2016年7月4日
富士山:日帰り
馬返し:再度、一合目から富士山。

富士山は申の日に生まれたという伝説により、猿が神使とされています。


日常を淡々と過ごせるのは素晴らしいことだ。ただ、悪い意味で慣れてしまうと、新しい行動を起こすのが億劫になってしまいがち。

本日は珍しく完全なフリー状態となった。

日常とは異なる山歩きに出掛けようか自宅でマッタリしようか迷った末、気合いを振り絞って山歩きに決定。行く先は山開きしたばかりの富士山だ。

山開きしたとは言え、各山小屋や公衆トイレなどまだ開いていない場合がある。数年前に富士宮口から登ったときなどはどこも開いておらず、日本最高地点で便意をもよおし我慢に我慢を重ねて下山した苦い思い出がある。

それだけに、山行前に振り絞るべきは日常から脱する気合いだけではなく便もだ。
むしろ便だ。

(汚い話ですが結構重要!)

自宅で存分に振り絞った後、出発。




ここから聖域です。


富士山はこれまで何度か歩いているが、一合目から山頂まで続く修験道としての富士吉田口登山道はまだ登り切ったことがない。(高山病により途中撤退はあり)

そんなこともあり、再度一合目から山頂を目指す。

混雑を避けるために日曜の夕方前からボチボチと登り始め、所々で時間調整と言う名の休憩を取りながら山頂でご来光を拝むプランとした。

麓は真夏日で湿度も高いため、場合によっては雷雨も考えられそうだ。明るいうちに樹林帯の五合目付近まで登り、その時の状況に応じて森林限界を越えて更に登るか判断するとしよう。

そんな訳で、のんびりと吉田うどんを食べ、北口本宮冨士浅間神社に参拝しつつ、車で馬返し駐車場へと向かう。

ここから一合目富士登山の始まりだ。

麓は緑豊かです。


本来なら北口本宮冨士浅間神社から歩き始めたいところだが、日をまたぐ駐車の関係もあって馬返し駐車場から歩き始める。浅間神社へは立ち寄って参拝してきたことだし、今日のところは勘弁してもらおう。

一合目となる石鳥居前で一礼して聖域に足を踏み入れる。

夕暮れ間近の木漏れ日が射し込む樹林帯を山頂目掛けて一直線に登ってゆく。火山で岩山のイメージが強い富士山も麓は緑豊かで、暗いイメージの樹海もここでは爽やかな明るさがある。時々トレイルランナーが駆け下りてくる以外に人は無く、この時間帯から登る登山者は流石にいないようだ。

こんな状況は嫌いではない。一人静かな富士歩きを堪能する。

点在する昔の山小屋跡を眺めながら順調に五合目に到着した。

森林限界を越えると、山頂へ誘うかのように山小屋の灯りが山道伝いに並んで見える。ただ肝心の山頂には雲が掛かって全く見えない。雲が降りてきたのか風が強まり小雨もパラついてきた。

さて、どうしようかな。

今から戻れば真っ暗になっても自宅まで余裕で帰れそうだ。でも体調も良いことだし、もう少し登って天気の様子を見たい気もする。それに色々と振り絞って来たのだ。

よし、登り続行。
防寒装備を改めて、再出発した。

五合目から見る山頂の様子。どうしたものか・・・。


ここからはいわゆる富士吉田登山道の六合目に合流する。日曜夕方でお馴染みサザエさんの時間帯もあって、登山者はチラホラ見かける程度。そして、そのほとんどが辛そうな素振りを見せず、エンジョイしている海外の登山者だ。

前後左右の各方面から聞こえてくる外国語に、数年前の富士登山で高山病のためやむなく撤退した時と同じ状況であることを思い起こさせる。内心「やだなぁ・・・」と思ったが、気にしない気にしない。(全力で自分に言い聞かせてます)

通過するほぼ全ての山小屋で休憩を挟みつつ山頂を目指していると、あることに気がついた。

おや、今日は調子が良いぞ。
標高3000mを越えても高山病になりそうな兆候が無いばかりか、遅くとも歩調が乱れていない。

一般的に標高2500mくらいから症状が出ると言われる高山病だが、私などは標高2000m付近で怪しくなる。それが高山病にあたるのかは別として、とにかく標高に弱いのだ。

下方に広がる美しい夜景。


高山病は体質によるものとされ、鍛えられる要素ではない。高度順応などにより慣らすことはできても、高度を下げればまた元に戻ってしまうらしい。その為、効果の是非はともかく予防策に頼るしかないのだ。

  • 山行前日は睡眠をよくとる。
  • 山行中は多目に水を飲む。
  • 呼吸を乱して歩かない。

そして、今回。
個人的に手応えを感じた新たな対策。

  • 頭を垂らして呼吸を整えない。NEW!

