2014年7月26日
木曽山脈(中央アルプス):1日目
木曽駒ヶ岳:クラシックルートで登る木曽山脈最高峰。

九合目(玉乃窪小屋)と木曽駒ヶ岳。


初!木曽山脈。

最近では中央アルプスの名称で定着しているようだが、個人的に二番煎じ的な印象を受けてしまう。
「しょせん日本のアルプスなのだろう?」と、西洋人から嘲笑されている気にもなる。
※そんな事はありません

ここは日本人として誇らしく声高に訴えたい。
『木曽山脈』である、と。

そんな木曽山脈の最高峰、木曽駒ヶ岳を歩く。

千畳敷カールなど観光地として人気のあるこのエリアに、以前から興味はあったものの如何せん自宅から遠い。
バス、ロープウェイを乗り継いで登るマネーコースのイメージが強かった事も敬遠していた理由のひとつだ。

そこで今回は、麓から山頂を目指すノーマネーコース。
これぞ、山歩き。

小屋泊?いえいえ、当然テントを背負って行きますよ。
ノーマネーですからね。

節約。
そう、節約プランで行くのだ。




まずは幸ノ川渡渉地点まで林道歩き。


木曽駒高原スキー場の駐車場で車中泊し、薄明かるくなった頃に出発。

今回利用する福島Bコースは、その昔、木曽駒ヶ岳登山のメインルートだった。
『だった』と言うのも、伊那側の駒ヶ岳ロープウェイが整備されてからは、利用者はめっきり減ってしまい、今となっては静かなクラシックルートとなっている。

不便だが、古き時代を感じさせてくれそうなこのルート。
魅力的ではないか。

そんな麓から登るモノ好きスケジュールにも関わらず、今回はヨメも同行している。
果たしてご機嫌を損ねないか少々ハラハラしながら歩き始めた。

木曽山中の新鮮な空気を深く吸収しながら、私、ヨメ、それぞれのペースで別々に登る。

夫婦の山行なのに別行動。
こんな夫婦観もあるのです。

荷物の多い私は自分のペースを守って登る。
本日は天気もよく夏日の予報だが、北側に位置するこの山道は完全に日陰となって涼しく快適だ。

3時間ほど続く急登を、呼吸を意識しながらマイペースで登っていると、不思議と心地よい感覚になってきた。
何処までも歩いて行けそうな気分になる絶好調の感覚だ。

ただ、必要以上に意識してしまうと、良い状態はいともたやすく去ってしまう。
それはもう、気まぐれな乙女の如く。

この良い状態を維持するために、一歩一歩を楽しみつつ、意識せず歩く。
頭で考えると矛盾だらけの難題だ。

四合半にある力水(水場)。


しばらくイイ感じで歩き、休憩中のヨメと合流した。
山行中の歩行に関して新しい発見をしたらしく、何やら興奮している。

「歩みが早くても遅くても、相手のペースを尊重すればいいんだ!」

これまでの山行でライバル心をあからさまに燃やしていたヨメだけに、「気付くの遅いよ」と内心思ったりもしたが、その考えには同意できる。
そもそも好きでやっている山歩きで、競いあう理由など私にはないのだ。

それぞれのペースで歩くのも良し、相手に合わせて一緒に歩くのも良し。
どちらにしても、1でも10でもなく、その中間をとって相手の事も自分の事も考える。

仏教で言うところの中道というヤツか。
合掌。
※私は坊主ではありません。

四合半にある水場『力水』で文字通り『力』を蓄え、小休止を交えながら良いペースで木曽駒ヶ岳七合目避難小屋まで登ってきた。

綺麗な木曽駒ヶ岳七合目避難小屋。


この避難小屋は新築なのか実にキレイで、日当たり良好、トイレ、太陽光パネル、風力発電完備。
下手な賃貸アパートよりも遥かに魅力的な物件となっている。
ただ、最寄り駅から徒歩5時間程かかるのは難点だ。(何の話だ)

