2014年11月30日
房総丘陵:日帰り
人骨山:悲しき山頂で米を炊く。

トランギアのメスティンで炊飯。


私は縦走などの山行でよく生米を持ってゆく。予備食としてアルファ米もザックに忍ばせているが、もっぱら米を炊く事が多く、炊きたてご飯と味噌汁さえあれば歩く活力が沸いてくるタイプだ。そんな私が炊飯だけのためにコッヘルを購入した。

トランギアのメスティン。

丸形のコッヘルが多い中、ドカベンを彷彿させる長方形のフォルムが男心をくすぐる一品だ。そして、熱伝導率の高いアルミ製で炊飯にも適していると聞いている。因みにトランギアはスウェーデンのメーカー。スウェーデン人がドカベンスタイルで飯を掻き込むイメージが丸で浮かばないのだが、炊飯派の私としては試さなければならない。もちろん山中で。

そんな事でお出掛けだ。




若干時期は早いですが、今回歩く鋸南町は水仙三大産地です。


本日は房総丘陵の低山を散策してみる。その中でも以前から気になっていた人骨山(ひとほねやま)が今回の目的地となる。

人骨山。
なんて気になる山名だろうか。

気になって事前リサーチしてみると、人食い鬼の伝説があった。
※山名由来は諸説あります。

人骨山には、生け贄を捧げなければ災いをもたらす鬼が住んでいた伝説がある。若い娘が生け贄として山へ向かう風習は長く続き、誰一人として戻る者はいなかった。そんな村人の元へ現れたお坊さんの案により、屈強な犬を山に放つ事で鬼退治に成功する。その後、山に登ってみると、戻ってこなかった娘たちの骨が山のように残されていたと言う。それ以来、この地域では悲しい記憶が甦らないように、鬼を連想させる節分の行事をしないそうだ。

なんとも切ない話。

こんな悲しき伝説のある山の山頂でドカベン飯を食べようと企てる私は鬼か。(まぁ、伝説なので・・・)

駅近くでうろつくネコ。


JR内房線の保田駅から歩きスタート。

穏やかな好天の山歩き日和。便数は少なくても巡回バスが出ているので利用してもよかったのだが、この天気なら歩くのも悪くはない。時間もあるしボチボチ歩いて行こう。

低山の連なる房総丘陵では目的の山がどれなのか分かりづらく、似たような標高で似たような山容のピークがいくつも並んでいる。山道への道標もあるのか不確かなため、手持ちの地形図と見比べてキョロキョロしながら歩く。

まずは津森山を目指すも、近くまで来ているはずなのに対象の山はまだ見えていない。山道入り口を見逃さないように歩いていくと、意外にも立派な道標が建っていた。

これなら迷う事はないだろう、と安心して先へ進むと見知らぬ人の家に突き当たってしまう。立派な黒毛牛がムームーと鳴き、ワラの上には猫が寝ている。道標を探しても見当たらず、周辺をウロウロしている間も牛はムームーと鳴き、猫はスースーと寝ているばかり。

この家の前を通過するのが正解。


そうこうしていると第一おばあちゃんを発見。

「津森山への山道はどこにありますか?」
「その家の前(庭)を通っていったらあるよ」

これはアプローチ難易度が高い。おばあちゃんがいなかったら引き返すところだ。

怒られやしないかと恐る恐る家の前を通りすぎると、確かに道は続いており控えめな道標も見つかった。これまでに比べると少し山道らしくなり、ようやく完全な山道になったかと思ったら津森山山頂に到着した。

標高300mそこそこの低山はこんなモノだ。

とは言え山頂からの見晴らしはよく、隣にある人骨山も確認できた。ココから見る人骨山山頂は、大きな枯れ木に覆われているように見え、他の山とは違った寂しげな雰囲気が漂っている。

津森山山頂には御嶽大神、木花開耶姫、金比羅神社の石碑があります。


こんな印象もお構いナシに、私の腹の虫が鳴き出した。
お昼時も近い事だし人骨山に向かおう。

手持ちの地形図には道どころか点線すら掲載されていなかったが、人骨山への山道にはしっかりした道標が整備されていた。そして、その道標は意外にポップな感じで、オシャレっぽく『Hitohone』とローマ字表記されている。しかし、あまりにも『人骨』の文字のインパクトが強すぎて、ローマ字表記のポップさが逆に不気味さを引き立たせている気がする。

山道は急傾斜で滑りやすい状態だ。綱引きでもできそうな立派なロープが整備されている箇所を登りきれば人骨山山頂となる。津森山から見えた山頂の枯れ木には、絡み付いた蔦が血管のように浮き上がって、鬼が現れてもおかしくない独特の世界観が作り出されていた。

そんな山頂で炊飯だ。

あらかじめ水に浸しておいた米をメスティンに移して火に掛ける。米の甘い香りが漂い出すと同時に盛大に吹きこぼれはじめた。室内だったらひんしゅくをかいそうな吹きこぼれ具合だが、蓋の構造上、致し方ない。

