気持ち良く風呂に入るために山に登る。
言い得て妙な、私の山歩き理由の一つだ。
そこで今回は『風呂』を目的として、自宅から瀧山を越えて蔵王温泉に行く事にした。
2ヶ月ほど前、新雪たっぷりで途中撤退した瀧山。
さすがにこの時期ともなれば状況は変わり、残雪があっても歩きやすいだろう。
前回同様、自宅からフル徒歩となるが、今回は時間短縮のため、西蔵王放牧場まで車道を利用する事にする。
近所のスーパーから遥か遠くに見える瀧山目指して歩きスタートだ。
「昔の人も蔵王温泉を目指して瀧山越えをしたのだろうか」と、古き山形住民たちに思いを馳せながら、車道を歩く事2時間弱。
雪解けの進んだ西蔵王放牧場に到着。
全然関係ないが、『雪』は『融ける』、『雪解け』は『解ける』と漢字で表現され、『融ける』は個体から液体に変わる意味で、『解ける』は束縛などから解放される意味となる。
つまり『雪解け』とは厳しい冬から解放され春の訪れを示唆している、何とも日本語らしいステキな言葉なのだ。
帰宅後、何気に調べて、「ほえ~」と感心したので自慢げに書いてみました。
朝日に照らされる瀧山を眺めながら小休止後、放牧場を突っ切って乳母神コースを登り始める。
残雪はあるものの、地面が露出している箇所も多く、ラッセルを強いられた2ヶ月前とは比べモノにならないくらいに歩きやすい。
積雪時は難儀した急傾斜の鉄の梯子(?)も難なく越えられる。
傾斜がきつくなった所に乳母神様がいた。
乳をボローンと放り出しているその姿から、乳母神様に間違いないだろう。(罰当たりな発言か?)
前回は雪に埋もれてまったく気が付かなかったがこんな所に居たのですね。
罰当たりな想像を戒めつつ、静かに手を合わせる。
この辺りからは残雪が多く、崩れ易いくされ雪状態が続く。
こんな状態でも残っている雪庇(?)は、今にも崩れそうで下手な所を歩く訳にはいかない。
前回撤退を余儀なくされたポイントを越え、慎重かつ淡々と登り続けると、きつかった傾斜が徐々に緩んできた。
瀧山を越えた先にある蔵王スキー場の賑わいもうっすらと聞こえてくる。
そして瀧山山頂に到着。
蔵王連峰の盟主である熊野岳がどっしりと横たわり、その下には蔵王スキー場群が広がる。
そして蔵王連峰、二口山塊などはもとより、月山や朝日連峰までも見渡せる。
山形で生まれ育った私でも、この瀧山山頂から眺める景色は実に新鮮で、これまで下から眺めていただけの山だと思うと、また違った意味の嬉しさも込み上げる。
明日からはこれまでと違った感情を持って瀧山を眺める事ができそうだ。
瀧山神社に参拝した後は、天気もいい事だし山頂で昼食タイム。
お馴染みのチリトマトヌードルをすすり、高タンパク/高カロリーの塊である干し肉を炙る。
カロリー摂取でみなぎる体力。
後は蔵王温泉へと下り、お楽しみのお風呂だ。
だが蔵王温泉へと続く下山道に踏み跡はなく、今にも崩れそうな雪庇の残る細尾根が延びているだけ。
ここは地形図チェックだ。
瀧山山頂から南側に延びる尾根は最短で下山できそうだが、何箇所か急傾斜がある。
一方、北側に延びる尾根は回り道となるが、南側に比べると一定の傾斜を保ちながら下山できそうだ。
雪の状態等も踏まえて地形図を眺めていると、南側に何箇所かある急傾斜に危険を感じずにはいられない。
ここは多少回り道となっても北側の尾根伝いに下山しよう。
どちらにしても細心の注意を払って下山を始める。
蔵王温泉とは反対側の尾根を下り、熊野岳方面へと延びる尾根に合流。
この間、「下りは良くても登れないのでは?」と思うほどのくされ雪の急傾斜だった。
ここに長居は無用。
先を急ごう。
尾根伝いに進むと夏道用の道標を発見。
ここから尾根を外れて瀧山ゲレンデへと続く夏道を進む。
夏道とはいえ残雪で踏み跡もない状態。
地形図とコンパスで位置を把握しながら、比較的なだらかで広い谷間を滑るように下ってゆく。
ある程度下ると、谷幅が狭くなり、沢の音が聞こえてきた。
踏み抜いて沢に落ちないよう、一端尾根に出る。
くされ雪で崩れないような足場を確保しつつ、スキー場から聞こえてくる音楽目指して進む。
そしてお客さんで賑わう瀧山ゲレンデに合流。
スキーヤーに轢かれないよう、ゲレンデの隅っこを歩き、今回の目的地である蔵王温泉に無事到着した。
ホッと一息ついたところで、いよいよお楽しみのお風呂だ。
数ある温泉施設の中、目指すは『源七露天の湯』。
温まる目的なら硫黄温泉大歓迎だが、汗を洗い流してサッパリしたいのに硫黄臭は何だかイヤ。
その点、『源七露天の湯』は温泉+真水のシャワー設備があるので、硫黄温泉で温まった後、シャワーで洗い流す事ができるのだ。
「じゃあ来るな!」と、硫黄ファンからお叱りを受けそうだが、サッパリしたい気持ちをご理解いただきたい。
湯の花(温泉成分が沈殿したもの)で真っ白となった排水溝。蔵王温泉らしく硫黄臭が漂います。
湯の花(温泉成分が沈殿したもの)で真っ白となった排水溝と漂う硫黄臭に、蔵王温泉らしさを感じながら温泉街を歩く。
ある程度歳を重ねてから歩く温泉街は旅情があっていいものだ。
そして、ザブンと露天に入り、「ふい~~~っ」と、盛大にオッサン臭いタメ息を漏らす。
あー、極楽極楽。(この感じもオッサン臭い)
帰りは蔵王温泉バスターミナルから1時間ごとに出ている山形駅行きのバスに乗り込み、爆睡しながら帰路に就いた。