2013年8月24日
出羽山地:1日目
鳥海山:花と緑と溶岩ドームの山歩き。

思い立ったかのようにヨメに提案され、以前から予定していた鳥海山山行を急遽実行。
ことのほか鳥海山山行を熱望していたヨメの願いを叶えるべく、自宅から500キロ離れた鳥海山へと出発した。

往復1000キロ。
もう、ちょとしたジャーニー気分。

しかし、仕事の都合上、土日利用の1泊2日予定。
せっかく遠くに行くのだから、もっとゆっくりしたい気持ちは当然あるが、ここはプチジャーニーで我慢しよう。

早朝はガスがかかりやすいからしょうがない。


大平登山口(吹浦口)から入山して鳥海山最高峰の新山へ。そして、百宅口を1時間ほど下った所にある唐獅子平避難小屋で宿泊。翌日早朝、新山まで登り返して大平登山口まで戻るスケジュール。

山中では『鳥海湖』や、『千蛇谷』『外輪』のどちらかを経由して山頂を目指せるため、単なるピストン山行ではなく、色々なルートを楽しめそうだ。

が、天気があまりよろしくない。

天気予報の『時々晴れ』に期待を込めて出発したものの、深夜に到着した大平登山口はどしゃ降り。山域では朝晩の荒天は良くある事だし、数時間後の天候回復に期待して車中泊するしかない。

目が覚めると雨は止んでいた。
その代わり、辺りはガスで真っ白。

昨晩のどしゃ降りに比べたらだいぶマシ、と思いながら準備を整えて大平登山口から鳥海山へと入山した。

朝方まで降っていた雨で小川化している山道。


朝方まで降っていた雨の影響で、整備された登山道は小川のように水が流れ落ちている。
今にもソールに穴が開きそうなくらいに履き込んでいる登山靴着用の私としては、いつ滑ってもおかしくないこの状況にハラハラだ。

そんな滑りに臆する事なく黙々と登って行くと、『時々晴れ』の予報通りに青空が広がり視界も開けてきた。
そして、登山口から1時間程の見晴台で待っていたのは、一面に緑が広がる大展望。

たおやかに広がる緑に染まった斜面と青空とのコントラストは、この世とは思えない景観。山道脇には色とりどりの花が咲き誇り、水量豊富に流れる水場で喉を潤せば、もう極楽浄土そのもの。

この開かれた空間には、ただただ溜め息が漏れるばかりだ。

花期は少々過ぎていたが、鳥海山らしいお花畑もまだ満喫できる。
事前にチェックしていた鳥海山固有種のチョウカイアザミも、ザザーっと頭から水をかぶったようにあちこちで頭を垂れていた。

広がる展望にお花畑。そして、行き届いた山道整備のおかげで疲れ知らずの山歩き。
うーん、鳥海山人気なのもうなずける。

青、白、緑のコントラストが爽やか。


ヨメ、参上。


鳥海湖越しに新山。スッキリと晴れたら最高。

鳥海湖を経由して御田ヶ原分岐で昼食。
ここから先はこれまでの山道とは変わって岩場歩きが多くなる。

七五三掛の分岐からは、谷間歩きの『千蛇谷』か、尾根歩きの『外輪』で鳥海山最高峰の新山を目指す事となる。
外輪は明日歩くことにして、本日は千蛇谷へと向かう。

ちなみに分岐点の『七五三掛』は『しめかけ』と読むらしい。
安易に『しちごさんかけ』と読んでも、恥じる事など何もない難解な読みだ。(つまり間違って読んでた)

万年雪の心字雪渓。


千蛇谷には『心字雪渓(しんじせっけい)』と呼ばれる箇所がある。字の如く『心』の字を描いた万年雪の雪渓だ。
さすがにこの時期では雪渓の崩壊が進み、『心』の字を見る事は出来なかったが、少なからず雪渓を渡る必要がある。

またしても私が履いているソールのすり減った登山靴の滑りっぷりが発揮される状況だ。

初めてスケートリンクに立つかのような用心深さで、ガチガチにしまったツルツルの雪渓を渡る。
雪渓の斜度がもう少しキツかったら渡るのは無理かと思うツルツル具合だったが、そこは腐っても東北出身者。雪面を足裏でガッチリとキャッチだ。

