2015年9月23日
後立山連峰:3日目
爺ヶ岳:お爺さん、お婆さんからのメッセージ。

昨晩の爺ヶ岳。


後立山連峰縦走も最終日。目覚めも良く食欲も旺盛。標高にも慣れてこの3日間で最高のコンディションになっている。

霜の降りたテントから顔を出すと、昨日と同様に快晴の星空が広がっている。たっぷりの紅茶とぺちゃんこに潰れたロールパンをむっしむっしと平らげ、素早くテントを撤収して出発した。

本日は爺ヶ岳を越えて扇沢へと下山するのみ。早出する必要はまったくない行程だが、せっかくの天気なので爺ヶ岳山頂から御来光を拝むとしよう。

早い時間に冷池山荘から爺ヶ岳へ登る登山者は少なく、闇夜に浮かぶ爺ヶ岳のシルエットにはヘッドランプの光がふたつ程見えるだけだ。それよりも星々の放つ光の方が遥かに強い。

爺ヶ岳の真上に見えるオリオン座めがけて歩いていると全く呼吸が乱れない。昨日歩いた五竜岳や鹿島槍ヶ岳などの険しい岩峰とは違って、たおやかな山容の爺ヶ岳では歩調が調整しやすいのだ。

爺ヶ岳中央峰に到着。


春頃になると種を蒔くお爺さんの雪形が表れることが山名由来となっている爺ヶ岳。この緩やかな山道を歩く限り、きっと穏やかな表情で種を蒔いているに違いない。

そんなことをぼんやり考えながら登っていると「グキッ!」。

足の置き場を誤り、捻ってしまった足首に「しまった!」と、すかさず体勢を立て直す。大事には至らなかったようだが、恐る恐る足首の具合をみると何だか嫌な感じは残っている。

しばらく様子を見てから歩いてみると何とか大丈夫そうだ。とは言え、転倒、骨折した登山者がヘリで搬送さる現場を昨日目撃したばかりにも関わらずこの失態。これには温厚そうな種蒔き爺さんから、「しっかりせい!」と怒られても返す言葉がない。

反省しつつ、日の出前の爺ヶ岳中央峰に到着。

鹿島槍ヶ岳を背景に爺ヶ岳南峰。


東の空には厚い雲が横たわっている。それでも日の出時刻になると僅かな雲の隙間から朝日が漏れ、御来光の歓喜はなくても静かで穏やかな朝を迎えられた。

この後は隣の爺ヶ岳南峰を越え、種池山荘を経由して扇沢へ下山する。念のため先程捻った足首をテーピングで固めてから南峰へ向かう。

爺ヶ岳のたおやかな斜面を下り、たおやかな南峰を登り返す。南峰山頂ではこれまで爺ヶ岳に隠れて見えなかった常念山脈や槍・穂高連峰がほんのり朝焼け色に染まっていた。

唐松岳、五竜岳、鹿島槍ヶ岳、そして爺ヶ岳と、今回予定していた縦走で越えるべき山は全て登った。しかし、足首の捻挫もあって達成感を味わうのはまだ早い。扇沢への下山が先決だ。

柏原新道で扇沢へ下山。


下山を開始して種池山荘を通過する頃には日が射し、山陵付近の紅葉が鮮やかさを増している。清々しい秋晴れ、と言うよりも強烈な日差しに大汗をかきそうな秋晴れだ。

種池山荘から扇沢への山道は整備されて歩きやすく、午前中は日陰で快適。これなら足首への負担も大汗をかく心配も無さそうだ。だが、油断は禁物。快適さにかまけて足元への注意を怠らないように用心深く歩く。

一部、狭い山道箇所もあったが扇沢出合登山口へと下山。扇沢駅からバスに乗って信濃大町駅へと戻り、今回の後立山連峰縦走は無事に終了した。

捻った足首を痛めることなく自力で下山できて一安心だが、油断からの捻挫は大きな反省点となった。これは種蒔き爺さんからの警告として肝に銘じておこう。

最後に信濃大町駅に隣接している売店で『おざんざ』を購入する。この付近の特産物を訪ねたところ紹介してもらった塩不使用の納豆酵素乾麺で、うどんでもそばでもない喉ごし良さそうな麺だ。良く冷えた地元の牛乳も頂き、帰り際に売り子のお婆ちゃんから声を掛けられる。

