ルナサンダル(LUNA Venado)なるモノを購入した。
ペラッペラでシンプルな、いわゆるビーサンなのだが、このルナサンダルにはある思想が込められている。
一般的な靴を履いていると、無意識に踵から着地する歩き方になる。
ソールがクッション代わりとなって足をサポートするため、フラットフッティング(足裏全体で着地する事)を意識する必要が無くなったのだろう。
これが然して悪い訳でもない。
しかし、サルだった頃を思い出そうぜ。
裸足で大地を感じながら野山を駆け巡ったあの頃を!
こんな『歩き』そのものを改めて意識させてくれるのが『ルナサンダル』だ。
(と言うか、慣れるまでは意識しないと痛いだけ)
歩き好きな私としては、この手の思想には手放しで食いついてしまう。
流行りに疎い私は知らなかったが、このルナサンダルは巷で話題になっているらしく、ランニングやトレッキングなどで履かれていると聞く。
とは言え、ランニングはともかく、サンダルで山など歩けるのか甚だ疑問だ。
無防備なサンダル山行では、爪先を岩に強打したり、鼻緒が擦れて皮がズル剥けになるなど、危険要素に事欠かないだろう。
このように一抹の不安はあるが何事も実践。
サルへと回帰すべく、実際に山中へと繰り出してみた。
【ルナサンダル情報】
ルナサンダルにはいくつかのモデルがあり、それぞれソールの厚みが異なります。
LUNA Oso :スペイン語でゴリラ。シリーズ中最厚のソールで積極的に山中で履けます。
LUNA Mono :スペイン語でサル。多様性の高い10mmソール。
LUNA Venado :スペイン語でシカ。シリーズ中最薄の6mmソール。
訳あって山形の実家にいる事もあり、初めてのサンダル山行としては『千歳山』が手頃だろう。
歩きやすい低山だし、徒歩圏内の近所だし、何度もお世話になっているし、用事があって丸一日使えないし、と色々な意味で好都合。
最初からルナサンダル装着で出発した。
既に普段履きで慣らしているため、歩き心地は上々。
フィット感を確認しながら、千歳山で最も一般的な千歳稲荷登山口に到着した。
低山とは言え、あらゆる危険要素を含む山道を無防備なサンダルで歩くのだから、フラフラ歩かず足元に集中しよう。
増加の一途をたどる山岳遭難事故が問題視されている近年において、サンダル姿で救助などされたら目も当てられない。
「サルへの回帰を・・・」なんて理由が世間に通用するはずもない。
程よい緊張感を持ち、普段よりしっかりとベルトを締めてから稲荷神社の鳥居をくぐった。
山道の僅かな凹凸を足裏からダイレクトに感じ取れる。
その感じは、フラットなアスファルトと比べるとまるで別物で、その違いは想像以上だ。
軽い足ツボマッサージを受けているような心地よさ。
だが、やはり鼻緒は気になる。
鼻緒が擦れないようにしっかりとベルトを締めていても、加重方向によっては「痛ッ!」となる。
こういった事も踏まえ、『歩き』を意識しなければならないのが、ルナサンダルの主張なのだろう。
通常の山歩きにも増して、意識して足の置き所に注意を払う。
一歩ごとに『歩き』を実感する。
足元の軽さもあって、ついオーバーペースになり呼吸を乱したが、無事に山頂の展望台に到着した。
サンダルだけの無防備な素足に心地よい風があたる。
ふう、サル気分。
元から、登りはそこそこイケるだろうと想定していた。
問題は下りだ。
登りと違って、鼻緒への過重が容易に想像できる。
汗が引いたところでハラハラしながら下山を開始する。
実際に下り始めると、意外にも鼻緒は気にならず、むしろ登りよりもラクかもしれない。
確かな足場を選んで、ひょいひょいと身軽に下山するのは何とも爽快だ。
「こりゃあ、いいぞ」と、軽快に下っていると、ザザーッ!
ザレ場で足元が滑り、石に指先を強打。
怪我するほどでは無かったが、瞬間的な爪先の痛みに絶句する。
こんな時、サルやゴリラも絶句するのだろうか。
痛みのあまりか、どうでもよい疑問が脳裏に浮かんだ。
どうやら、サル回帰への道は一筋縄ではいかないようだ。
調子に乗らず慎重に行こう・・・。
その後もザレ場でザザッ!となりながらも、足を痛める事なく無事に下山した。
初体験のサンダル山行となったが、想像していたほど過酷ではなかった。
これまでの山歩き経験が活かされていたのかもしれない。
そして、足元への意識が高まった事により、今後の山歩きにも役立ちそうな予感だ。
誰にでもオススメできる山行スタイルではないが、興味のある方には是非、大地を感じる『歩き』を体験してもらいたい。
ただ、万が一救助される状況に陥った際には、間違っても「サル回帰を・・・」なんて理由を口走らないように。
余談だが、山帰りに近所の臥龍温泉へ向かうも、着替えのパンツを忘れて直接ジーンズを履く羽目に。
股間がスースーして、どことなくサル気分。
どうだろう、この余談感。