2015年10月25日
槍・穂高連峰:2日目
国設涸沢野営場:黄金のモルゲンロート、そして独占。

雲ひとつ無く澄みきった夜空です。


風の音で目が覚める。

昨日夕方から降り続いていた雨は止んでいるようだが、相変わらず風は強くテントを激しく揺さぶっている。シュラフから這い出し、期待せずにテントの外に顔を出すと雲ひとつ無く澄みきった夜空が穂高連峰を覆っていた。

こりゃあ、極上の朝焼けが見れそうだ。

着込んで外に出ると、西側に見える常念山脈の空が白んでいる。それに応じて穂高連峰の岩壁も刻一刻と明るさを増してきた。

蒼白く寒々しい色合いだった岩壁が次第に紅きに染まってゆく。その紅さたるや、これまで見てきた朝焼けとは似て非なるものだ。

これまで朝焼けに染まる景色を様々な山域/状況で目にしてきたが、この時ばかりは『朝焼け』ではなく『モルゲンロート(ドイツ語)』と、お洒落っぽく言いたくなる美しさがあった。

紅きに染まる涸沢。


紅きに染まる奥穂。


モルゲンロートとのコントラストが美しい。

しかし、涸沢モルゲンロートショーはこれだけで終わらない。

紅き岩壁は更に明るさを増して黄金の光を放ち始める。この光景は伝説の黄金郷『エル・ドラード』を彷彿させると言っても決して大袈裟ではない。

直下に見える日陰でモノクロの涸沢カールとのコントラストが、黄金に輝く奥穂高岳の岩壁をより際立たせている。足元を見れば凍った水溜まりにも金色の山陵が映され、もう何処も彼処も息を飲むばかりの光景が広がっている。

まさに、極上。

金色に染まる涸沢。


金色に染まる奥穂。


足元の氷に映る金色の山稜。

大興奮の涸沢モルゲンロートショーが終息を迎えると、忘れかけていた寒さが戻ってきた。未だ風は強く、まだ日が射していないテン場は寒々しい。

こんな陰の世界から陽の世界へと抜け出してみよう。

涸沢小屋から北穂高岳へと伸びる山道を見上げると、途中から日が差し込んで見るからに暖かそうだ。ようし、あそこまで登ってみよう。

しばらく登ると前穂高岳から派生する北尾根の陰から朝日が現れ、それと同時に体感気温が一気に上昇する。

陽の当たる場所へ。


陰から陽へ。
太陽光を浴びると活力が湧いてくるものだ。

唐突だが、太陽光をエネルギー源としているウルトラマンが地球上で3分しか活動できない理由がわかった気がする。彼はきっと寒かったのだろう。3分を過ぎると寒くて寒くて仕方なかったのだろう。

何だかウルトラマンがいじらしく思えた。
(※円谷プロ非公認の想像です)

本日はどの山にも登る予定がないので、テントに戻って二度寝を敢行する。早朝出勤する全サラリーマンの夢である二度寝を、この極上の環境で出来るなんて贅沢過ぎて申し訳ない。

どれだけ寝ていたのか、目を覚ましてテントから出るとすっかり日は高く、快晴の空が広がっていた。そして、周囲にはもう誰もいない。

つまり・・・

この涸沢カールの絶景を独占だぁーっ!!

空の蒼さと山陵の境目は合成したかのように明瞭で、日本らしからぬ乾いた空気感に包まれている。独占状態も結構だが、「ベストシーズンでなくても好天なら最高ですよ!」と手当たり次第に勧めたくなる景色が目の前にあった。

※現在は降雪してもおかしくない時期なので装備には要注意

涸沢の絶景を、


独占、


だぁーっ!

名残惜しいが下山を開始する。

横尾沢との出合まで下ると、風は穏やかで汗ばむほどの陽気になってきた。

「これならアレは欠かせないな」

と言うことで、途中の徳澤園でソフトクリームを頂く。濃厚かつスッキリした後味が、足首の疲れを一時忘れさせてくれる。次に、ヨメの希望により嘉門次小屋へと向かう。

囲炉裏で焼かれたイワナの塩焼きは絶品。


明神橋を渡り、穂高神社の鳥居をくぐってすぐの嘉門次小屋は、創業1880年の歴史ある山小屋だ。初代の上條嘉門次は優れた猟師であり、山の案内人としても活躍した山岳ガイドの先駆者とも言える。

そんな歴史ある嘉門次小屋の囲炉裏で焼かれた『イワナの塩焼き』がヨメのターゲットだ。ふっくらした焼き上がりに塩加減が堪らない逸品に舌鼓を打ち、すっかり満たされた気分となった。

