登山をする中高年には凄まじいイビキをかく兵が少なくない。
昨日宿泊した赤岩八合館は平日の割にお客さんが多く、ほぼ満員状態。
大丈夫だろうか?と思っていたが、奇跡と言っていいほどにイビキ率は低かった。
だが体が熱く、多少息苦しくなり何度か目を覚ました。
それでも布団を蹴飛ばし何とか寝ていたが、2時頃、山頂御来光予定の方がゴソゴソと準備を始める音で目が覚めた。
うーん、なんだか胃がムカムカする。
そういえば高山病は6~12時間後に発症するという。
これが高山病、山酔いか・・・と思いながら、外の冷たい空気を吸ってリフレッシュ。
八合目から山頂までのコースタイムは90分。
そんなに大変でもないな、と下界では思っていたが、実際は山酔いもあってかなりしんどい。
途中、胃のムカムカが最高潮に達し、昨晩食べたカレーを戻してしまう始末。(当分カレーは・・・)
ただ、吐いたことでだいぶラクになったため登り続けた。
少し登って座りやすそうな岩を見つけたら休憩、また少し登って横になれそうな岩を見つけたら休憩。
まだ胃のムカムカはとれないが、見上げると満天の星空が広がっている。
時には流れ星も。
「胃がスッキリしますように・・・。」と流れ星にプチ願いをかけつつ登り続ける。
周囲には誰もおらず、ヘッドランプを付けているとはいえ、山頂を確認できないほどの暗闇の中、登り続ける。
気がつくとすぐ上に鳥居が見えてきた。
筋肉疲労はほとんどないが、山酔いによる精神的疲労をしこたま抱えたまま無事に(無事か?)山頂へ到着。
まだ辺りは暗いがすでに人が結構集まっている。
ぐったりと頭を垂れて座り込んでいる方もちらほら。
「しんどいよね」と心の声で高山病仲間を励ましながら御来光ポイントを探す。
そうは言っても、こちらも高山病者。
あちこちウロウロするほどの気力はなかったため、御殿場ルート山頂口からすぐの駒ヶ岳(浅間ヶ岳)で御来光を待つことした。
風はほとんどなかったが事前にリサーチしていた通り寒い。
お父さんに抱きかかえられてもガチガチ震えて縮こまるチビッコに「さむいよね」と心の声をかけ、こちらも持参した防寒具を全て身につけて震えながら御来光を待つ。
空が明るくなってきた。
皆、固唾をのんで御来光を待っている。
周囲の方とコミュニケーションをとったわけではないが不思議な一体感。
「皆さんようこそ」
そんな感じで御来光。
あちらこちらでシャッター音が鳴り響く。
いやぁ、感激です。
偵察がてら軽い気持ちで登ってきたにも関わらず感動的です。
ひとしきり感慨にふけ、日が高くなってくると御来光を拝み終えた人たちが一斉に移動を始める。
行く先は富士山頂郵便局やお土産屋。そしてやはり富士山最高峰の剣ヶ峰。
火口の外周は全て山頂扱いになるのだが、やはり日本の最高標高地点を制したくなるのか、剣ヶ峰に続く馬の背(山道)には行列が出来ていた。
「山酔いも残っているし、並ぶのは嫌だな。。。」
ということで剣ヶ峰登頂とお鉢巡りはまた今度の機会ということで、早々と下山を始めた。
御殿場ルートでは手を使ってよじ登るような岩場がないため、快調に下山することが出来る。
あっという間に赤岩八合館まで戻ると、山酔いの症状もすっかり緩和されていた。
体調も回復したところで宝永山に立ち寄って宝永火口をのぞいてみることにした。
この宝永火口は圧巻です。
宝永山はただの砂山、火口もただの溝と言ってしまえばそれまでだが、その存在感たるやハリウッドスターの比ではない。
岩に腰かけしばらく見入っていると、独りのおじさん(お爺さん?)が登ってきた。
この方、昭和31年から富士山に登っている健康おじさんで、富士山ウラ話をたっぷり話してくれた。
今日は手紙を出しに登ってきた(それだけの理由?!)この健康おじさん曰く、直登のブル道(荷物運搬用ブルドーザーの専用通路で基本的には立入禁止)を使うのが一番早いという。
いやはや健脚そのもの。
更に聞くと、ブル道でブルドーザーを見かけた時に声をかけると乗せてくれるとか。
そういえば昨日、ザックを背負ったオバちゃんがブルドーザーに乗って下山してたなぁ・・・。
程良く疲れた膝を回復させたところで、大砂走りに合流。
この大砂走りは予想以上の楽しさ。
ほとんど走れるほどに砂がフカフカで、誰もいない雄大な砂礫を「ヒャッホー!」と爽快に駆け下りる。
この為だけに購入したスパッツも大活躍だ。
もう、あっという間に下山ですよ。
宝永山から大砂走り終点の次郎坊まで50分ほど。
登りと下りでルートは異なるものの、登り170分、下り60分とコースタイムを見るだけで大砂走りの爽快感は伝わるのではなかろうか。
高山病でしんどい思いもしたが、富士山ならではの山歩きを満喫することができた。
ある意味、日本国内での高山病経験も富士山ならではか?
富士山、日本一の山は伊達じゃない。