2017年9月12日
志賀高原:1泊2日
草津白根山:ときめきの記念日山行。

逢ノ峰から見る白根山。


私事ながら本日は結婚記念日。そして、私事ながら恒例となった記念日山行だ。

滝のような汗を流しながら辿り着いたテン場で簡素な食事をし、翌日も大汗をかくような山行に出かけたいところだが、記念日にコレをやるとほぼ100%の確率で女性に嫌がられる。そんなことは分かっている。

そこで記念日山行の今回は、ヨメも喜ぶだろう場所を選定した。

目的地は草津白根山。と言うか、草津白根のシンボルである火口湖『湯釜』の北東に位置する『芳ヶ平ヒュッテ』だ。

ジャズ好きなご夫妻が営む芳ヶ平ヒュッテは女性に人気で、リピーターやファンが多いと聞いている。リンドウの咲き誇る草津白根を散策して、ジャズの流れるオシャレな宿でゆったりと美味しい料理を頂く。

うーん、我ながら文句のつけどころナシの記念日計画。



生憎な空模様の草津白根レストハウス駐車場。


昼過ぎ頃、小雨が落ちる生憎な空模様の草津白根レストハウス駐車場に到着した。

この草津白根山は温泉地として名高い草津温泉の豊富な湯量をもたらす活火山だ。2014年6月に噴火警戒レベルが上がり、半径1km内の立ち入りは制限されていたが、今年の6月7日に3年振りとなる警戒レベルの引き下げで、草津側からの入山が可能になったばかりだ。

本日はそんな草津側から入り、寄り道をせずに芳ヶ平ヒュッテを目指す。時間も時間だし、ガスって小雨も降っている状況で散策しても記念物山行としては今ひとつ盛り上がりに欠けるだろう。

では出発。

時折風に乗って運ばれる硫黄臭を感じながら山道を緩やかに下って行くと、下方の湿原帯に赤い屋根の芳ヶ平ヒュッテが見えてきた。

【硫黄情報】
硫黄は無臭です。そのため科学的な表現としては「硫黄臭い」→「硫化水素臭い」が正しいそうです。でも言葉としてはあの臭いが伝わればいいのです。

芳ヶ平ヒュッテに到着。


草津白根レストハウス駐車場から1時間程で芳ヶ平ヒュッテに到着した。本日の歩きはこれにて終了。

芳ヶ平ヒュッテの外観は一見、よく見かける普通の建物なのだが、小屋内に入ればそこは私の知る山小屋とは異なるお洒落な雰囲気が漂っていた。味わいのあるランプやヤカンなど持ち主の愛着を感じさせる実用的な品々に、この場所の住人の趣味嗜好がじんわりと伝わってくる。

そしてこの空間に欠かせない存在なのがワンコ。

熟年の落ち付きを見せる老犬ワンコ、大きな双子のワンコ、そして舐めるの大好きなワンコと、犬好きにはたまらないだろう空間となっている。どちらかと言えば猫派の私ですら、隣にお座りするワンコたちと見つめ合ってときめきを隠せない。

ちなみにこのワンコたちは救助犬とのことで、特に冬期などは大活躍しそうなたくましさだ。小柄で細身の私としては、相撲を取ったら押し出されること間違いなし。

そんな芳ヶ平ヒュッテを自宅として年間通して生活しているオーナーご夫妻がまた魅力的なのだ。

ジャズの流れるお洒落な空間。


私も少しばかり山小屋生活をかじっていることもあり、食料や燃料の確保などのご苦労を想像できるのだが、そんな苦労以上に生活スタイルを心底楽しんでいるのが伝わる快活な話ぶりは聞いているだけで爽快だ。

「無理しないのが秘訣、うふふ」

こんなことをさらりと言えるのも、単に怠ける口実ではなく、日々の努力を怠っていないからこそ言えるはず。そして、それを意識せず自然体で実践できているのが素敵ではないか。好きなことをするって本来こう言うことなのだと思う。

この感じ、私も参考にさせていただきますッ!!

こんな具合に山小屋話は盛り上がり、芳ヶ平ヒュッテの夜はふけていった。



芳ヶ平湿原で見られるリンドウの群生。


翌朝。

リンドウが見頃の芳ヶ平湿原を散歩してから丁寧に盛り付けられた朝食を頂く。そして、食後のコーヒーを飲みながら優雅な時間を過ごす。更におかわりのコーヒーを飲みながら悠々と過ごす。その後もやって来た常連のお客さんと話しながらゆったり過ごす。

ふぃ~~~っと、くつろぎ過ぎ。

この尻に根の生えたくつろぎ振りではもう一泊しかねないので、いい加減にして草津白根散策に出発する。オーナーご夫妻とワンコたちに加え、薪仕事の手伝いに集まっていた方々にも見送られて芳ヶ平ヒュッテを後にした。

