昨年の富士登山では、就寝中に高山病が発症して辛い思いをしてしまったが、今回はツアーならではの守られたスローペースのおかげで体調は万全だ。
それにしても暑っ苦しい。
布団を蹴飛ばして何とか寝ていたものの、熟睡には程遠い。
浅い眠りを繰り返し、1時頃にはドロンとした目覚めで出発準備を始める。
雨に降られそうな様子だったため、あらかじめレインウェアを着て準備していると、他のツアー客で同じく準備中の若人に目がいった。
レインウェア上下ともだだかぶり。
驚くことにインナーまでもが奇跡的だだかぶり。
ここまでかぶると恥ずかしいを通り越してある種の清々しさすら感じてしまう。
おかげでスカッと目も覚め、「同志!」と二人で記念撮影をして山頂での再会を誓って出発した。
登り始めるとすぐに雨が落ちてきた。
雨風が強まり見る見るうちにズブ濡れ状態になっていくが、ここでゴアテックスレインウェアの性能の見せどころだ。
露出している顔はしょうがないにしても、ウェア内の湿り気を感じることなく実に快適だ。
先程の同志も、きっと同じように実感していることだろう。
とはいえ登れば登るほどに天候は悪化してくる。
ここでツアーガイドの判断で撤退を余儀なくされる。
単独だったら登っていたであろう状況だが、確かに登頂したとしても見えるものは何もなかったかもしれない。
今回はピークハントが目的ではないため無理して登ってもいい事はなさそうだ。
ズブ濡れツアー客と一緒にトボトボと小屋まで戻ると、渡されたビニール袋に濡れた装備をまとめて詰め込み、順序良くそれぞれ元の寝床へと戻ってゆく。
撤退の無念さもあるのか、会話もなく無言で寝床へ戻ってゆく光景は、何だか強制労働を強いられた後のようだ。
深夜2時に雨風に打たれながら暗闇の山道を登って下りる。
ここだけ抜き出すと、確かに悲壮感しか残らず「何やってんだ」と言われてしまいそうだ。
しっかりと体を拭く事も出来ず、湿った状態で寝床へ戻る羽目になったこともあり、明日からの布団干しは大変だろうな・・・などと感じながら私も同じように寝床に戻り、2度目の就寝。
「御来光見えるかもしれないですよー!」
こんな声で目を覚ます。
どうやら天気が回復しつつあるようだ。
御来光がメインの目的だったのか、目を覚ましたツアーの皆さんがドドドドドッと一斉に外に出て行く。
寝惚け眼でそんな騒々しい光景を眺める私。
静かになったところで私も御来光を拝みに玄関まで出ると、朝焼けタイムが終わったのかツアーの皆さんがドドドドドッと一斉に中に入ってきた。
あまりの混雑に外に出られず、イモを洗うような光景をただただ眺める私。
やっと外に出れた。
おおよそ見当はついていたが、やはり御来光タイムは終わっていた。
それでも地上には雲海が広がり、雲の隙間から若干の朝焼けを確認できる。
下山までこの天気が持ってくれるといいのだが。
すっかり目が覚めたので荷物を整理し、昨日配られた朝食弁当を食べてみることにした。
弁当は昨日の時点でザックの中に入れていたため、開けてみるとオカズたちが散らかっている。そして当然冷たい。
悲壮感を漂わすかのように散らかっているゴマ塩ごはん、シャケ、ソーセージ、たくあんの千切りをワッシワッシと食べる。
それでも意外とイケる。
すっかり夜が明けたところで下山開始。
下山はスローペース過ぎると余計に疲れるとのガイドさんの説明があったこともあり、団体行動から外れて先行して下山することにした。
やっぱり自分のペースで歩けるのは気がラク。
雲海の広がる奥秩父・奥多摩山塊を眺めながら下山できるところが、いかにも富士山らしくて気持ちがいい。
快調な足取りを保ちつつ2時間程で五合目に帰還。
その後、ツアー客がそろったところでバスで麓まで下り、温泉施設で汗(ほとんど寝汗)を流す。
そして何も成し遂げていないのだが、ツアー参加者と「カンパーイ!」と打ち上げ(残念会?)をして初めての登山ツアーは幕を閉じた。
何と101歳で登頂した五十嵐貞一翁。その後105歳まで登り続けたとか。とにかく凄い方です。
それにしても移動中の睡眠ほど足しにならないものはない。
帰りのバスでは終始眠りこけていたが、帰宅後も横になるや否やどろりと眠りに落ちてしまった。
この歳になるとやはり良質な睡眠は大事。