二荒山神社中宮祠で登拝受付(500円)をしてから登ります。
まとまったお盆休みを取れなかったので、土日を利用して日光表連山の縦走に出かけた。
男体山から、大真名子山、小真名子山、女峰山と立派な山々が連なるのが日光表連山(他にも太郎山、赤薙山があります)。面白いのはそれぞれの山の関連性だ。
二荒山神伝では男体山を父(有宇中将)として、母(朝日姫)の女峰山。夫妻に挟まれ愛子(まなこ)が由来と言われる、御愛子神の姉妹を祀る大真名子山、小真名子山。他にも長男の太郎山、伯父の白根山、伯母の赤薙山など、ファミリー伝説が面白い。
さらに神仏同体説も絡み合って、男体山、女峰山、太郎山それぞれの御祭神を大己貴命(おおなむちのみこと)、后神の田心姫命(たごりひめのみこと)、御子神の味耜高彦根命(あじすきたかひこねのみこと)としているのが一般的に知られているようで、何はともあれファミリーなのだ。
【ザ・まめ知識】
日光は、男体山の古名である二荒山(ふたらさん)を『にこう』と読み、『日光』の漢字を当てたのが由来と言われています。
以前、日光白根山から見た男体山の一家の大黒柱らしい堂々たる山容に、歩いてみたい欲求に駆られていたばかり。
調べると電車、バスを乗り継いでいけば、東京からアクセスしやすく、しかも意外と安い。(これ大事)
そんな訳で始発の電車で出発。
日光行きの電車はそこそこの混み具合。やはりハイキングや登山目的の方が多い。
お盆休みに入り、天気もそこそこ良いとなれば、男体山にも多くの人が訪れそうだ。
東武日光駅から丁度よく乗合タクシーに拾われて、中禅寺湖の畔にある二荒山神社へと向かう。(バスと同じく片道1100円)
道中、地元民であるタクシー運転手にオススメ隠れスポットや入浴施設など、地元情報をタップリ入手。そして日光と言えば何と言っても紅葉シーズン。
近年の気候変動により、色付きは年々悪くなっているようだが、それでも紅葉シーズンになると日光駅付近からいろは坂、中禅寺湖まで渋滞しっぱなしとなるらしい。タクシー運転手としては、お客さんが多くて嬉しい反面、渋滞でお客さんの回転率が上がらないのが悩みの種と言う。
それでも頑張れ、地元出身のタクシー運転手。
ちなみにそんな地元の運転手さんは男体山に登った事がない。
まあ、そんなモノだ。
中禅寺湖で降ろしてもらい、まずは二荒山神社中宮祠で登拝受付をする。(登拝料500円)
御守りを受け取り、いよいよ山歩きスタート。
男体山は起伏などなく、キツめの斜度が山頂まで延々と続く、ある意味潔い山道。いかにペースを乱さずに歩けるかがポイントとなりそうだ。
本日は男体山に登って、志津避難小屋まで下るだけ。
あせる必要は何もない。マイペースで行こう。
山道脇にある案内には「六根清浄で登るべし」と書かれている。解説によると、人間の持つ五感に第六感を加えた六根に執着することなかれ、つまり、見ず、聞かず、嗅がず、味わわず、触れず、感じずに淡々と登れという教えのようだ。
うん、無理。
間髪おかずにそう思ったりもしたが、ここは神の領域。
敬虔な気持ちで六根清浄を受け入れ、できる限り心掛ける事にしよう。
日帰りの軽装登山者が多い中、宿泊装備の荷物を背負って登る私。
その衣食住の重みを受け、一歩一歩、足の裏で男体山を感じながら自分のペースで登る。
日帰り登山者(参拝者)からすれ違い様に「大きな荷物で凄いですねー」と声をかけられ、「いやいや~」と謙遜するもちょっと得意気になる私。
それでも調子に乗らず、一歩一歩、自分のペースで登る。
歩き続けると山道から舗装道路に出た。
そして親子連れのサルが現れた。