この避難小屋のベンチで大休憩。
ここまでの登りで蓄積された疲労をリフレッシュさせて再出発した。

四合目からこの七合目避難小屋までは急登続きだったが、ここからはしばらくトラバース(平行移動)ルートを利用するので比較的ラクする事ができる。
一気に木曽駒ヶ岳へと近付けそうだ。
※麦草岳経由の稜線は破線ルートで熟達者向けです。

トラバースルートを進むと、これまでの樹林帯の景色から徐々に視界が開けてきた。
見上げれば麦草岳の岩壁がそそり立ち、正面には木曽駒ヶ岳の岩峰も目前に迫っている。

晴れ渡る青空も手伝って、岩場とハイマツのコントラストが森林限界を超えた高所の景色を演出。
木曽駒ヶ岳の頂点から延びる裾野の広がりも壮観だ。

途中には残雪箇所もあり、巨岩の陰に身を置けば、『弱』程度の心地よい風が吹く自然のクーラーでクールダウンできる。
そして、八合目の水場ではよく冷えた上質の水分を補給。
山道を彩る高山植物の種類も増えて、写真撮影スポット盛りだくさんな状況にテンションも急上昇だ。

視界が開けてテンション急上昇。


蒼い。青い。


八合目の水場でカンパーイ。

ここまで、申し分無い山行内容だ。

標高は2400mを超え、高度に弱く心肺機能に難アリの私でも、これまでの行程を呼吸を乱さず楽しめている。
だからといって油断はできない。

これから最後の登りが始まる。
私にとって、今晩の夕食を美味しく食べる事が出来るかは否かは、ここでの歩行ペースで決まると言っても過言ではない。

登りのルートを見上げると、九合目の玉乃窪山荘や木曽駒ヶ岳が意外と近くに見える。
ここで調子に乗って「楽勝」とは思わず、これ迄通り自分のペースで登り続けよう。

正面の木曽駒ヶ岳を目指して進みます。


チングルマなどの花々に励まされて登ります。


木曽駒ヶ岳までもうひと登り。

さすがに呼吸は乱れてきたが、山道脇に咲く小さな高山植物に励まされながら登る。
と言うか、立ち止まって写真撮影という名の休憩をとりながら登る。

九合目の稜線上に到達。

そこからは、これまで見えなかった木曽山脈の主稜線が出迎えてくれた。
もう、息が上がっていても感嘆の声も上がる素晴らしい景色だ。

千畳敷カールの裏側で、宝剣岳、空木岳へと続く木曽山脈主稜線を前にして、休憩がてら平らな岩場に寝転がる。
絶景を眺めながら八合目で汲んできた冷えた沢の水を飲めば、もう贅沢の極み。

ザ・ZEITAKU。
ノーマネーでも味わえる贅沢はココにある。

贅沢な時間も、テン場の心配をしているヨメに急かされて終了。
テント設営場所を確保するべく、最後の登りに取りかかる。

木曽駒ヶ岳から宝剣岳、空木岳へと延びる木曽山脈主稜線。


見守っております。


贅沢の極み。(後にひどい日焼け)

これまで登山者を数人しか見掛けていないが、ロープウェイのある伊那側は恐らく大賑わいだろう。
テント設営場所を心配しているヨメは、先行してぴゅーっと登っていってしまった。

慌てない慌てない。
一休み一休み。(いや、登れ)

一休さんの往年の名台詞を唱えながらボチボチと登り、木曽小屋までやって来た。
ここからは、まずテン場のある駒ヶ岳頂上山荘に向かい、テントを設営してから木曽駒ヶ岳に登る事にしよう。

その前に木曽小屋のご主人から、夕陽や御来光の好展望地、一株だけ咲いている白いコマクサ(シロバナコマクサ)などレア情報を入手。
何よりも、ご主人の人柄と、お互い様の精神が根付いているこの木曽小屋はすこぶる魅力的だった。

