2013年5月25日
蔵王連峰:1日目
熊野岳:麓から登る蔵王連峰最高峰。

近所のスーパーから出発。


自宅から蔵王連峰最高峰の熊野岳まで歩く。

車を持っていれば間違いなくしなかっただろう計画を、車のない今こそ実行だ。
GW明けから室内に籠りきりで仕事をしていた事もあり、気分転換としても打ってつけの歩きをタップリ満喫できる計画だろう。

西蔵王放牧場から前滝コースで瀧山、地蔵山、熊野岳、そして熊野岳避難小屋で宿泊。翌日は様子を見ながら南蔵王を歩いてみる計画。

自宅から徒歩で瀧山に行くのはこれで3度目。
宿泊装備のために荷物はこれまでで一番重いが、3度目ともなると西蔵王放牧場までの歩きは慣れたものだ。

しかしここからは初めて歩く前滝コース。
前滝コースは上級者向けとされており、下山道としては推奨されていない。つまり険しくて危ないのだ。

私の中で上級の定義は「自分で判断できるか」に尽きる。
一般山道に限った事だが、自分の体力や経験等を考慮し、裏付けされたあらゆる情報も駆使して、進退どちらにしても適切な判断で無事に下山できてこその上級と考えている。

「山ぁ?危ないから行かない」なんて言える人はある意味最上級者だ。
しかし己の歩行欲に勝てず入山してしまう私は、欲求と葛藤しながらも常に冷静な判断ができるよう心掛けている。

新緑が美しい。


さて、今回の前滝コースはどうだ?

行ける!と言うか行ってみたい!(※初級状態)
※下調べはしています。



放牧場の牛たちに刮目されながら、牧草地脇にある新緑の美しい森を進む。
そして霊山神社で安全登山を祈願し、心を静めてから前滝コースを登り始める。

急傾斜の谷間から登り始めて、これまた急傾斜の細尾根を登る。
補助ロープ設置箇所が連続し、油断のできない登りが続く。

張り出した木の根につまずいたり、バランスを崩して転倒などしようものならタダではすまされない状況。
それでも専門的な技術が求められる箇所はないため、ある程度の体力と、慎重に足場を選ぶ事ができれば登れない事はない。

まずは谷を登る。右側にロープが設置されています。


ザックを枝に引っ掛けないように。


足を根っこに引っ掛けないように。

補助ロープに全体重をかけないように、バランスをとりながら登っていくと、遠くに雪を頂いた山々がクッキリ見えてきた。
この段階でこの景色が見えるとなると、稜線上からの景色にも俄然期待が膨らむ。しかし期待感からのテンションはひとまず抑えて緊張感を維持だ。

何事もなく無事に前滝コース登り切って稜線に合流。
前滝コースへの山道にはロープが張られており、やはり下山利用が禁止されている。確かに登ってきた感じだと下山には使いたくない。

登りの途中で少々休憩。


緊張感が緩み一安心したからか、空腹を感じる。
せっかくなので瀧山山頂へ立ち寄って休憩する事にしよう。

立ち寄った瀧山山頂では期待を裏切らない景色が広がっていた。

まだ雪の残る磐梯、飯豊、朝日、月山、葉山がズラリと並び、葉山の奥には鳥海までもが鮮明に視界に入る。ちょっとどころか、かなり贅沢な景色だ。
山頂で出会ったおじさんも「鳥海まではなかなか見れないよ」と歓心している。

うーん、贅沢だ。
こんな贅沢な景色を眺めていると、休憩がてら口にしているタイムサービスで安くなった牛乳パンですら旨味が増す。

山頂にある斎藤茂吉の歌碑も見逃せない。

『山の峰かたみに低くなりゆきて 笹谷峠は其處にあるはや』

稜線を目で追って笹谷峠を探している情景を歌っているようだが、これだけ立派な山々に囲まれ、蔵王連峰最高峰の熊野岳を目の前にしても、笹谷峠を探してしまう茂吉さんは、どれだけ笹谷に心酔しているのか。
笹谷の熱狂的ファンだな。

朝日連峰。Y字雪渓もクッキリ。


市街地越しに月山。


村山葉山とその奥の鳥海山。

休憩後、瀧山を下って熊野岳へと続く稜線に合流すると、これまでのハードな山道から一転、倒木こそあるが歩きやすい山道へと変わった。

本日は好天で日射しが強く空気も暑い。
日当たりのよい山道では夏の匂いがムンムンと漂ってくる。

いつの間にこんな季節になったのか。
GW明けから籠りきりで仕事をしていたため、すっかり季節の変化に疎くなっていた。

あー、暑い。
ギンギンに冷えた飲み物を飲みたい。

自動販売機への思いを胸に歩みを進めると、中央高原駅が近くに見えてきた。
と同時に清涼飲料水コールが脳内に響き渡る。中央高原駅へ向かう歩調も自然と早まる。

自販機、あった。
文明バンザイ。

「ぷっは―!」と文明飲料を一気に飲み干し、すっかり喉も潤ったところで次のチェックポイント『ドッコ沼』へと向かう。
その前に中央高原駅前には蔵王大権現が祀られているので覗いてみる。

勇猛無双で三眼怒髪で大忿怒相の蔵王大権現。


祀られている蔵王大権現は、勇猛無双で三眼怒髪の大忿怒相。
つまりひどく怒っている顔で、これには悪霊もたまらず降伏するしかないらしい。まったくこんな男になりたいものだ。(マジか?)