ゆっくりし過ぎたのか河童橋に戻る頃には夕暮れとなり、焼岳へと沈む夕日を眺めて今回の山行は無事に終了した。

モルゲンロートに酔いしれ、混雑どころか涸沢カールの絶景を独占。ヨメの食べ物リサーチにより『食』にも満足した最高の涸沢デビューだったのではなかろうか。

もうこの際、財布の中身が極めて寂しくなった現実には触れないでおこう。

漫画的山行記録

テントに吹き付ける風の音で目が覚めました。

強風は変わりませんが、昨日からの雨は止んでいるようです。

テントから出ると、雨の効果もあって澄み切った夜空が広がっています。

静寂の涸沢カール。

奥穂高岳、涸沢岳。

そして北穂高岳方面。

常念山脈が白んできました。

紅きに染まりゆく岩稜。

紅き奥穂高岳。

紅き涸沢岳。

陰と陽とのコントラストが美しい。

モルゲンロート全開。

『朝焼け』ではなく『モルゲンロート(ドイツ語)』とお洒落っぽく言いたくなる美しさです。

おおっ、今度は金色に。

金色の北穂高岳方面。

金色の涸沢岳。

そして奥穂高岳。

大げさでも無く黄金郷エル・ドラードを彷彿させる光景です。

涸沢カールと黄金に輝く奥穂。

足元の氷にモルゲンロートが映ります。

氷モルゲン。

雲ひとつない快晴の涸沢モルゲンロートショーでした。

涸沢カールにはまだ朝日が射さず寒々しい状況です。

お日様を拝むため少し登ってきます。

静まり返っている涸沢小屋。

でも11月初旬まで営業中です。

陽のあたる場所まで登ります。

お日様はすぐそこ。

おはようございます。

はぁ、あったかい・・・。

朝焼けタイムは完全に終了しました。

正面には前穂高岳から派生する岩稜。

見下ろすと寂しげな国設涸沢野営場。

本日は何処にも登る予定はないのでテントに戻って二度寝します。

しばらくして外に出てみると。

快晴の青空!

そして、周囲にはもう誰もいない。

つまり・・・

この絶景をーっ!

独占!

だぁーっ!!

わははははッ!!

涸沢を大満喫したところで下山します。

足元には古代の壁画っぽい地図。

名残惜しいわぁ。

整備されて下山しやすい山道です。

ほのかに残るナナカマド。

晩秋の雰囲気です。

横尾沢の出合いまで下りました。

正面には蝶ヶ岳。

ここまで下れば暖かく快適です。

屏風岩を回って、

静かな山道を緩やかに下ります。

横尾大橋まで下山。

いやぁ、快晴快晴。

後は上高地まで林道を淡々と歩くのみです。

途中の徳沢に立ち寄ります。徳沢と言えば・・・、

徳澤園のソフトクリーム!コレは欠かせない。

心地よい穏やかな天気がたまりません。

水辺も静か。

明神橋まで来ると観光客でそこそこ賑わってきます。

ここからはヨメの希望により嘉門次小屋へ向かいます。

明神橋を渡って、

穂高神社の鳥居をくぐれば、

嘉門次小屋に到着です。

嘉門次小屋は創業1880年の歴史を持つ山小屋です。

そして目的はコレ。

イワナの塩焼きです。

くうっ、塩加減がたまらないっ!

ごちそうさまでした。

後回しになってしまいましたが穂高神社奥宮に参拝。

よく、

来たな。

神社は晩秋が良く似合う。

遊歩道伝いに上高地バスターミナルへ戻ります。

日が傾くのが早くなりました。

西穂、奥穂、前穂の岩稜を眺めます。

河童橋まで戻りました。

橋の上から焼岳へ沈む夕日を眺めます。

混雑のイメージで避けていた涸沢でしたが終始静かで快適な山行となりました。

ベストシーズンでなくとも快晴であれば最高ですね。

最後に沢渡公営第2駐車場前の温泉山小屋『ともしび』の露天風呂(入浴料300円)へ。

美しい景色を見て、美味しいモノを食べて、ホッコリと温まって帰る。

幸せだなぁ。

財布の中身は極めて寂しくなりましたが・・・。

おわり

漫画的山行記録
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本日の山行情報

複数人山行/2日目/テント泊/ハイキング/マイカー登山

涸沢カール(からさわかーる)

詳細(外部リンク)

本日のスケジュール

国設涸沢野営場[着] 10:06 - [発] 10:06
 ↓ 140分 
横尾大橋[着] 12:26 - [発] 12:32
 ↓ 50分 遊歩道/林道
徳澤園[着] 13:22 - [発] 13:42
 ↓ 50分 遊歩道/林道
嘉門次小屋[着] 14:32 - [発] 15:17
 ↓ 53分 遊歩道/林道
河童橋[着] 16:10 - [発] 16:22
 ↓ 5分 遊歩道/林道
上高地バスターミナル[着] 16:27 - [発] 16:27

行動時間:4時間58分(休憩含む)

本日のおすすめ(お土産/温泉情報)

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