「また山きたらねー、待ってるでねー」

こんなのに物凄く弱い私。
このお婆ちゃんにときめきましたとも。

種蒔き爺さんと売り子のお婆ちゃんのメッセージを受け、改めて今回の山行を振り返ると、トラブルあり、絶景あり、達成感ありと後立山連峰を満喫できた縦走となった。しかし、後立山連峰の一部を歩いただけにすぎない。最高峰の白馬岳や難所の不帰キレット、そして日本海へと続く稜線など、まだまだ興味を引くエリアだらけだ。

うーん、早いところ捻挫を完治させなければな。




今回歩いた縦走路。左から爺ヶ岳、鹿島槍ヶ岳、五竜岳。


本日、早目に下山したのには理由がある。

私とお同じ日程で、燕岳から蝶ヶ岳までの人気ルートをテント泊単独縦走しているヨメ。燕岳登山口の中房温泉まで送った私は、下山地点の三股登山口までピックアップしにゆく役目があるのだ。

山行中にこのことを話すと、「夫婦なんだから一緒に行けばいいのに」とよく言われたが、その多くは女性で、男性、特に既婚のおじさんの場合は「・・・わかる」と言いたげな切ない表情をするのが面白い。夫婦で山中に入ると口論になりがちなのは私だけではなさそうだ。

ただ、無用の口論を避けるためだけに別行動をしている訳でもない。

単独行ではリスクを伴っても、それ以上に得られる経験は大きいと考えている。実際、無事に三股登山口へと下山して合流したヨメはドヤ顔、よく言えば自信に満ち溢れた表情をしていた。

よし。
これで次回の縦走は私が送迎される番だな。

だよな?

漫画的山行記録

後立山連峰縦走も最終日。

高度にも慣れて体調万全の本日は爺ヶ岳を越えて扇沢へ下山します。

爺ヶ岳山頂から御来光を拝むため早朝出発です。

冷池山荘の隣にあった冷池。

なだらかな山道をゆっくりと登ります。

爺ヶ岳中央峰に到着。

雲の切れ目から御来光。

朝焼けは見れませんでしたが富士山まで見える見通しの良さです。

爺ヶ岳中央峰から南峰へ。

こちらもゆったり登ります。

鹿島槍ヶ岳をバックに爺ヶ岳南峰です。

うっすら朝焼ける常念山脈と槍・穂高連峰。

山頂からの景色に何を想う。

爺ヶ岳を後にします。

立山連峰を正面に種池山荘へ向かいます。

白のみのヤマハハコ。

種池山荘に到着。

扇沢に向けて柏原新道を下山します。

秋色の山道を下ります。

鉄砲坂や、

富士見坂など、あちこちに名称が付けられているのは人気ルートの証。

秋晴れの朝は気持ちがいい。

こんな箇所もあるので要注意。

頭上と足元に注意して通過。

黄金になりかけ岬。

正面には蓮華岳の東尾根。

アザミ沢を通過。

紅葉シーズンに向けて準備中。

そうだね、としか言いようが・・・。

石畳を進みます。

見上げると秋色の斜面に種池山荘が見えます。

眼下に扇沢駅が見えてきました。

そうだね、ケルンだね。

奇抜なうねり具合。

本日は日差しがキツそうです。

扇沢出合登山口まで下山。

登山口から舗装道路を10分程歩けば扇沢駅です。

扇沢駅のバス停に到着。

バス停前にはありがたい水場があります。

バスに乗って信濃大町駅へ。(料金1360円)

帰りのバスで一緒になった健脚者の登山靴。履き込んでます。

車を停めている信濃大町駅に到着。

これにて後立山縦走の旅は無事に終了しました。

最後にこの付近特産の『おざんざ』と冷えた牛乳を頂きます。

「また山きたらねー、待ってるでねー」

帰り際に売店のおばあちゃんに声をかけられました。

ときめきましたとも。

後立山連峰よ、良い山行をありがとう。(左から爺ヶ岳、鹿島槍ヶ岳、五竜岳)

おわり

漫画的山行記録
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本日の山行情報

単独行/3日目/テント泊/縦走/電車・バス登山

爺ヶ岳(じいがたけ)
標高2670m
詳細(外部リンク)

本日のスケジュール

冷池山荘テン場[着] 03:57 - [発] 03:57
 ↓ 77分 
爺ヶ岳中峰[着] 05:14 - [発] 05:36
 ↓ 14分 
爺ヶ岳南峰[着] 05:50 - [発] 06:02
 ↓ 25分 
種池小屋[着] 06:27 - [発] 06:37
 ↓ 106分 柏原新道
扇沢出合登山口[着] 08:23 - [発] 08:27
 ↓ 14分 
扇沢駅(バス停)[着] 08:41 - [発] 08:41

行動時間:3時間56分(休憩含む)

本日のおすすめ(お土産/温泉情報)

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