さて、ここからは整備された散策路を快適に、そしてスキー場を直登しながら進むことになる。
途中にはいくつかの沼があり、その中のひとつ『ドッコ沼』は特におすすめのステキなスポットだ。

「ドッコ」って何?と思っていたが、ドッコ沼の畔に名称由来の案内板があった。
「ドッコ(独鈷)」とは密教で用いる両端がとがった短い棒状の法具で、竜が現れる沼に独鈷を投げ入れると、その後、姿を表さなくなった事が沼の名称由来となっている。

こんな由来はお構いナシで、アツアツカップルたちが集うのは、ブナとダケカンバの原生林に囲まれた清潔感のある静けさがあるからだろう。
四季を通してお勧めしたくなる、実にいい雰囲気の場所だ。

他にもいくつかの沼はあったが、いかにも『沼』っぽくて全然ステキじゃない。テンションが上がるのはマニアくらいなものだ。
※花や紅葉シーズンはきっと綺麗です。

ステキな雰囲気のドッコ沼。


三五郎小屋前はまだ春らしい。


スキー場を直登。暑いので雪の上を歩きます。

熊野岳山行もいよいよ佳境に入り、地蔵山へと続くザンゲ坂へ。
懺悔の材料には事欠かない私だ。たっぷりと懺悔しながらザンゲ坂を登る事にしよう。

ヒーヒー言いながら懺悔どころではない状態でザンゲ坂を登り終える。
「ザンゲ?後にしてくれ・・・」

また懺悔の材料が増えてしまっただけか。

蔵王ではお馴染みの蔵王地蔵尊。


ザンゲ坂を登り終えた所には蔵王山頂駅があり、ここまではロープウェイを使って快適に登ってくる事ができる。実際に蔵王山頂駅前は観光客で賑わいを見せていた。
ザックを背負い、懺悔後で疲労困憊の私はなんだか場違いな感じがしなくもない。

そんな時は清涼飲料水でリフレッシュ。
本日2本目の文明飲料を摂取して体力回復。

自動販売機バンザイ。

後は地蔵山を登り、最終目的地の熊野岳へと向かうのみだ。

地蔵山から眺める熊野岳は、張り出したワシ岩が実に勇壮に見える。
これまで気にも留めていなかった景色も今では新鮮に感じる事ができ、山形出身者として改めて蔵王を誇らしく思う。

熊野岳へ向かう途中にあるワサ小屋跡の姥神様、通称ヤマンバ様の石像もまた興味深い。

熊野神社参拝者の面倒を見ていた『おワサさん』というおばあちゃんが元となった石像らしく、首がない状態でつい最近まで石の下に埋もれていたと案内板に記されている。
そして「首なし姥神さま」の頭部を平成23年に再生したとの事。

私の勝手な先入観かもしれないが、面倒見の良さそうなおワサさんとヤマンバのイメージがまったく結びつかない。
おワサさん、参拝者に対して無茶苦茶スパルタだったのだろうか。

地蔵山山頂。蔵王山頂駅から5~10分程度。


張り出したワシ岩が勇壮な熊野岳。


頭部は後付けの姥神様、通称ヤマンバ様。

熊野岳へ向かっているつもりだったが山頂へのコースを見落としてしまい、今晩の宿泊地である熊野岳避難小屋に先に着いてしまった。
ここは軽く掃除、換気しておこう。

そして本日の行程もいよいよ大詰め。
蔵王連峰最高峰の熊野岳山頂へと向かう。

付近にはもう誰もおらず、自宅から歩き始めてようやく辿り着こうとしている熊野岳からは、何だか大きく優しい印象を受ける。
深層心理では『山』は父性の象徴と言われているようで、私としては蔵王大権現のように勇猛無双な男性像も憧れるが、熊野岳から受けた印象のように穏やかな感じの方がイイな。

熊野岳到着。

感謝の意を込めて蔵王山神社に参拝し、誰もいない熊野岳山頂で独り黄昏る。
暮れゆく景色を眺めながら何気に『花は咲く』を口ずさむ。

いかん、泣ける。
歳のせいだな。

雲が出て夕焼けこそ見れなかったが、暮れなずむ蔵王を堪能しながら、本日の行程を終える事ができた。

熊野岳避難小屋。今夜はお世話になります。


熊野岳に到着。


誰もいない熊野岳山頂で独り黄昏ています。



22時。

刈田岳駐車場まで車で来た友人Kと合流。
翌々日に籍を入れる友人Kと避難小屋で軽い祝杯をあげ、夜な夜な月下の熊野岳で写真遊びに興じる。

独身最後に中々ステキなバカ写真が撮れたじゃあないか。
オメデトウ。

シルエット記念撮影。動くな!ぶれる!