本日は雲こそ多いが、青空とのメリハリある清々しい天気だ。日を浴びる笹原の緑が鮮やかで、昨日は完全に蕾状態だったリンドウもほんのりと花開いている。これから向かう『湯釜』の景観にも期待が高まる。

活火山らしい様子の草津白根。


草津白根山は、白根山、逢ノ峰、本白根山の総称だ。その昔、噴火を繰り返した活火山であるため噴火口がいくつか見られ、草津白根のシンボル的火口湖『湯釜』、本白根山の中央火口『涸釜』などが有名だ。これら有名どころを巡る草津白根散策の手始めとして、まずは湯釜へ。

湯釜は草津白根レストハウス駐車場から遊歩道伝いに行ける気軽な絶景ポイント。そのためか平日であっても観光客で賑わっていた。

遊歩道を登り始めて15分程で湯釜に到着。そこに現れた火口湖の色彩は不自然なまでに鮮やかで、まるで合成写真でも眺めているようだ。ミルキーグリーンとでも言うのか、幼少時代であれば清涼飲料水ばりに飲みたくなる色合いを放っていた。

【湯釜情報】
pH(水素イオン濃度の指数)が1.0前後ある世界でも有数の酸性度の高い火口湖。ちなみに通常時の胃酸と同等のpH値です。

独特な色彩を放つ湯釜。


さて、遊歩道を引き返して逢ノ峰へと向かう。右手に火口湖の『弓池』を眺めながら、小さな段差で整備が行き届いている木道を快適に登る。

15分程で到着。

やはりお手軽。ただ、人の数は圧倒的に少ない。それでも眺望は良く、湯釜は見えなくとも白根山の奥には横手山や特徴的な山容の笠ヶ岳が望める好展望地となっていた。快晴なら北アルプスまで見渡せそうな場所なのにこんなにお手軽に登ってこられるとは良い時代だ。

さてさて、次は本日のメインとなる本白根山の中央火口『涸釜』だ。

逢ノ峰/本白根山方面。


逢ノ峰を一旦下り、大人の財源力を活かしてコマクサリフト(片道400円)を利用。一気に標高2100mの見晴台まで進む。ビバ、文明。リフトを使わず徒歩で登っても10分程度の差なのだが、記念日山行ならではの贅沢と言える。(何て小さな贅沢だ・・・)

木道伝いに樹林帯を歩いてゆくと唐突に視界が開けた。目の前に現れたるは巨大な中央火口『涸釜』。涸釜の縁には棒人間にしか見えない小さな登山者の姿がポツリポツリと見えるばかりで、その火口の大きさが伺える。

火口湖として水の溜まっていない『涸釜』は、その名称から察するに昔は水が溜まっていたのだろうか。硫黄鉱山として栄えていた時代には採掘に支障をきたすため排水したとの記録もあるようで、事実であれば自然に対する人間の挑戦心には色々な意味で驚かされる。

雄大な火口沿いの山道を歩いていると、今期最後の咲き残りだろうコマクサが辛うじて花を付けていた。よく見ると、花期を終えたコマクサが斜面一帯に群生しており、時期を狙えば満開のコマクサを楽しめそうな場所だ。

この付近のコマクサは、薬草としての盗掘が続き一時は絶滅したが、地元民の移植/保護活動により復活したそうだ。現在は地元の中学生たちが中心となって保護活動を続けていると言う。ここにも自然に対する人間の飽く無き挑戦心があった。

中央火口となる涸釜。


今期最後の咲き残りだろうコマクサ。


中央火口の最も高き場所。

涸釜の最も高き場所に到達。

素晴らしきかな周囲に広がる大展望。火口はもとより、山も雲も空も雄大だ。そもそも、晴れたからこそ得られた景色だ。

両手にワンコでときめきました。


こうして気分爽快なままに結婚記念日山行は無事に終了した。駐車場に戻る途中、歩き飽きたヨメが無言となりハラハラしたりもしたが、芳ヶ平ヒュッテのオーナーご夫妻との語らいに始まり、活火山としての草津白根を体感できた充実の山行となった。