これ。

呼吸を整える際の体勢は頭を垂らしがちだが、こうすると頭がボワーンとする高山病発症の予兆に似ていて、悪い予感しかしないのだ。

これらの対策を心掛けて、現在標高3000mオーバー。珍しく気分は上々だ。

山頂はもう目の前。


一時、見えていた山頂だったが、九合目に来て再びガスは濃くなり、風も強まってきた。御来光の時間にはまだ早く、まばらな登山者とともに山頂を目指す。

そして、一合目から山頂に無事到着。

到着した富士吉田口山頂は小雨と強い風ですこぶる見通しが悪かった。こんな状況でもご来光待ちの登山者の姿はあり、数時間後に昇るだろう朝日に期待して、身を寄せあいながら雨風の寒さに耐えていた。これにはさすがの海外登山者たちもエンジョイできないようで、全身から難民的な雰囲気を漂わしている。

ここに来て高山病が発症した私も例外ではない。

酷くは無いが軽い吐き気があり、取り敢えず雨風がしのげる場所を見つけてツェルトにくるまって仮眠することにした。




山頂、もといツェルトの中。


日の出時刻1時間前。

ガタガタと寒さに震えて目が覚める。

雨風は更に強まり、ツェルトを破らんばかりの強風が激しい音とともに吹き付けてくる。建物や岩場の陰から出てしまうと、歩けないレベルの強風だ。日が高くならなければこの状況は改善されないと判断した私は、日の出時刻を前にして下山を開始した。

下方からは御来光目的のツアー客や登山者が列をなして登ってきている。「皆、難民入りか・・・」と思いながらも下山を続けているとガスが薄くなってきた。予想通りと言うか、雲が掛かっているのは山頂のみで下方は晴れているようだ。

しばらく下山を続けていると、突然あちこちから歓声が上がった。

日の出方角をみると、そこには薄いガス越しにおぼろげな太陽が浮かび上がっていた。ストレートな感情表現を持つ海外登山者が多いせいか、状況の悪さを全て帳消しにするような喜びように、何だがこちらまで嬉しくなってしまう。


おや?


あれはッ!


御来光だぁーッ!


改めておはようございます。


性別も年齢も国籍も関係なく、皆が一様に御来光を眺めている。思うことこそ違えど、皆が同じ方向を向く御来光の時間はやはり良いモノだな。

ちょっと涙ぐむ。

ただ、山頂は未だ雲に覆われていた。どうしてるだろうか、あの難民たち・・・。

山頂を除き、すっかり晴れ渡った景色を前にしながら淡々と下山を続ける。登山は下山こそキモ。一合目はまだ遥か彼方のため、壮大な景色を楽しみつつ決して油断はできない。

山頂では雨風に吹かれて難民気分となっていたが、標高を下げるごとに気温は上がり、今では常夏気分だ。ただ、寒さが解消された代わりに疲労感は確実に蓄積されてゆく。一合目までの道のりの途中で幾度も転た寝をして、多数の虫刺されを受けながらも無事に馬返し駐車場へと下山した。

六合目から一合目の道程。


最後の鳥居をくぐる際に一礼。修験道としての富士吉田口登山道を一合目から歩き終えて感無量、と思いきや眠気と疲れで疲労困憊だ。高山病の症状も治り切っておらず、若干の嫌な余韻がある。

「いやぁ、疲れるのはもうゴメンだね」

下山直後はそう思っていても、また登りたくなるのが山歩きの不思議だ。
と、書いている時点で既に歩く気満々。

漫画的山行記録

富士登山に行ってきます。

数年前、高山病発症により途中撤退した一合目からの登山です。

いわゆる修験道としての富士吉田口登山道歩きです。

急いで登ることもないため、吉田うどんを頂いてカロリー補充。

では、北口本宮冨士浅間神社に参拝。

気を付けて、

行って来いよ。

今回は駐車の関係で、馬返し駐車場から歩き始めます。

では、参る。

聖域手前で見守る神使のお猿さんに一礼ッ!

ちなみに、富士山が申の日に生まれたという伝説により、猿が神使とされています。

1~5合目区間には当時の賑わいを感じさせる跡地が点在しています。

そしてこの緑。

岩山のイメージが先行する富士山ですが、麓は緑豊かです。

どうですか、この存在感。

まだまだ先は長いのでボチボチ歩きます。

この所要時間、萎えるわぁ。

時折北側の景色が開けます。

FIVE STATION。昔から海外登山者に人気だったのかしら。

五合目まで来ると、そろそろ樹林帯を抜けます。

上部には雲のかかった富士山。

風が強まり小雨も降ってきたので、星観荘前で進退を検討します。

体調が良いので登りまーす!