難なく雪渓を渡り、ガスの晴れ間に覗かせる外輪の雄大さに感嘆の声をあげながらも、淡々としたペースで山頂を目指す。

ガレ場が目立つようになった頃に鳥海山大物忌神社に到着。

千蛇谷から外輪を見上げる。


鳥海山大物忌神社で参拝。


大物忌神社奥の岩陰にひっそりと咲くチョウカイフスマ。

ここには営業小屋があり、団体登山者の宿泊受付で賑わっていた。その脇をスルリと抜けて、受付の奥にある大物忌神社で参拝。
神社のさらに奥には、ただならぬ雰囲気を漂わせる岩の祠があり、その岩陰で鳥海山固有種のチョウカイフスマがひっそりと咲いてるのが印象的だった。

参拝も済んだし新山、登ってみるか。

時間的に遅くなりそうだが、歩行欲をそそる岩峰がそびえ立っている。ガスで眺望は期待出来なくとも、私の歩行欲をタップリ満たしてくれそうだ。

ガシガシと登り始めると、これまでの山で体験した事のない『歩き』にテンションが上がる。折り重なる岩場をよじ登り、岩場の裂け目を抜けてゆく。

そして鳥海山最高峰の新山山頂にたどり着いた。
ヨメもiPad片手に無事登頂。(色んな意味で危なっかしい)

1801年の噴火で形成された溶岩ドームの新山(享保山)山頂は荒々しいまでの岩峰。次回はこの独特な雰囲気の山頂から広がる眺望を拝んでみたい。と、既にまた来る事を前提にしてしまうくらいに良い山だった。

岩場の裂け目を通過中に見上げるとこんな感じ。


少しの青空を見逃さず記念撮影。


溶岩ドームの新山は独特の雰囲気。

大物忌神社に戻ると、すっかり日も傾き始めている。
少々急ぎ足で唐獅子平避難小屋へと向かう事にしよう。

眼下に見える唐獅子平避難小屋。遠い。


外輪上にある百宅口の分岐点からは、今回の宿泊地である唐獅子平避難小屋が、なだらかそうな裾野にポツンと建っているのが見える。
目視できる範囲内とは言え、ここの山道はちょっと大変だった。

唐獅子平避難小屋までの山道はマイナールートなのか、東北の山らしい荒れ具合。草木で覆われた山道は足元が不明瞭で滑りやすく、踏み跡はあっても利用している登山者は限られている感じがする。

そんなマイナールートで東北山歩きの洗礼を受けるヨメ。
泥だらけで精神的疲労も蓄積され、歩みが遅くなってしまう。

避難小屋手前では雪渓を渡る箇所があり、今回最大のツルツルポイント。この時ばかりは愛用の登山靴を恨めしく感じてしまい、軽アイゼンの存在価値を思い知らされた。

何とか雪渓を渡って避難小屋に到着する頃には、辺りはすっかり真っ暗。それでも救いは唐獅子平避難小屋の綺麗さだ。

ギター完備の快適小屋、それが唐獅子平避難小屋だ。


マットや布団が常備され、トイレもある。
そして何故かギターもある。
(何故か官能小説も)

備品なども整理整頓されており、利用者のマナーの良さを感じさせる避難小屋の快適さにヨメのテンションも回復。

当然ながら先客などおらず、荷物広げ放題、快適な寝床を作り放題。
下手したら山頂小屋の有料宿泊より快適だったのではないだろうか。

とは言え、ヨメにとっては山頂小屋での宿泊の方がよかったか。
私の未知なる山道へのチャレンジスピリット(単なる貧乏性)に巻き込んでしまったのは反省点だな。

夕食を堪能し、すっかり回復したヨメの弾けもしないギターの音色を聴きながら就寝した。

本日の写真

大平駐車場からスタート。

大平登山口。

今朝方の雨で山道は小川のよう。

ハクサンシャジン。

待ちに待った青空。展望が開けてきた。

ヤマハハコ。

何かお山が見えてきた。

夏山だー。

ザバーっと水をかぶった様なチョウカイアザミ。

キリンソウ。

広がる大草原。

歩くのが楽しいぞ!

