2015年10月10日
霧ヶ峰高原:日帰り
車山:古代信仰を感じる金色の高原歩き。

ススキが生い茂る霧ヶ峰高原。


捻挫のリハビリに高原歩きへ。

先週の志賀高原では散歩程度しか歩けず、『山歩き』と言うよりは『食べ歩き』に近かった。今回はもう少し歩くつもりで霧ヶ峰高原にゆく。

足首の捻挫がスッキリ治らなくてもどかしいが、焦らずに無理しないのが吉。ただでさえ厄年のため周囲から「注意して!」と心配されている身だけに、私自身は『厄』を気にしていなくても用心に越したことはない。

まったりと秋色の高原を歩くとしよう。




金色に染まる八島ヶ原湿原。


ここ数日間は秋晴れに恵まれ、本日も晴れの予報。大いに期待していた霧ヶ峰は生憎の曇り空だった。救いは霧が出ていないことか。

麓に諏訪湖を持つ霧ヶ峰はその名称通りに霧が出やすい地理条件が揃っている。数年前に訪れた際は、霧で真っ白な状況に「きぃ~りぃ~がぁ~みねぇ~」と某エアコンCMでお馴染みのメロディを口ずさむしかなかった。

その点、本日は曇り空でも視界は良好だ。

本日のルートは八島湿原駐車場から蝶々深山、車山、そして、コロボックルヒュッテでお茶の時間を設けて八島ヶ原湿原へ戻る周回コース。アップダウンも緩やかなコースなのでリハビリとしては打ってつけだろう。

連休初日のため多少の混雑を覚悟していたが、八島湿原駐車場の空きには余裕があり、良い意味で予想を裏切られた。八島ヶ原湿原に出てもさほど混雑はしていなかった。

八島ヶ原湿原の周りには木道が整備されている。周辺にはススキが生い茂り、金色に染まる湿原帯を眺めながら歩けば心穏やかになれる。静かな秋の雰囲気だからこそ心も穏やかになると言うモノ。観光客が多くても不思議な静けさがあり、皆さんも秋の景色に穏やかな気分となっているようだ。

【八島ヶ原湿原】
日本最南となる高層湿原で1万2000年の歴史があると言われています。そして、蛙鳴の名所でもあります。


現在は無人の奥霧小屋。


木道伝いに現在は使われていない奥霧小屋までやって来た。

この辺りには男女倉山への分岐点があると認識していたが見当たらない。男女倉山はゼブラ山とも呼ばれており、その奇妙な名称に惹かれて実際に行ってみたかった。しかし、分岐点が見つからないのではどうにもならず、単に気がつかず素通りしたのか、もしくは廃道にでもなったのか。

後に八島ビジターセンターの方から、冬支度のために一部の道標を撤去することがあり、男女倉山への山道はちゃんと存在すると教えてもらった。更に、東側から見る男女倉山は地質的な縞模様が表れ、それを見たコロボックルヒュッテ先代のご主人が『ゼブラ山』と呼んだのが定着したそうだ。

通過の際は「まあいいや」と蝶々深山方面へ向かったが、この情報を知った今となっては無性にゼブラを見てみたくなる。

チョウ(蝶々深山)かシマウマ(ゼブラ山)か。

そんな選択があれば、やはりシマウマだろう。
でもまたの機会に。

見晴らしの良い物見石。


『物見石』のある高台までゆるやかに登ると、みるみるうちに視界が開かれる。美ヶ原越しに木曽/飛騨山脈の山並みが見える高原ならではの開放的な眺望となった。これで青空であれば言うことナシ。

この先には山と言うよりも丘陵のような蝶々深山、そして霧ヶ峰最高峰の車山へと続く山道がくねくねと延びている。見通しは抜群だ。やはり青空であれば言うことナシ。

蝶々深山まで来ると開放的な眺望に八ヶ岳も加わる。

手前から蓼科、北横、縞枯・・・。興味がなかった頃は『山』一色単だったのに、こうも山名がするすると出てくるようになるとは不思議な気分。山名だけではなく実際に歩いた当時の記憶も甦るのだから面白いモノだ。

車山乗越を越えて車山に到着。

八ヶ岳の全貌が見渡せて赤石山脈も現れた。赤石、木曽、飛騨山脈のいわゆる『日本の屋根』が揃い踏みの眺望全開放。何度でも言ってしまうが青空であれば言うことナシだ。

4本の御柱に囲まれた車山神社に参拝後、休憩ポイントのコロボックルヒュッテへと下り、ミルクコーヒー(この名称がニクイ!)とケーキで小休止させてもらう。コロボックルヒュッテの先代は3年程前に亡くなられているが、『コロボックル』や『ゼブラ』などを名付ける感性から、きっとお茶目な方だったのだろうと勝手に想像した。