威嚇する訳でもなく、子ザルを背中に乗せて目の前を通りすぎるそのラブリーな様子に終始写真撮影。(しかし全てピンボケ)
それにしても日光でサルに出会うと、反射的に「日光サル軍団」の文字が脳裏にチラつく。
舗装道路をしばらく歩き、四合目からは本格的な山道に突入。
自分のペースで登っていても、各合目ごとに「あー、疲れたー」と言って小休止。山専ボトルに入れてきた氷水をじっくりと味わい、眼下に広がる中禅寺湖の景色を堪能する。
ふと、思い返すと二荒山神社から六根フル稼働だな。
六根清浄、六根清浄。
六合目~九合目は岩場となり、傾斜が若干キツくなる。
汗が滴り、ペースを乱すとあっという間にバテそうな状況。
○合目の表示についてはあまり意識したくはないのだが、「次、九合目だといいな。ああ、やっぱり八合目ですか・・・」などと思ってしまう。
尾根や谷がわかりづらい地形も、山道傾斜の変化を身体で感じる事で地形図から現在地を特定。地形図チェックにより「山場は越えたかな」と一安心。
しかし、最後の九合目からは階段、ザレ場となり、すこぶる歩きづらく、本日一の辛い登りとなる。その辛さと言ったら、もう目の前に見える山頂が遥か遠く感じてしまう程だ。
最後こそ辛かったものの、自分のペースを守り続けて男体山山頂に到着した。
まずは無事な登頂に感謝して二荒山神社奥宮に参拝。
ついでに少し離れた太郎山神社にも参拝。
山頂は広々しており、丁度お昼時な事もあって、皆さん腰かけて昼食を楽しんでいる。
本来なら眺望は素晴らしく、周囲を見渡す事が出来るのだろうが、残念ながら霞んでしまっている。この時期のこの時間帯は致し方ないか。
そんな眺望にガッカリする必要もなく、男体山と言ったらコレがある。
二荒山大神御神剣。
かっちょいいー!
やはりこの大太刀を目当てとしている方が多いようで、二荒山大神御神剣周辺では次々と記念撮影会が繰り広げられている。
勿論、私もありとあらゆる角度からバチバチと撮影を満喫した。
山頂を満喫した後は岩陰で昼食。そして昼寝。
避難小屋泊の本日は、急ぐ必要など全くないのだ。
ここまでの山行記録をまったりと書いていると、すっかり時間が過ぎていた。
周囲を見渡すと、あれほど賑わっていた山頂には誰一人とおらず、トンボばかりが宙を舞っている。
いいかげん下山しよう。
志津方面の山道は土砂崩れ箇所が多い。
ロープなどが張られているとは言え、通過する時は何だか気持ち悪く、大雨の翌日などは絶対に通りたくない印象だ。
何事もなく志津避難小屋まで下山。
避難小屋には先客がおり、既に寝ているので起こさないようにそーっと荷物を置く。そして、避難小屋のすぐ裏にある洗い場(飲み水ではありません)で水をくみ、誰も見ていない事をいいことに、大自然の中で素っ裸になって汗を拭かせてもらう。
この解放的な感じが気持ちいいことこのうえない。
ただ、通りがかりのシカに見られて「ケーン!」と一鳴きされてしまう。
避難小屋の中は綺麗で、布団も常備されている。
しかし私は小屋の外にヘネシーハンモックを吊るして寝る。
これは常備されている布団が汚かったわけでも臭かったわけでもない。むしろ避難小屋としては綺麗すぎるくらい。
そんな事ではなく、個人的には綺麗な布団もハンモックの快適さには敵わないと言う事だ。
指定キャンプ地ではないためペグダウンこそしないが、木に吊るす事をお許し頂ければコレ幸い。
そんな思いを込めて、避難小屋のすぐそばにある二荒山神社志津宮で念入りに参拝してから、ヘネシーハンモックに転がり込む。
そして、風の音と時折こだまする鹿の鳴き声を聴きながら就寝。
おやすみなさい。
あ。
六根清浄、六根清浄。(遅い)