2016年9月12日
霧ヶ峰高原:1泊2日
鷲ヶ峰:貴族気分で秋の花を愛でる。

秋深まる霧ヶ峰を歩く。


結婚記念日に霧ヶ峰の八島湿原から鷲ヶ峰に登る。

とは表向きの理由で、同行するヨメの真の目的は、山歩き後に宿泊する『鷲ヶ峰ひゅって』のフレンチディナーであることを私は知っている。

『鷲ヶ峰ひゅって』は車で行ける清潔快適な山小屋だ。

しかし標高1656mに位置し、水道設備が無いため水は極めて貴重だ。そんな環境でいただくフレンチディナーは、さぞかし贅沢だろうし美味しいだろう。加えて綺麗なお風呂もあり、ロビーには歴史を感じさせるランプ等の古道具と山関連の書籍が並ぶ。

こんなお洒落な空間では、山小屋名物とも言える山男たちの大イビキに悩まされるなどありえない(だろう)。

そんなことで、実は私もウキウキしながら霧ヶ峰へ出発だ。



場所によっては羽を広げた鷲に似ている山容だとか。


快晴ではなく、むしろひと雨降りそうな空模様の八島ビジターセンターに到着。

夕食前の軽い山行となるため、格好こそ普通だが念のため足元だけはしっかりと登山靴で固めて鷲ヶ峰へと向かう。

木道が整備された八島湿原を離れ、鷲ヶ峰への山道を登り始めて間も無く、滑りやすいザレ場となる。これは登山靴で正解だ。

極力汗をかかないようゆっくりと登り続けると、下方に八島湿原の全貌が見えてきた。

八島湿原を上空から見るとハート形に見えると言う。そのため『恋人の聖地』としてアピールしているようだが、オッサン化が著しい私の目には「はぁ?」と、実際に見てもピンとこない。ディナー目当てのヨメにいたっては、ハート形に関してコメントすらもない。

結婚16年目ではこんなもんっす。

鷲ヶ峰山頂から望む諏訪湖。


それはさておき、湿原を挟んで奥に見える車山と鷲ヶ峰の位置関係は、尾瀬の燧ヶ岳と至仏山を彷彿させ、高層湿原帯ならではの独特な雰囲気がある。山道脇には今が最盛期のアキノキリンソウやヤマトリカブトなどが見られ、金一色に染まる秋の深まりに混ざって華やかな色合いを楽しませてくれる。空を舞う色づき始めの赤トンボもこの時期ならではだ。

夏から秋へと変わりゆく景色を眺めながら鷲ヶ峰山頂、到着。

うっすらと一面を覆うガスの奥には、諏訪湖と湖畔の街並みが霞んで映っている。古い歴史を持つエリアだけに、湖面に光が射し込む様子は古来から続く営みを感じさせて実に神秘的だ。

さあて、神秘性は程々に下山して、ディナー、ディナー。

本日の宿泊地である『鷲ヶ峰ひゅって』ではフレンチディナーを楽しめるお洒落なたたずまいの山小屋だ。

私自身、フレンチなんて柄で無いのは自覚している。ただ、大きな長テーブルにセッティングされた上品なお皿やグラスを目の前にすれば、気分(だけ)はフランス貴族だ。

優雅なディナーを予感させるしつらえです。


前菜、スープ、メインと心地よい間隔で出される料理の数々を堪能する。

「洗い水や排水も不自由な『山小屋』という環境では舐めるように食さねば」

こんな、はしたない貧乏根性の言い訳をしつつ、貴族には程遠い感じで文字通り舐めるように完食。最後は、私たちの結婚記念日を知ったシェフのお気遣いにより、バラのブリザードフラワーが添えられたデザートを頂く。

「ブリザードフラワーは枯れないので『永遠の愛』と言うことで」

そんな言葉も添えられては、結婚16年目の私も赤面だ。「このおフランス貴族め!」と照れながら思ってしまう優雅な晩餐となった。

街の生活の便利さを改めて実感できるのが山小屋の良さでもあるが、『鷲ヶ峰ひゅって』では、それとは別の世界観による贅沢な時間を体験できた。

たまにはこんな貴族気分も悪くないな。

アキノキリンソウ。


ヤマトリカブト。


オヤマボクチ。





男女倉山もといゼブラ山山頂。


翌朝。

『鷲ヶ峰ひゅって』のこの上なく快適な寝床で目覚めも爽やかに起床。

朝食を頂き、悠々と朝の時間を過ごした後、ヨメの希望によりゼブラ山に登ることとなった。

元々、男女倉山(おめくらやま)と呼ばれていたゼブラ山は、車山の肩に位置する『コロボックルヒュッテ』の創設者である故・手塚宗求氏が命名したと言う。積雪すると縞の雪紋が浮かび上がることから『ゼブラ山』と呼んでいたのが一般的に定着したようだ。