これを見よ!(※満月は昨日です)


月下の打込み稽古。

本日の写真

近所のスーパーからスタート。

色鮮やか。

西蔵王放牧場に到着。

前滝コースへ向かいます。

新緑の樹林帯歩きを満喫。

放牧場も清々しい。

放牧された牛たちに見られながら歩きます。

『垢離かけ場』。体を洗い流した場所?

分岐点。

『わらじぬぎ石』。こちらに腰掛けて脱いで下さい、と言う事か。

霊山神社。名称からして雰囲気がある。

この辺りから急登がはじまります。

右手に設置されているロープ伝いに登ります。

荷物が多いとちょっと大変。

目印がありがたい。

まだまだロープ設置個所は続きます。

木の根につまずかないように。

細尾根なので要注意。

細尾根上に立派に育ってます。

足をひっかけないように。

お隣の尾根に山桜がチラリ。

村山葉山に鳥海山。

山形市街地越しに月山。

朝日連峰。Y字雪渓もクッキリ。

まだまだ油断できない登り。

葉っぱの白骨化。

ようやく傾斜が緩んできた。

稜線に合流。前滝コースは下りで使用しないようにロープが張られています。

瀧山山頂へ。

『山の峰かたみに低くなりゆきて 笹谷峠は其處にあるはや 斎藤茂吉』

瀧山山頂。

月山、ステキ。

山頂には辛うじてサクラが。

行くぞ、熊野岳。

蔵王温泉へ下る分岐点。今回はこのまま稜線を進みます。

倒木こそあるが基本的に快適な山道。

ウサギの耳のように垂れてる。

ああ、涼しい。ちょっとクールダウン。

スキー場に合流。

スキー場も、今となっては広々とした山道。

うわー、冷えてる!自販機バンザイ!

三眼怒髪の大忿怒相、つまり物凄く怒っている蔵王大権現。

ステキな雰囲気のドッコ沼。

三五郎小屋。三五郎さんはいるだろうか。

この辺りは春っぽい。

散策路を使って散策。

イイデスネー。

うつぼ沼。これぞ『沼』って感じ。

目玉沼。

どの程度の樹齢なのだろうか。

片貝沼。

地蔵山へはスキー場を直登。

暑いのであえて雪の上を歩きます。

地蔵山頂駅前の広場に到着。

蔵王ではお馴染みの蔵王地蔵尊。このお地蔵様が元となり、後ろに見える地蔵山(地蔵岳)の山名が付きました。

地蔵山頂駅。ロープウェイを使えば汗をかく事なく来れます。

売り切れ続出だったが、冷えた清涼飲料水をゲットォ!!

地蔵山山頂へ。

地蔵山山頂。

本日の最終目的地、熊野岳。地蔵山からはワシ岩が勇壮に見えます。

植生保護のため整備された山道から外れないように。

快適木道歩き。

姥神様(ヤマンバ様)。ちなみに頭部は後付けです。

少々横になって涼んでいます。

熊野岳避難小屋。今夜はお世話になります。

使わせてもらう前にちょっと掃除。

蔵王連峰最高峰へ。

熊野岳付近はもう誰もいない。どことなく哀愁を感じる。

鳥居をくぐって狛犬の待つ熊野神社へ。

無事に到着出来た事に感謝を込めて参拝。

麓から歩き始めてようやく熊野岳に到着。

『陸奥(みちのく)を ふたわけざまに 聳(そび)えたまふ 蔵王山の雲の 中にたつ 茂吉』。ふりがながないダメだ・・・。

二口山塊方面。左が山形県、雲海で覆われているのが宮城県。

静かな気持ちになれる。

何となくありがとうございました。

地蔵山越しに山形の夜景。

月下の熊野岳神社。

シルエット記念撮影。動くな!ぶれる!

満!(※昨日が満月)

あたたたッ!月下で打込み稽古。

本日の山行情報

単独行/1日目/避難小屋泊/ハイキング/自宅から徒歩

瀧山(りゅうざん)
標高1362m
大釈山(たいしゃくさん)
標高1296m
地蔵山(じぞうさん)
標高1736m
熊野岳(くまのだけ)
標高1841m
蔵王連峰最高峰
詳細(外部リンク)

本日のスケジュール

近所のスーパー[着] 05:00 - [発] 05:00
 ↓ 130分 舗装道路
西蔵王放牧場[着] 07:10 - [発] 07:10
 ↓ 135分 前滝コース
瀧山[着] 09:25 - [発] 10:00
 ↓ 75分 
大釈山[着] 11:15 - [発] 11:15
 ↓ 25分 
中央高原駅[着] 11:40 - [発] 12:50
 ↓ 125分 舗装道路、散策路、スキー場直登
蔵王山頂駅[着] 14:55 - [発] 15:10
 ↓ 15分 
地蔵山[着] 15:25 - [発] 15:25
 ↓ 40分 
熊野岳避難小屋[着] 16:05 - [発] 16:15
 ↓ 10分 
熊野岳[着] 16:25 - [発] 16:45
 ↓ 10分 
熊野岳避難小屋[着] 16:55 - [発] 16:55

行動時間:9時間25分(休憩含む)

本日のおすすめ(お土産/温泉情報)

この山域の関連記事