昨晩は八方平避難小屋の扉全開、窓全開の不用心極まりない状態で熟睡。
「蚊にくわれそう」と思いつつも、暑いのでそのまま寝てしまったのだが、蚊取り線香のおかげもあって無傷で一晩過ごすことができた。
昨日までの疲労もすっかり回復。
本日もたっぷり歩けそうだ。
と、張り切って歩きだしたいところだが、天候の悪化と展望ゼロの藪歩きに嫌気がさし、予定していたスケジュールを短縮して途中下山することを昨晩のうちに決めていた。
暗いうちから出発して歩き始めると、案の定、昨日よりひどい藪歩き状態。
山道は明確だが、夜露に濡れた草木をかき分けて進めば、あっという間にびしょ濡れになってしまう。
暑くても上下のレインウェアを着ていなければ、より不快な思いをするのは目に見えている。
もう、一刻も早く藪だらけの山道を抜けたい気持ちで先を急ぐ。
雁戸山に近づくにつれ、岩場が多くなってきた。
そして、御釜からここまでの緩やかな斜面に比べると、険しさも増してきた。
細くて急な斜面を登り、南雁戸山、そして雁戸山に到着。
ようやく藪歩きからの解放だ。
ここまでアブやらブヨやらにやられて、こめかみや耳が腫れ上がって痒みも最高潮に達している。
友人Kも例外ではなく、ムチムチの赤子のように腕をパンパンに腫らしている。
曇り空でも気持ちばかりの朝日が差し込んでいる空を眺め、「熊野岳~雁戸山の区間は夏季には来るものではないな」と、しみじみと思う。
これはこれで北蔵王縦走路らしい山歩きと言えなくはないが、やはり展望がないのは精神的に過酷だ。
ただ、ここから先は『がんどさん』と厳つい山名に似合った岩場歩きを楽しめ、『蟻の門(戸)渡り』と呼ばれる細尾根も待っている。
当然、展望もバッチリだ。(天気が良ければ)
ちなみに『蟻の戸渡り』を調べてみると、『細尾根』とは異なる意味で使われる事もあるようだ。
フムフム、なるほど。
気になる方は各自調べるように。
雁戸山頂で一息ついた後は、クサリやロープを活用して急な岩稜を下っていく。
そして想像していたほど細くはなかった『蟻の門渡り』を渡って下山ルートの分岐点に到着。
ここからはひたすら樹林帯の中をトラバース気味に下山することになる。
草刈りなど山道整備もしっかりとされており、これまでの藪歩きを思えば快適過ぎるくらいに歩きやすい。
うっすらガスがかかって雰囲気のある樹林帯。実はカメラのレンズが曇っているだけ。
この2日間で初めて現れた水場では、大胆に水をガブ飲み、冷えた沢の水を頭からかぶり一気にリフレッシュだ。
「水って本当に大事だなぁ」と実感しつつ、大量にこぼしながらガブガブと飲む。
後は駐車してある刈田リフト駐車場までいかにして戻るかだ。
当初の予定では高瀬駅か面白山高原駅まで行き、「電車である程度のところまでは戻れるだろう」と、ザックリと考えていたのだが、駅もバスもない笹谷峠に下りてしまっては、いよいよ安易に考えている訳にはいかない。(※平日はバスが運行しています)
それでも「どうにかなるだろう」と気楽に構えていられるのは『地元』だからだろう。
「ちょっと御釜観光に行かないかい?」と友人、知人をたぶらかして便乗しようと、半分冗談、半分本気で話しながら下山。
そんな我々の餌食となってしまったのは友人Kのオヤジさん。
たぶらかす気はなかったとは言え(ウソつけ)、すぐに迎えに来てくれて大助かりだ。
これぞ「ビバ!地元!」。
途中、男三人で上山市の二日町共同浴場に浸かり、同じく上山市のソバ屋で板ソバをかっ喰らう。
大人150円(私が子供のころは80円)、洗髪料プラス100円と、「これぞ共同浴場だ!」と思えるステキな入浴料に、食べ応えのあるウマイ田舎ソバ。
ここにも「ビバ!地元!」と、思える要素があった。
刈田リフト駐車場に向かうと雨雲が濃くなってきた。
標高が高くなるにつれバケツをひっくり返したような大雨になり、最終的には雷鳴も轟きだす荒天に。
これには「午前中に下山しておいて良かった・・・。そして迎えに来てくれた友人Kのオヤジさん、ありがとうございますッ!」と、思わずにはいられない。
少しでも外に出るとズブ濡れになる激しい雷雨の中、駐車していた車に乗り換え、北蔵王縦走を無事に完了することができた。
この大荒れの天気を前にして思い返せば、我々の取った行動は「なんて冷静で的確な判断力なんだ!(by ゆでたまご先生)」と言えるだろう。
単に藪歩きに嫌気がさしただけか。