吹きこぼれが収まり、プツプツという音が消えかかる頃に火を止める。後は重りとして蓋の上に置いておいたサンマ缶をつまみながら5分ほど蒸らす。

出来上がり。

意外とポップな道標。


山頂にある樹木。どこかおどろおどろしい。


吹きこぼれ中。

蓋を開けると、焦げ付き無しでイイ具合に炊き上がったお米の香りに食欲が増す。水加減、火加減など適当でもうまくいくモノだ。この炊きたてご飯の上に、塩分量度外視の自家製梅干を乗せていただきます。

うまい。

カッカッカッと飯場のオヤジ風にご飯を掻き込み、メスティンによる山中炊飯実験は満足な結果となった。ただ、同時に味噌汁も飲みたい私としては、もう一つコッヘルがあればよかったな。

鬼とドン太郎(犬)。


今回は人骨山山頂でご飯を食べてきた訳だが、人骨山に伝わる伝説の鬼の気持ちが少しわかった気がした。

見晴らしのよい人骨山山頂からは麓の民家が一望できる。ご飯時にもなれば各民家から煙がのぼり、一家団欒の雰囲気が漂っていたのは容易に想像がつく。独り身だっただろう鬼としては、この状況を毎日眺めては激しく嫉妬したのだろうな。もっともヨメがいても鬼ヨメだから、やはり嫉妬するか。

ふと、気付くと何故か鬼目線の私。
鬼か。

※人食い鬼伝説は、あくまで伝説です。

漫画的山行記録

山行時の炊飯用にメスティン(コッヘル)を購入。
早速、房総丘陵にある人骨山で炊飯するべく出発です。

JR内房線の保田駅から歩き始めます。

漁港もあるこの付近にはネコ、結構います。

道中ではまだ紅葉を楽しめます。

和風メルヘンな蕎麦屋を通過。

こちらのお店は山頂にあるらしい。営業してるのかな・・・。

神社があったので寄り道。

いい雰囲気の神社です。

狛犬もイイ感じ。

まだ時期は早いですが、ここ鋸南町は水仙三大産地です。

意外と立派な道標がありました。人骨山の前に津森山に寄り道します。

小さな道標も見逃さないように。

脇道がいくつかあるので迷わないように。

景色が開けてきました。

あれ、人の家で行き止まり??

近くのおばあちゃんに道を尋ねたところ、このまま家の前を通過するとのこと。
ここは分かりづらい・・・。

標識がありました。

ここからようやく山道らしくなります。

あっという間に津森山山頂に到着。
山頂には御嶽大神、木花開耶姫、金比羅神社の石碑があります。

この先、富士山が見える展望台があるようです。

残念ながら富士山は見えませんでした。

その代わりに千葉県最高峰の愛宕山が見えます。自衛隊の基地内のため、無断で入れません。

あちらが目的地の人骨山。

津森山を下って人骨山へ向かいます。

意外とポップな道標を発見。

『人骨』の文字のインパクトが強すぎ。

山頂直下は結構な急坂で滑りやすいので注意。

山頂にある木はちょっとおどろおどろしい感じ。

人骨山山頂に到着。何だコレ?

一昔前にはこの竿に大漁旗が掲げられていたそうです。何故?

改めまして人骨山です。見晴らしの良い山頂です。

さて、炊飯の時間です。

火にかけてサンマの缶詰を重り代わりに乗せておきます。

盛大に吹きこぼし中。

炊飯中に摘み食い。

蒸らし中。

塩分量度外視の自家製梅干しを乗せて出来上がり。

う、うまい!

完食です。

メスティンによる炊飯に満足したところで人骨山を後にします。

今回登った人骨山には人食い鬼の伝説があります。

ぼちぼち咲き始めたスイセンを眺めながら大崩バス停へ。

大崩バス停からは赤バス(巡回バス)に揺られて保田駅へと戻ります。

電車に乗る前にばんやの湯でサッパリしておこう。

夕暮れの保田漁港を眺めて帰路に就きます。

お疲れ様でした。

おわり

漫画的山行記録
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本日の山行情報

単独行/日帰り/ハイキング/電車・バス登山

津森山(つもりやま)
標高336m
人骨山(ひとほねやま)
標高292.6m

本日のスケジュール

保田駅[着] 08:40 - [発] 08:40
 ↓ 160分 ほぼ車道
津森山[着] 11:20 - [発] 11:30
 ↓ 35分 人骨山直下のみ山道
人骨山[着] 12:05 - [発] 13:20
 ↓ 40分 人骨山直下のみ山道
大崩バス停[着] 14:00 - [発] 14:00

行動時間:3時間55分(休憩含む)

本日のおすすめ(お土産/温泉情報)

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