シロバナニガナ。

イワショウブ。

なだらかで歩きやすい。

別世界のよう。

イワイチョウ。

ヨメ、参上。

ひゃ~、極楽!

ヒナザクラ。

まだまだテンションの高いニッコウキスゲ。

この付近でも雪渓がまだ残ってます。

河原宿の分岐。

数年前に出来たばかりの木道。

ハクサンフウロ。

この先も快適歩きができそう。

ハクサンイチゲ。

御浜・鳥海湖分岐。

青、白、緑。夏山らしい。

ミヤマリンドウ。

鳥海湖。

鳥海湖越しに新山が見えてきた。

続く木道。快適そのもの。

鳥海湖の南側に位置する鍋森。

水があるって幸せ。

ザ・夏山。

ニノ滝コースには真新しい木道が延びています。

目指せ山頂。

御田ヶ原(おだがはら)分岐。

リッチな昼食タイム。

改めて新山に向けて出発。

八丁坂。そろそろ山道の雰囲気が変わってきそう。

お地蔵さんかと思ったらケルン。

ダイモンジソウ。

御苗代。いよいよ険しくなってきた。

七五三掛(しめかけ)の分岐。

千蛇谷へと一気に下降。

安心のハシゴ整備。

大玉花火並みに爆発してます。

千蛇谷『心字雪渓』の名残。

雪渓を渡ります。

ガスったり晴れたり。

上部に延びる外輪。

新山まで一気に登ろう。

爽やか過ぎるだろう、この景色。

ガシガシと登ります。

すっかりガレ場だらけ。

有料小屋のある大物忌神社に到着。知らないおじさんもバンザイ。

大物忌神社に参拝。

ちょこんとお座り。

こちらもお座り。

ちっさいお地蔵さん。

何かが漂っている雰囲気。

満面の笑みで並んでいます。

祠の岩陰にチョウカイフスマがひっそりと咲いていました。

鳥海山頂美術館。中からは焼き肉を焼く音が・・・ゴクリ。

晴れてほしい。

ガスっちゃったが新山山頂を目指します。

岩場をよじ登ります。

岩場の間を下ります。

新山、すなわち鳥海山山頂!

独特の雰囲気を持つ溶岩ドーム。

不思議な世界観の山頂だ。

岩場の間から見上げたところ。

若干、間違ったルートから来てしまったが外輪に合流。

ここから百宅口コースを下ります。

暗くなってしまう前に急げや急げ。

中央下に唐獅子平避難小屋が見えます。まだまだ遠い・・・。

霧ヶ平。

幾重にも折り重なる山々。

ギター完備の小屋、それが唐獅子平避難小屋だ。

本日の山行情報

複数人山行/1日目/避難小屋泊/8時間以上歩行/マイカー登山

鳥海山(ちょうかいさん)
標高2236m
出羽富士/秋田富士とも呼ばれています。
詳細(外部リンク)
新山(しんざん)
標高2236m
鳥海山最高峰

本日のスケジュール

大平駐車場[着] 09:05 - [発] 09:05
 ↓ 15分 舗装道路
大平登山口[着] 09:20 - [発] 09:20
 ↓ 115分 吹浦口コース
河原宿(分岐)[着] 11:15 - [発] 11:15
 ↓ 70分 鳥海湖南側経由
御田ヶ原分岐[着] 12:25 - [発] 13:15
 ↓ 25分 
七五三掛(分岐)[着] 13:40 - [発] 13:50
 ↓ 110分 千蛇谷
大物忌神社[着] 15:40 - [発] 16:05
 ↓ 15分 
新山[着] 16:20 - [発] 16:40
 ↓ 15分 
大物忌神社[着] 16:55 - [発] 16:55
 ↓ 35分 
百宅口分岐(外輪)[着] 17:30 - [発] 17:30
 ↓ 85分 百宅口コース
唐獅子平避難小屋[着] 18:55 - [発] 18:55

行動時間:8時間5分(休憩含む)

本日のおすすめ(お土産/温泉情報)

この山域の関連記事