木曽駒ヶ岳にお越しの際は、是非、木曽小屋へ!
と、勧めつつ節約プランの私は駒ヶ岳頂上山荘のテン場へと向かう。

既に多くのテントが設営されている駒ヶ岳頂上山荘のテン場。


テン場には既に多くのテントが設営されていた。
ロープウェイを使えば比較的簡単に来る事ができる高所のテン場だけに人気なのだろう。

テン場利用料(900円)を支払い、手頃なスペースにササッとテントを設営。
取り合えず横になり、テント設営中に残雪で冷やしておいたキウイにかぶりつけば、否が応にもくつろぎモードに突入だ。

これもまた贅沢。

少々昼寝した後に、改めて木曽駒ヶ岳へと向かう。

ロープウェイからの登山客は多いが、山道は渋滞する程ではなかった。
事前リサーチで渋滞すると知った山道は、ロープウェイ乗り場付近だったようだ。

20分程歩いて木曽駒ヶ岳に到着。

山頂は広々しており、老若男女問わず多くの登山者で賑わっている。
時折雲が湧き上がって何も見えなくなるが、御嶽、乗鞍、飛騨山脈の山頂部分が雲に浮かび、宝剣岳へと延びる岩稜下には千畳敷カールが少しばかり覗かせている。

そして木曽側の稜線を眺めると、クラシックルートによる山頂到達の達成感が湧いてきた。
無事な登頂に感謝を込め、伊那と木曽の二つある駒ヶ岳神社に参拝して、これまで歩いてきた山陵をしみじみと見渡した。

合掌。
※私は坊主ではありません。

木曽駒ヶ岳山頂。


伊那と木曽の二つの駒ヶ岳神社に参拝。


将棋頭山へ延びる稜線。

中岳から夕陽を眺めるため、一旦テン場に戻って早めの夕食をとる事にする。

高度障害は一切なしで食欲は旺盛。
パスタ、オイルサーディン缶、パンをもりもりと平らげて夕食を満喫する。

すっかりお腹も満たされて軽く夕寝。

目を覚ますと雲が上がっており、夕焼け鑑賞には微妙な状態となっていた。
あまり期待できなそうだが、行くだけ行ってみよう。

線香花火のような儚い日没。


中岳山頂に到着。
更に雲は上がってしまい何も見えない。

それでも、日の入り時刻まで山頂に留まっていると、ガス越しにおぼろげな夕陽が浮かび上がってきた。

雲が流れて一時的に夕焼けも見れたが、日没の瞬間は実に儚いモノだった。
ガス越しに映るおぼろげな夕陽の輪郭が小さくなってゆく様は、まるで終わりかけの線香花火のようで、早くも夏の終わりを感じさせるうら寂しさがある。

いやいや、夏山シーズンはこれから。
明日も楽しませて頂きますよ。

節約プランですが。

漫画的山行記録

木曽山脈の最高峰、木曽駒ヶ岳を歩く。

駒ヶ岳ロープウェイを利用せず、クラシックルート(福島Bコース)から登ります。

木曽高原スキー場駐車場。トイレは使用不可でした。

ここに駐車しましたが、こちらは茶臼ルートです。

登山届を提出。(※ここは茶臼ルートの登山者ポストです)

木曽駒ヶ岳の登山道、登山者ポストはこちら。

まずは林道を進みます。

ホタルブクロ。

幸ノ川を飛び石伝いに渡渉します。

本格的な登り、スタートです。

見上げると石舞台。

足を滑らせないように。

水場の『力水』。長い登りに備えて飲んでおきましょう。

水源は細いながらも美味しく頂きました。

おっ、穂高連峰かな?

登りは続きます。

五合目。

日向が似合わないギンリョウソウ。

六合目。順調です。

一休み。まだまだ登ります。

岩場の見晴台あり。

御岳、乗鞍方面が広がっています。

可愛い色のイワカガミ。

七合目避難小屋に到着。

中はキレイ!住める!