『高原のエッセイスト』とも言われる手塚氏には何冊かの著書があり、縞の雪紋をシマウマ(ゼブラ)に見立てる想像力も含め、その文章の素朴さからはお茶目な人柄が伺える。

【ちなみに男女倉山の由来は・・・】
山腹に男根と女陰を思わせる岩があったことが有力説だとか。微塵のロマンも感じられない。

八島ビジターセンターから木道伝いにゼブラ山へと向かう。分岐点からの登り口は見落とし易いので要注意だ。

車山へと続くたおやかな尾根。


分岐点からカヤトと笹原を越えてゼブラ山山頂に立つと、山彦谷の北ノ耳、南ノ耳へと続くたおやかな尾根がのんびりと横たわって見える。当初はここから引き返す予定だったが、この如何にも心地よさそうな尾根を眺めていると歩行欲が湧いてくる。

歩行欲のおもむくままに歩きを続行。

雨の心配もあり、決して山歩き日和とは言えなくとも、左右に草原が拡がる山彦谷の尾根道を歩けば悠々とした気分になれる。この尾根のようにのびやかな気分だ。

結局、ショートカットすることなく車山にも登り、霧ヶ峰をぐるりと周回して八島湿原へと戻った。

秋へと変わる景色を愛で、のんびりと歩いて登り、そして貴族気分にどっぷり浸かる。今回は、そんなこれまでにない山行となった。

八島湿原1。


八島湿原2。


八島湿原3。

漫画的山行記録

私事ながら結婚記念日のため『鷲ヶ峰ひゅって』で優雅に過ごしてきます。

その前に折角なので鷲ヶ峰に登ってきます。

花々を愛でながらゆっくりと行きましょう。

終わりかけのマツムシソウ。

マツムシソウ、完全終了。

ヤマラッキョウ。

コウゾリナ。

ハクサンフウロ。

等々、花を愛でながらのんびりと登ります。

夏が過ぎ去るのはあっと言う間です。

そして秋の訪れ。

鷲ヶ峰はあのピークの向こうにあります。

今が最盛期のアキノキリンソウ。

こちらも最盛期のヤマトリカブト

ブーケっぽいヤマハハコ。

ホタルブクロがポツリ。

アザミの巣立ち。

諏訪湖が見えてきました。

鷲ヶ峰山頂が見えてまいりました。

足元に散乱する羽根。事件の香りがする・・・。

ススキ越しに八島湿原。

鷲ヶ峰に到着。

諏訪湖と湖畔の街並みが見えます。

さあて、鷲ヶ峰ひゅってのディナーを食べるため下山します。

帰り道も花々を愛でます。

カワラナデシコ。

ツリガネニンジン。

おおっ、少し晴れてきたーっ!

日の差す景色はイイね。

小ナス、じゃなくてホタルブクロ。

満開状態のオヤマボクチ。

真上からマルバハギ。

ハンゴンソウ。

無事に下山して鷲ヶ峰山行は終了。

本日の宿泊地『鷲ヶ峰ひゅって』です。

このお洒落なしつらえで頂くフレンチディナーは絶品!

すっかりフランス貴族気分となって霧ヶ峰の夜を過ごします。

翌朝。

八島湿原に出て散策してきます。

目指すはゼブラ山です。

笹原を越えて、

ゼブラ山に到着。

ハート型に見える(らしい)八島湿原。

山彦谷の尾根がのんびりと横たわっています。

奥に見える車山まで行ってみよう。

快適な尾根歩きです。

綺麗な状態のアザミ。

南ノ耳を通過。

車山が近づいてきました。

車山乗越を通過。

御柱に守られた車山神社に参拝。

奥に見えるのが鷲ヶ峰。思えば遠くへ来たものだ。

八島湿原へ戻る前に『ころぼっくるひゅって』は寄らなきゃ。

ミルクコーヒーと厚切りトーストの組み合わせは最高だッ!

御馳走様でした。

八島湿原への帰り道は滑りやすいので注意。

ベンケイソウ。

花期終了。

八島湿原に

戻って

きました。

木道脇には花期の終わったヤナギランが群生しています。

八島ビジターセンターに戻って霧ヶ峰周回は終了。

花々を愛で、のんびりと歩いて登り、そして貴族気分にどっぷり浸かる。

ゆとり山行に満足満足。

おわり

漫画的山行記録
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本日の山行情報

複数人山行/1泊2日/小屋泊/ハイキング/マイカー登山

鷲ヶ峰(わしがみね)
標高1798m
ゼブラ山/男女倉山(ぜぶらやま/おめくらやま)
標高1776m
車山(くるまやま)
標高1925m
詳細(外部リンク)

本日のスケジュール

八島ビジターセンター[着] 14:09 - [発] 14:09
 ↓ 69分 
鷲ヶ峰[着] 15:18 - [発] 15:19
 ↓ 62分 
八島ビジターセンター[着] 16:21 - [発] 09:46
 ↓ 57分 
ゼブラ山[着] 10:44 - [発] 10:52
 ↓ 102分 
車山[着] 12:35 - [発] 12:41
 ↓ 32分 
ころぼっくるひゅって[着] 13:13 - [発] 14:51
 ↓ 47分 
八島ビジターセンター[着] 15:39 - [発] 15:39

行動時間:6時間11分(休憩含む)

本日のおすすめ(お土産/温泉情報)

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