車山へと延びる山道。


御柱に守られた車山神社。


車山乗越の奥に蓼科山が見えます。

少し覗いた高原の青空。


小休止後は沢渡経由で八島ヶ原湿原へと戻る。

ここからは戻るだけかと思っていたが、途中にある静かなたたずまいのヒュッテに「ステキ!泊まってみたい!」と宿泊欲を揺さぶられる。秋に色付くこのシーズンだから尚の事ステキに映ってしまう。

中でも『ヒュッテみさやま』は別の意味でも魅力的だった。

この辺りには旧御射山(もとみさやま)遺跡がある。旧御射山遺跡は中世に狩猟神事が行われていた祭祀遺跡で、諏訪神社にまつわる神器から、更に遡り縄文時代の土器も出土されている場所でもある。

敷地内には小さいながらも独特な雰囲気が漂う旧御射山神社の石祠が祀られ、周囲の木々も決して大きくはないのだが深い歴史を感じさせる存在感があった。

霧ヶ峰一帯からは旧石器時代の遺物も多く出土されていると聞く。洒落た『ヒュッテ』のあるこの場所も、元を辿れば古代から続くの人の営みがあったのだろう。これだけ長い期間を通じて各時代の文化が残されているのだから、人にとって霧ヶ峰は特別な場所なのかもしれない。

八島ヶ原湿原へ戻ります。


ひっそりとたたずむ旧御射山神社。


八島ヶ原湿原へと戻ってきました。

こんな歴史を感じながら八島ヶ原湿原へと戻ってきた。

秋と歴史に浸った良いリハビリ山行だったな・・・って足首が痛いぞ!?
これじゃあリハビリになってねぇ。

まったく、厄年侮ることなかれ。
(そもそも安静にしておけ)




いずみ湖公園のキャンプ場でまったりしてます。


本日は霧ヶ峰から諏訪方面へ20分程下ったところにあるいずみ湖公園のキャンプ場でテント泊。綺麗に整備されたフリーサイトで無料で利用できるのが嬉しい。洒落たヒュッテ泊は年に数回あるかないかの贅沢なのだ。

本来は市営の霧ヶ峰キャンプ場を利用したかったのだが、今期の営業は既に終了しており鎖で閉ざされていた。しかし、コロボックルヒュッテ現ご主人からの情報によると、期間外でも連絡すれば使えるらしい。

「電話くれたら(管理者に)連絡しておいてあげるよ」

と、コロボックルヒュッテのご主人から気軽な感じで名刺を頂いた。

先代のお茶目さ(想像)といい、現ご主人の気さくさといい、霧ヶ峰には山の厳しさとは別の穏やかさを感じてしまう。

目指そう、こんな穏やかさ。




【おまけ:神長官守矢史料館】

茅野市にある神長官守矢史料館。


今回の霧ヶ峰散策で立ち寄った旧御射山遺跡のように、諏訪エリアには旧石器時代などの古代遺跡、遺物が数多く出土されている。そんな諏訪エリアのおすすめスポットとして、知人に教えてもらった守矢史料館に立ち寄ってみる。

この守矢史料館の展示物は実に興味深く、仏教伝来よりも諏訪神社の歴史よりも更に古い土着信仰を代々受け継いでいる守矢家に関する史料館だ。その中でも『御頭祭』は70頭余りの鹿の頭部を供えた神事で、他にも串刺しのウサギやイノシシの皮、鹿の脳なども供えられ、翌日にはそれらを全て平らげていたと言う。