そして、思い起こすは芳ヶ平ヒュッテのワンコたちと見つめ合ったあの時間。

ああ、ときめいたさ。ときめいたとも。

漫画的山行記録

私事ながら結婚記念日なので記念日山行に行って参ります。

山行と言うよりは軽い散策で芳ヶ平ヒュッテの宿泊が目的です。

ガスの白根レストハウスに到着。

キチンと届け出を提出。

今年の6月に火山警戒レベルが下がったとは言え、活火山であることは忘れずに。

散策は明日にして本日は宿泊先の芳ヶ平ヒュッテへまっしぐら。

周囲は秋色に変わり始めています。

山道脇にはリンドウや、

アキノキリンソウ、

シラタマノキなどが見られます。

青空なら映えそうな景観です。

右手にはパワースポットと名高いらしい白根神社元宮が見えます。

わずかな雲間からお日様が照らします。

火山らしく荒涼とした雰囲気になってきました。

そそくさと移動、移動。

湿原帯に芳ヶ平ヒュッテの赤い屋根を確認。

芳ヶ平ヒュッテに到着しました。

「いらっしゃい」と、わんこがお出迎え。

ジャズの流れる小屋内は雰囲気バッチリです。

夕御飯まで芳ヶ平湿原を散歩。

霧雨落ちる芳ヶ平湿原。

自然の鉢植えがステキ。

丁度、リンドウが見頃でした。

奥に見えるのは快適そうなテン場。

草津温泉方面。明日は晴れるかな。

さあて、

夕食だッ!

食事の後はオーナーご夫妻と山小屋生活についてたっぷり語らいました。

翌朝。

朝食まで朝の散歩へ。

朝露でふっくらと潤う苔。

の上を歩くカモ。

今日は晴れてほしいね。

朝の散歩から帰ってきたら伸びていたセレン(わんこ)。

丁寧に盛り付けられた朝食を頂き、コーヒーを飲んで優雅に過ごします。

名残惜しいですが、芳ヶ平ヒュッテに別れを告げて草津白根散策に出発。

おっ、晴れてきたーーッ!

陽が射すと緑の色合いも鮮やかです。

陽が当たってリンドウも開花。

あの向こうが草津白根のシンボルとも言える湯釜(火口湖)になります。

心なし温かい気がする湧き水。

火山帯らしい荒涼とした景色になってきました。

白根レストハウスの駐車場まで戻ってきました。

では、湯釜を見に行ってきます。

遊歩道を15分程登れば・・・

合成かのような独特な色彩を放つ湯釜に到着!

スゲェだろ、加工してないのに火口写真なんだぜ。

それはともかく、ため息の出る色彩です。

こんな環境でもハナイカリが咲きそうです。

さて、次は逢ノ峰を越えて奥に見える本白根に向かいます。

なだらかな木道を登り、

逢ノ峰山頂に到着。

湯釜は見れませんが、横手山や笠ヶ岳が望めます。

今期最後の咲き残りだろうヤナギラン。

逢ノ峰を下るとリフトがあります。

標高差100m程ですが、歩かずに大人の財源力でそれ行けー。

汗ひとつかかずにやってきました。

木道伝いに本白根の中央火口を周回してきます。

涸釜と呼ばれる中央火口が出現。

奥には浅間山も見えて、火山ならではの圧倒的スケールを感じます。

今期最後の咲き残りだろうコマクサ。

時期を狙えばコマクサの群生が見られそうです。

中央火口を周回。

足元に咲くヤマハハコもいいですよ。

中央火口縁の最も高き場所へ向かいます。

到着。

四阿山(あずまやさん)。

浅間山。

浅間隠山。

榛名山。奥には赤城山も見えます。

はあ、晴れている山は最高だ・・。

火口湖の鏡池を通過して戻ります。

沢を渡ってしばらく歩けば、

白根火山ロープウェイの山頂駅に出ます。

逢ノ峰の東側をまく遊歩道伝いに白根レストハウスへと戻ってきました。

ああ、良かったよ、草津白根山。

これにて結婚記念日としての草津白根散策は終了。

自宅への帰り道には『草津運動茶屋公園 道の駅』の花豆ソフトを頂き、

嬬恋のキャベツ畑から浅間の絶景を眺め、

秘湯感たっぷりの鹿沢温泉『紅葉館』でスッキリして帰路に就きました。

今回は何と言っても芳ヶ平ヒュッテ。

人、場所、わんこ、全てが印象的でした。

ああ、ときめいた。ときめきましたとも。

おわり

漫画的山行記録
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本日の山行情報

複数人山行/1泊2日/小屋泊/ハイキング/マイカー登山

逢ノ峰(あいのみね)
標高2110m
本白根山(もとしらねさん)
標高2171m
詳細(外部リンク)

本日のスケジュール

草津白根レストハウス駐車場[着] 13:53 - [発] 13:53
 ↓ 77分 
芳ヶ平ヒュッテ[着] 15:10 - [発] 10:40
 ↓ 56分 
草津白根レストハウス駐車場[着] 11:37 - [発] 11:37
 ↓ 15分 
白根山(湯釜)[着] 11:52 - [発] 11:56
 ↓ 14分 
草津白根レストハウス駐車場[着] 12:11 - [発] 12:11
 ↓ 16分 
逢ノ峰[着] 12:27 - [発] 12:30
 ↓ 50分 
本白根山[着] 13:20 - [発] 13:33
 ↓ 58分 
草津白根レストハウス駐車場[着] 14:31 - [発] 14:31

行動時間:4時間48分(休憩含む)

本日のおすすめ(お土産/温泉情報)

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