手持ちでは富士吉田の夜景がうまく撮れない・・・。

そんな訳で夜間の写真撮影なし。ちぇっ。

蛾も登山。この標高では寒かろう。

八合目までやってきました。

標高にすこぶる弱い私ですが、本日は高山病の兆候が見られません。

この調子で行くぞー。

『御来光』のイメージ通りの表札。何となくありがたや。

下方には夜景が広がります。

九合目の鳥居をくぐってラストスパート。

富士吉田口山頂です。

小雨まじりの強風で防寒装備がなければ寒くて居られません。

天候回復を願い、ツェルトにくるまって少々仮眠。

寒くて目を覚ますと、状況は更に悪化していました。

雨風は更に強まり、ツェルトを破らんばかりの強風が激しい音とともに吹き付けてきます。

こりゃあダメだ。

天候回復は見込めないと判断。日の出時刻を前にして下山を開始します。

こんな状況でも参拝だけはします。

山頂から少し下るだけで雨風は弱まってきました。

昨日から引き続き、山頂部分だけに雲が掛かっているのでしょう。

案の定、標高を下げる程にガスが薄くなってきました。

むっ、あれは・・・。

御来光ッ!

上からも下からも歓声があがります。

お日様に一礼ッ!

日が昇り、見る見るうちにガスが晴れてゆきます。

改めて、おはようございます。

山頂では何も見れませんでしたが、この景色で充分です。

富士山らしい赤土の景色が現れました。

富士山北側の山々も次々と現れます。

フジハタザオや

イワツメクサもいます。

標高を下げて緑豊かになってきました。

六合目付近まで下りましたが一合目はまだまだ先。

山頂には相変わらず雲が掛かっています。

山頂で雨風に耐えていた登山者たちは無事に御来光を拝めただろうか・・・。

山頂とは変わって暑くなってきた樹林帯に突入。

木陰で昼寝。(虫刺され多数)

無事に一合目まで下りました。

これが富士吉田口登山道古来の姿です。

聖域を出て一礼ッ!

明大山荘前でボランティアの方からお茶の振る舞いを受けます。

ふぅ、疲れた身体に染みわたる・・・。

馬返し駐車場に到着。

山頂は楽しめませんでしたが一合目から無事に歩けました。

お疲れ様でした。

おわり

漫画的山行記録
(新規ウィンドウ表示)

本日の山行情報

単独行/日帰り/ツェルト泊(ビバーク)/8時間以上歩行/マイカー登山

富士山(ふじさん)
標高3776.12m
詳細(外部リンク)

本日のスケジュール

馬返し駐車場[着] 16:42 - [発] 16:42
 ↓ 11分 
一合目[着] 16:53 - [発] 16:53
 ↓ 30分 
二合目[着] 17:23 - [発] 17:23
 ↓ 20分 
三合目[着] 17:43 - [発] 18:16
 ↓ 28分 
四合目[着] 18:44 - [発] 18:44
 ↓ 31分 
五合目[着] 19:15 - [発] 19:47
 ↓ 62分 
花小屋(七合目)[着] 20:49 - [発] 21:04
 ↓ 13分 
鎌岩館(七合目)[着] 21:17 - [発] 21:38
 ↓ 37分 
太子館(八合目)[着] 22:15 - [発] 22:40
 ↓ 6分 
蓬莱館(八合目)[着] 22:46 - [発] 23:19
 ↓ 31分 
元祖室(八合目)[着] 23:50 - [発] 00:01
 ↓ 21分 
富士山ホテル(八合目)[着] 00:22 - [発] 00:46
 ↓ 15分 
御来光館(八合目)[着] 01:01 - [発] 01:19
 ↓ 28分 
九合目[着] 01:47 - [発] 02:06
 ↓ 37分 
富士山[着] 02:43 - [発] 03:58
 ↓ 42分 
御来光館(八合目)[着] 04:40 - [発] 04:46
 ↓ 69分 
太子館(八合目)[着] 05:55 - [発] 06:13
 ↓ 18分 
東洋館(八合目)[着] 06:31 - [発] 06:42
 ↓ 84分 
星観荘(五合目)[着] 08:06 - [発] 08:19
 ↓ 47分 
三合目[着] 09:06 - [発] 09:20
 ↓ 43分 
一合目[着] 10:03 - [発] 10:14
 ↓ 2分 
馬返し駐車場[着] 10:16 - [発] 10:16

行動時間:11時間15分(休憩含む)

本日のおすすめ(お土産/温泉情報)

この山域の関連記事