわり羽虫が多い。

立ち止まっていると次々と羽虫がまとわりついてくるため、準備を整えたらすぐに出発。
ヒエ平の案内所に登山届を提出して、羽虫を払いながら北アルプスデビューだ。

地形図で事前リサーチしていた通り、急な登りは最後の1時間程で、最初は傾斜もゆるく歩きやすい。
雪解け水も手伝って水勢のある一ノ沢の音を聞きながらゆったりと登っていける。

靴を脱いでの渡渉にテンションアップ!


一ノ沢に合流するいくつかの沢を、飛び石伝いに渡りながら進んでゆくと、水量が多く、飛び石ではとても渡れそうにない箇所に出くわした。
これはどう考えても靴を脱いで渡渉するしかなさそうだ。

靴を脱ぐのが面倒なのか、何とかそのまま渡ろうとルートを探している先着の登山者を横目に、ササッと靴を脱ぎ、裾をめくって雪解け水で冷え冷えの沢に突入。
元々「渡渉」には興味があったので、しょうがなく、と言うよりも喜んでの突入だ。(マゾ?)

膝下までの水深で数歩程度で渡れる沢幅だったが、雪解け水の冷たさに一気に足が凍えてしまう。
とはいえ、水量の増した沢の流れに足をとられないよう注意して一歩一歩進む。

沢を渡りきったら即、暖かい石の上で体温(足温?)回復。
少し時間がたつと足元がホカホカになってきてダメージを受けるどころかスッキリ爽快、ここまでの足の疲労もすっかり回復だ。
必要に迫られない限り、渡渉する機会なんてそうそうないだけに良い経験ができたものだ。

雪渓の残骸を眺めながら登ってゆくと、いよいよ本日メインの登り「胸突八丁」の標識が登場した。
その名のとおり胸を突かれたかのように息が切れる苦しい上り坂だ。

山道脇に咲いている可憐な花々に励まされながら、ペースを守って淡々と登っていくと、マイペース登りも板に付いてきたのか、強烈に胸を突かれることなく順調に標高を稼いでいける。

崩壊の進む雪渓を登ります。


標高が高くなるにつれて、雪渓が目立つようになってきた。
さすがにこの時期では雪渓の崩壊が進み、崩れてできた穴から雪渓下に流れる沢が丸見えだ。
そして落石も目立つ。

ルートを確認する限り、この雪渓を登らなければならない。

少しの区間とはいえ、こんな危険臭がプンプンする雪渓は素早く通り過ぎてしまいたい。
胸を突かれる覚悟で一気に登ってしまう。


激しく胸を突かれながらも無事に雪渓を渡りきると、丁度よいタイミングで水場が出現。
この水場は「最終水場」と案内されていることもあり、たっぷりと水を確保することにする。

「最終水場」の英訳が「LAST WATER」ってどうなの?


稜線上に出てしまうと当然水場はなく、営業中の小屋で購入するしかない。(常念小屋では1リットル200円也)
節約登山をモットーとする私にとっては、この「最終水場」で必要な量の水を確保しなくてはならない訳だ。

ところでこの「最終水場」の標識に記されている英訳なのだが、「LAST WATER」となっている。
言わんとしていることは分かるのだが、この英訳で大丈夫なものか?

「死に水」も「LAST WATER」と言うらしいが・・・。
いや、見なかった事にしておこう。


無事、胸突八丁を登りきると、突然視界が開け、槍ヶ岳が目に飛び込んできた。
遠くから見ても、近くから見ても、相変わらず尖っていやがるニクイ奴。

その他にも、良く耳にする涸沢カールや穂高連峰の岩稜も勇壮に横たわっている。

本日が北アルプスデビューになる私だが、これまでの樹林帯歩きでは他の山域と特に変わらず、北アルプスを意識することはなかった。
しかし、この景色を見て初めて実感が沸いてきた。

「猫も杓子も北アルプスばかり憧れやがって」と、これまで行けなかったことをやっかみ半分で強がっていたものの、なるほどこれが北アルプスの眺めか。
憧れる気持ちを少しは理解できた気がする。(まだ強がる)

槍ヶ岳を眺めながらの優雅な昼食タイム。


常念小屋でテントの受け付けも兼ねて、天候や山道の情報を収集。
テント設営後は、槍ヶ岳を眺めながらの優雅な昼食タイムだ。

雄大な景色と空腹が相まって、普段の旨味2割増し。

スケジュール的に余裕があるため、食後は槍ヶ岳に見下ろされながらテントで優雅な昼寝タイムと洒落こむ。

昼寝すること数十分。

暑っ苦しくて目が覚める。
これまで昼間からテントで過ごした経験がなかっただけに、日中のテント内がこれほど暑いとは思わなかった。
何だか片頭痛もするし、優雅になるはずの昼寝タイムが台無しだ。

常念岳の登り。ここから見えるのはニセ山頂。


明日は早朝から大天井岳へのピストンを予定しているため、今日の内に常念岳は登っておきたい。
片頭痛はいただけないが、軽装で常念岳へと向かった。

遮るものは何もないガレ場を登るにつれて、見えてくる景色が少しずつ変わってくる。
他の山陰に隠れて見えなかった常念山脈の最高峰である大天井岳も見えてきた。

そして夕暮れ前の常念岳山頂に到着。


常に念じている僧が住むという伝説があることから「常念坊」の別称を持つ常念岳。
それにあやかって見晴らしの良い山頂の岩場に座って、夕暮れが始まるまで「念じる感じ」に浸ってみる。

