天気予報では快晴。
そしてオリオン座流星群が接近中との情報を得て、突然の思い付きで山歩きに出かける。
昼前に出発して15時頃から登り始めるという、山歩きルールに反した思い付きスケジュール。
行き先は比較的安全に登れそうで観光地的要素の強い三ッ峠。
正式なテン場はなく、ネットで調べてみると山頂付近の広場が暗黙の了解的に開放されているらしい。
当然ペグダウンなどの行為はご法度としても、基本テント泊の私にとっては有り難い情報だ。
幕営地に付く頃は日が暮れるだろうスケジュールに、暗闇山歩きの装備を整え出発した。
電車、バスを乗り継いで河口湖駅に到着。
既に15時を回っている。
少々焦り気味に観光客で賑わう河口湖畔のお土産屋を素通りして、カチカチ山ロープウェイの脇にある山道入口へと急ぐ。
テント泊装備でこの時間から登る中年男が珍しいのか、ロープウェイ乗り場の観光客からは奇異なモノでも見るかのような視線を感じてならない。
チクチクと刺さる視線を避けるため余計に早歩きになる。(小心者だから)
天気は良好だが、残念ながら富士山には雲がかかっている。
三ッ峠は『峠』ではなく、木無山、開運山、御巣鷹山の総称で、主に最高峰の開運山が『三ッ峠山』と呼ばれている。
そしてこの三ッ峠は富士山の展望地として最高と聞いている。
それなのに雲がかかって見えないとは、引き返して河口湖畔のキャンプ場で悠々と過ごすプランに変更しようかと考えてしまう。
山中ならまだしも、行楽地のキャンプ場で一人と言うのは寂し過ぎるか・・・。
そんな事をアレコレと考えながら惰性で歩き続け、カチカチ山ロープウェイ終点に到着。
『かわら投げ』『うさぎ神社』『天上の鐘』など観光要素満載なのだが、その可愛らしい施設群に居る事が無性に気恥ずかしくなり、逃げるように素通りする。
テント泊装備の私にとっては、三ッ峠方面の山道ゲートに描かれている可愛らしいタヌキとウサギのイラストですら『場違い感』を演出する要素でしかないのだ。
もう、恥ずかしさ満点だ。
ちなみに『天上の鐘』の鳴らし方はこんな具合だ。
【天上の鐘:恋愛成就編】1回目:彼氏が彼女の瞳を見ながら鐘を鳴らす。
2回目:彼女が彼氏の瞳を見ながら鐘を鳴らす。
3回目:2人で鐘を鳴らして愛を誓い合う。
もう赤面必至のオヤジ38歳。
この観光地ポイントを越えてしまえばこっちのモノ。
後は人目を気にせず歩くのみとなり一安心。(意識し過ぎ)
天上山の途中には展望地があり、何気に振り返ると雲に隠れていた富士山が顔を覗かせていた。
距離が近い事もあって富士山には迫力があり、たおやかな裾野が広大に伸びているこの景色は噂通りの好展望だ。
天上山を越え、夕暮れの柔らかい日差しが差し込む樹林帯を進むと、20人程の年配の団体ハイカーに出会った。
「お忙しいところスイマセン・・・」と呼び止められ、話を聞くとどうやら道を間違えたらしい。
目的地を聞くと、山頂からの分岐点で既に間違えている。
私の登って来た道を下山すると、危険箇所は無いにしても1時間以上かかり、ロープウェイの運行時間は過ぎているし、途中で日も暮れてしまうだろう。
しかし地図を見る限り、5分程登り返せば分岐点があり、そこからであれば40分程で舗装道路に出る事ができそうだ。
リーダーらしきおじさんにその事を伝えると「分岐点なんてなかった」と言いながら、私の来た道を下山して行ってしまった。
「大丈夫かなぁ」と思いつつ5分程登ると道標もある明確な分岐点を発見。
疲れていたようだし、数分でも登り返したくない気持ちは分からないでもないが、思い込みで見過ごしただけだったのか。
それにしてもあれだけの人数で道を間違えた事に気が付かなかったとは、集団の山歩きは別の意味で怖いと思う。
完全に日が沈み、暗闇に包まれる山道に、人の心配をしていられる状況でもなくなってきた。
ヘッドランプを装着して先を急ぐ。
獣の気配に怯えつつ、木無山に到着。
暗くて周囲の様子はよく分からないが、暗闇に富士山がぼんやりと浮かんでいるのが分かる。
頭上でチラホラと星が瞬きだした頃、幕営地となる広場に無事到着した。
広場には、情報通り既に何張りかのテントが張られており、ヘルメットがあるところを見るとクライマーのようだ。
三ッ峠は開運山南面にある屏風岩がクライミングゲレンデとして人気らしいので、明日にでも登るのだろう。
平らな場所を探し、テントを設営。重りとなる石でフライシートを張り、無事に本日の行程は終了した。
途中で会った年配の団体さんも無事だといいが。