久し振りにヨメと山歩き。
数ヵ月前に両足に火傷を負ってしまったヨメは、傷口が衣類に擦れてしまうため、医者から長時間の運動を控えるよう注意されている。
それでもやってしまうのがヨメ。
そんなガツガツ歩きたいヨメには少々我慢してもらい、傷口に優しい尾瀬山行プランを用意した。
戸倉に駐車し、バスで交通規制のかかった鳩待峠へ。山ノ鼻まで1時間程歩いてテント設営。初日は至仏山に登って、翌日は尾瀬ヶ原を散策、といった定番プランだ。
初日こそ鳩待→山ノ鼻区間を2回歩く事になるが、空身で歩けるメリットは大きいだろう。山ノ鼻の至仏山荘では15~19時の間にお風呂に入る事もでき、傷口に優しいプランと言う訳だ。
前日の夜に戸倉まで行き、車中泊。
朝一番の乗合タクシーに乗って尾瀬入りした。
【戸倉~鳩待峠の乗合タクシー】
定員になり次第、随時運行している8人乗りタクシーです。シーズン中はすぐ定員になるため、待ち時間短縮に便利。タイミングによって定期運行のバスと使い分けるのがベスト。
交通規制のかかった鳩待峠へのゲートが5時に開き、「尾瀬一番乗り~」と喜ぶ隙も見せず、鳩待峠に着くなりどしゃ降りの雨となる。
数日前から天気をチェックして、天気が良さそうな地域を選りすぐったのに初っぱなからどしゃ降りとは。山だからしょうがないとは言え、別のエリアはどうだったろう・・・と考えてしまう。(注文後にまたメニューを見ちゃうタイプ)
乗合タクシー/バスで次々と到着するお客さんも当然雨宿り。こうして鳩待峠休憩所は雨宿り場として大混雑となる。
雨降りなんて山歩きにはツキモノ。
この混雑具合に嫌気がさし、レインウェアを着てザックカバーを装着。小降りになったところ見計らって休憩所から脱出した。
同じように休憩所を出て山ノ鼻に向かうお客さんには、カッコいいレインウェアの方もいればコンビニで買っただろう間に合わせのカッパの方もいる。普段着で傘の方もいる。こんな光景も定番ルートで大人気の鳩待峠ならではだ。
テント内で雨が上がるのを待っている生活感あふれる光景。
一旦、弱まった雨足も、山ノ鼻に到着するとまた強く降りだしてきた。
ビジターセンターで雨宿りをしていても一向に止む気配がない。
ここは観念して、雨が降る中、テント設営を決行。
設営してしまえば天候が回復するまで、焦る必要のない贅沢な時間をゆったりと過ごす事ができる。
車中泊では十分な睡眠を得られなかったらしく、テント内で横になったら11時までグッスリと寝てしまった。ゆとりスケジュールとは言え、ちょっと寝過ぎた。
外に出ると青空は見えないが雨は止んでいる。
尾瀬に来て寝て過ごすだけだなんて贅沢すぎて勿体無いので、必要最低限の軽装で至仏山に向かい出発した。
植生保護のために登り専用となっている山ノ鼻からの山道は、今朝方の雨もあって沢のように水が流れ落ちている。そして至仏山名物で滑りやすいと評判の『蛇紋岩』も余計に滑りやすくなっている。
注意深く慎重に登る。
森林限界を超えると夏色の尾瀬ヶ原が眼下に拡がって見えてきた。
そうそう、これを見るためにやって来たのだ。
水芭蕉の春の尾瀬、金色の秋の尾瀬、そして今回の青々と生命力を感じさせる夏の尾瀬。同じ尾瀬でも季節によって全く異なる表情で楽しませてくれる。
機会があれば一面真っ白の冬の尾瀬も是非体験したいものだ。
中腹から見上げて確認する限り、どうやら山頂はガスの中。
以前、至仏山に登った時も、山頂だけガスがかかって何も見えなかった。
山頂に到着するまでに晴れてほしいという願いもむなしく、今回もガスの至仏山山頂となってしまった。まぁ、中腹から尾瀬ヶ原が見えただけでも良かった方か。
相変わらずどっしりと存在感のある山頂石碑を写真に収め、軽い休憩後に鳩待峠へと下山を開始。
こちらの山道もやはり蛇紋岩地帯。ただ、先程登ってきた山道の蛇紋岩とは比べ物にならない程に磨きのかかった滑りっぷりを発揮している。
【私的ココが至仏山】
蛇紋岩 :すっかり名物化しているヌルヌルと滑るニクイ岩。
山頂石碑:ドーンと山頂に鎮座。多少の事ではびくともしない存在感がたまらない。
歪み木道:山ノ鼻からの山道にある朽ちて傾いている木道。滑りそうで地味に怖い。
ドーンと山頂に鎮座。多少の事ではびくともしない存在感がたまらない。
山ノ鼻からの山道にある朽ちて傾いている木道。滑りそうで地味に怖い。
ガスのかかる稜線上は風が吹き付け、霧雨で濡れた身体から体温を奪ってゆく。
寒いし滑るし視界が悪く先も見えないため、樹林帯まで早く下りたい気持ちが高まる一方。それでも慎重さは忘れない。
大きく滑る事なく小至仏山を越えて鳩待峠まで戻ってきた。
ここまで下りてくると天気はそこそこに空気も暑い。稜線上で凍えていたのがウソのようだ。
滑らないように気を張っていたからか、軽装だったにも関わらず何気に疲れている。
下山途中の所々にあった『鳩待峠まであと○キロ』の標識も、3割増しに感じてしまう程の疲労感。実際、尾瀬の距離感は他の山域と違うんじゃないだろうか。(気のせい)
鳩待峠で小休止後、腹の虫を鳴らしながらいそいそと山ノ鼻のテン場へと戻る。
そして待ちに待った夕食を満喫。
絶妙なタイミングで入手したアルフォートミニ。至福・・・。
お腹も満たされ、食後のコーヒーでマッタリしていると、ヨメが思い付いたように「甘いもの食べたいよね。アルフォートとか・・・」と呟いた。その瞬間、ふたり同時にある可能性を閃き、言葉を交わす事なく至仏山荘へ駆け込むとあった。
アルフォートミニが。
『ミニ』だったとは言え、絶妙なタイミングでピタリとお目当ての商品にありつけた満足感で、稜線での寒かった思いも吹き飛び、心身ともにスッカリと回復。
私にとっては休憩や山頂からの眺望だけが回復の方法ではないようだ。
天気が今一つだった今日の山行も、日が沈むと頭上だけ雲が晴れて尾瀬の星空が開けている。
明日はよい天気に恵まれそうだ。