早い段階で寝ていた。(全然ダメ)

目の前はすぐ崖の岩上でこっくりこっくりと船を漕いでいる私の様子を見て、Kさんが心配して呼び起こしてくれたのが幸いだ。
このザマでは常念坊の「じ」の字にも及ばない。

「念じる」なんて柄にもないことはせず、暮れなずむ北アルプスの様子を眺めていると気持ちが静かになってきた。
いつの間にか片頭痛も気にならなくなっている。

槍ヶ岳に雲がかかり、寒くなってきたこともあり、Kさんも先着していた写真愛好家の方も下山してゆくが、何となく独り山頂に留まり景色を眺める。
夕日に染まる山々と空の景色をただただ眺める。
ゆったりと暮れゆく時間帯を静かに過ごす。

穂高連峰をバックに常念岳山頂。


常に尖っている槍ヶ岳。


蝶ヶ岳へと続く稜線。奥には乗鞍岳、御嶽山も見えます。

夕焼けショーが始まった。


黒部五郎岳方面に日が沈む。


無言で見つめる夕焼け空。

日が落ち、槍ヶ岳の上部に三日月が覗き出すと、「はやく下山しろ!」と言わんばかりに、すぐ背後から雷鳥の鳴き声が聞こえてきた。

三日月と槍ヶ岳山荘の灯。


暮れるまではゆったりだが、ひとたび日が沈んでしまうと暗くなるのは早い。
あちこちから聞こえてくる雷鳥の鳴き声に急かされて、速足でガレ場を下ってゆく。

常念小屋テン場に戻る頃はすっかり暗くなってしまい、他のテントからは既に寝息が聞こえていた。
こちらも簡単な食事をして、山頂で見た景色の余韻に浸りながら早々と床に就いた。

本日の写真

一ノ沢沿いの駐車場からスタート。

冷沢小屋。使われているのかは不明。

一ノ沢登山道入り口。

線香花火のような花。カラマツソウ?

シダ満開。

山の神。無事な登山を祈願。

森林浴をしながら歩きます。

古池。特に情報なし。

雪解けで激しい水量。

丸太橋で沢を渡ります。

大滝。でも滝っぽいのは見当たらない。

水勢があります。

まだまだなだらかで歩きやすい。

どこかの沢との出合い。

マイナスイオンが降り注ぐ。

常念岳が見えてきた。まだまだ登らねば。

飛び石で何とか渡れそう。

一ノ沢の雪渓が見えてきた。

雪解け水で増水した一ノ沢を渡渉。冷たさは覚悟。

つつくとプルプルと震えるプリンプリンキノコ(適当)。

サラダにすると美味しそう。その前に食べられるのか?

沢沿いに登ります。

鉱物知識ゼロだが、何気に撮影。

融けゆく雪渓の残骸。

崩壊の進む雪渓。

オオバミゾホオズキ。

胸突八丁。いかにも堪えそうな名称がステキ。

山道脇には花々が可憐に咲いてます。

ハクサンチドリ。

コイワカガミ。

雪渓上の落石。こんなの落ちてこられたら堪ったものではない。

次々と一ノ沢に合流する沢。

クロユリ。

雪渓を眺めながらの山歩き。

ここから雪渓を登ります。崩壊が進んでいるだけに踏み抜きが怖い。

LASTWATER。この英訳でいいのか?

ベンチがあったらしい。

常念乗越に到着。

ナイスロケーションの常念小屋。

槍ヶ岳を見ながらの昼食。

尖ってらぁ。

テント設営。槍ヶ岳見放題。

常念岳。

強力そうな常念小屋のアンテナ。

カメなのかテントウ虫なのか。

喫茶「常念坊」。常念○○が充実。

常念岳への取り付き。強風の様相だが実は無風。

岩場をジグザグに登ります。

常念小屋が小さく見える。横通岳に迫る雲がいい感じ。

山頂が見えてきた。

三股への分岐点。

常念岳山頂から槍ヶ岳を眺める。

穂高連峰をバックに常念岳山頂。

何処から見ても尖っている槍ヶ岳。

山頂の岩場に寝転がって景色を堪能。

夕暮れの色合いになってきた。

蝶ヶ岳へと続く稜線。

空が染まってきた。

夕暮れの空に剱岳をはじめとする立山連峰が浮かび上がる。

迫る雲海。

穂高連峰と涸沢カール。

夕暮れショータイムの始まりだ。

常念岳の影が下界に延びる。

三日月と槍。

月明かりと槍ヶ岳山荘の灯。

本日の山行情報

複数人山行/1日目/テント泊/8時間以上歩行/マイカー登山

常念岳(じょうねんだけ)
標高2857m
詳細(外部リンク)

本日のスケジュール

駐車場[着] 06:35 - [発] 06:35
 ↓ 30分 舗装道路
一ノ沢登山口(ヒエ平)[着] 07:05 - [発] 07:10
 ↓ 335分 
常念小屋[着] 12:45 - [発] 17:00
 ↓ 70分 
常念岳[着] 18:10 - [発] 19:15
 ↓ 45分 
常念小屋[着] 20:00 - [発] 20:00

行動時間:8時間(休憩含む)

本日のおすすめ(お土産/温泉情報)

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