現在の御頭祭は剥製の鹿を代用として諏訪大社の神事となっている。

狩猟民族としての古代信仰を感じさせるこの神事は、現代道徳に当てはめると非道に思えるが、展示されている生贄(剥製ですが)には何か神聖さを感じてしまう。

興味ある方にはおすすめの史料館です。

神への供物。


神の矛にかかったとされる耳裂鹿。


本来は70頭余りの鹿の頭部を供えるとのこと。

漫画的山行記録

霧ヶ峰高原を散策してきます。

出発地点は八島ビジターセンター。

いざ、八島ヶ原湿原へ。

八島ヶ原湿原は『恋人の聖地』らしい。

広がる八島ヶ原湿原。右下には熟年の恋人たちがいます。さすが聖地。

奥に見える車山まで行ってきます。

ドライなあじさい。

ドライな線香花火。

色々なモノがドライとなっています。

ススキ越しに八島ヶ原湿原

八島ヶ原湿原周辺は木道が整備されているため快適です。

現在無人の奥霧小屋。

湿原帯を離れて緩やかな登りが始まります。

見晴らしの良い物見石に到着。

槍・穂高連峰。

御嶽山。

こちらには八ヶ岳と赤石山脈が少しだけ見えています。

蝶々深山、車山へと山道が延びています。

蝶々深山に到着。

美ヶ原越しに後立山連峰も見えてきました。

霧ヶ峰最高峰の車山へ向かいます。

階段をえっちらおっちら。

車山山頂に到着。

ここにきて八ヶ岳と赤石山脈が姿を現します。

御柱に守られた車山神社に参拝。

こちらは車山気象レーダー観測所。

ここから休憩ポイントのコロボックルヒュッテへ下ります。

越冬できそうにないケルン。

ドライになりかけのマツムシソウ。

コロボックルヒュッテに到着です。

ミルクコーヒーでホッと一息。

たっぷりくつろいだので八島ヶ原湿原へ戻ります。

車山乗越の向こうには蓼科山が見えます。

一時見せてくれた青空。

高原を眺めながら歩けるので爽快です。

霧ヶ峰第2の高峰である鷲ヶ峰に向かってゆきます。

ススキ越しの秋色。

秋に染まる樹林帯に突入。

お洒落なヒュッテがひっそりと点在しています。

ここにも。

こちらもイイ感じ。

旧御射山(もとみさやま)遺跡にも立ち寄ってみます。

旧御射山神社の石祠。

盆栽のような存在感があります。

根元にはススキが供えてありました。

旧御射山遺跡付近からは縄文土器も出土されています。

地味ですが雰囲気があっておすすめです。

八島ヶ原湿原に入って木道歩きになりました。

金色の八島ヶ原湿原。

種は旅立ったようです。

八島ヶ原湿原の入り口に戻ってきました。

八島湿原駐車場に到着。

今晩は諏訪方面へ20分程下ったところにある『いずみ湖公園キャンプ場』でテント泊。

フリーサイトの快適空間です。

まったりと夕食の準備。

そしてまったりと食後のコーヒー。

では、おやすみなさい。

翌日。

朝から雨なので予定を変更。諏訪湖周辺に4箇所の境内地をもつ諏訪大社訪参りに行ってきます。

よく、

参ったな。

と言うことで、諏訪大社は有名なので別の所を紹介します。

諏訪大社上社本宮の近くにある北斗神社です。

どうですか、登りたくなるでしょう?

ただ、40度近い傾斜なので高所が苦手な方にはおすすめ出来ません。

次は神長官守矢史料館へ行きます。

こちらが神長官守矢史料館。

ここは古くからの土着信仰を代々受け継いでいる守矢家に関する史料館です。

中でも『御頭祭』の展示物は興味深いモノがあります。

『御頭祭』は70頭余りの鹿の頭部を供えた神事です。

こちらは神の矛にかかったとされる『耳裂鹿』。

他にも串刺しのウサギやイノシシの皮、鹿の脳などの供物が再現されています。

こちらは『御贄柱(おにえはしら)』。この柱に子供を縛り、生贄として神に捧げられたと記録されています。

ただ、祭事の最後に子供は解き放たれるそうです。

現代道徳的には残酷かもしれませんが、展示されている神への供物(生贄)は不思議と神聖な印象を受けます。

守矢史料館の外にある『みさく神境内社叢』。

境内はイガ栗だらけ。

最後に下諏訪温泉共同浴場『新湯』に浸かります。

山行(あるいは旅)の締めに温泉。

これは欠かせませんね。

おわり

漫画的山行記録
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本日の山行情報

複数人山行/日帰り/ハイキング/マイカー登山

八島ヶ原湿原(やしまがはらしつげん)
標高約1632m
詳細(外部リンク)
蝶々深山(ちょうちょうみやま)
標高1836m
車山(くるまやま)
標高1925m
詳細(外部リンク)

本日のスケジュール

八島ビジターセンター[着] 10:19 - [発] 10:19
 ↓ 63分 
物見石[着] 11:22 - [発] 11:26
 ↓ 18分 
蝶々深山[着] 11:44 - [発] 11:48
 ↓ 37分 
車山[着] 12:25 - [発] 12:29
 ↓ 34分 
コロボックルヒュッテ[着] 13:03 - [発] 14:10
 ↓ 61分 寄り道あり
旧御射山遺跡[着] 15:11 - [発] 15:23
 ↓ 22分 
八島ビジターセンター[着] 15:45 - [発] 15:45

行動時間:3時間55分(休憩含む)

本日のおすすめ(お土産/温泉情報)

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