一発鳴らしておこう。

ここからはトラバースルートで行きます。

木曽駒ヶ岳が見えてきた。

若いヤナギラン?

よく見かけるカラマツソウ。

夏色になってきました。

2444m地点にケルンがポツリ。

マーカー通りに進みます。

まだ残雪アリです。

絶景満喫中。(後にひどい日焼け)

残雪でクールダウン中。

蒼い、青い。

山姥岩。何やら伝説が残っていそう。

自然のクーラー。風力は『弱』。

キバナシャクナゲ。

足場が狭くなるので注意。

足を滑らせないように。

わかりやすく八合目に到着。

八合目の水場、サイコー!

ツマトリソウ。

正面に見える木曽駒ヶ岳目指して進みます。

花期は過ぎたようなショウジョウバカマ。

ツガザクラ。

何か夏らしい花。

最後の登りが始まります。

二輪並んでコイワカガミ。

チングルマ。

九合目を目指して登ります。

シナノキンバイ。

アオノツガザクラ。

ミネズオウ。

お花畑を眺めながら登ります。

ゆったりと延びる裾野。夏です。

九合目の玉乃窪小屋は目前。

九合目に到着。

稜線に出ると木曽山脈の主稜線が出迎えてくれます。

中岳、宝剣岳、そして空木岳へと続く岩稜。

立派な心明霊神像。

岩場でゴロリ休憩。

心明霊神の横顔を眺めて最後の登りへ。

木曽駒ヶ岳固有種のヒメウスユキソウ。

木曽小屋までもう少し。

頂上木曽小屋。

この辺りはコマクサがよく見られます。そして一株だけシロバナコマクサがあるらしい。

木曽駒ヶ岳山頂は後ほど登ります。

まずは頂上山荘のテン場に向かいます。

毛ありなのでチシマギキョウ。

テン場に到着。

テント設営中に残雪で冷やしておいたフルーツたち。

冷えたキウイでカンパーイ。

テント内でゴロリ休憩。

頂上山荘のトイレは綺麗で快適です。

では木曽駒ヶ岳山頂に行ってきます。

山頂はもうすぐ。

雲が流れた隙に撮影だ。

木曽駒ヶ岳山頂に到着です。

伊那駒ヶ岳神社に参拝。

木曽駒ヶ岳神社に参拝。

無事な登頂に感謝。

将棋頭山へ延びる稜線。

雲がわき上がってきた。

麦草岳へ延びる稜線。

イワツメクサはあちこちに咲いています。

さて、テン場に戻って早目の夕食だ。

テン場のある頂上山荘に戻ってきました。

ヨメ用に購入。

今晩の獲物たち。

高度障害ナシなのでメシがウマイ!

夕陽を眺めるため中岳へ。

仙丈ヶ岳が見えます。

中岳山頂です。

辛うじて千畳敷カールが見えました。

ガスの中、夕陽のシャッターチャンスを狙うイイ感じのお二人。

おっ、きた!カシャーン、カシャーン。

雲が流れて夕陽が差し込みます。

御嶽山へと日が沈みます。

沈みゆく太陽。

落日の瞬間はガス越しになりました。線香花火の儚さよ・・・。

暮れました。

明日は御来光が見れるといいな。

おわり

漫画的山行記録
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本日の山行情報

複数人山行/1日目/テント泊/ハイキング/マイカー登山

木曽駒ヶ岳(きそこまがたけ)
標高2956m
詳細(外部リンク)
中岳(なかだけ)
標高2925m

本日のスケジュール

駐車スペース(木曽駒高原スキー場)[着] 05:25 - [発] 05:25
 ↓ 45分 
四合目林道終点(幸ノ川渡渉地点)[着] 06:10 - [発] 06:15
 ↓ 85分 
五合目[着] 07:40 - [発] 07:55
 ↓ 25分 
六合目[着] 08:20 - [発] 08:40
 ↓ 35分 
七合目避難小屋[着] 09:15 - [発] 10:00
 ↓ 60分 
八合目(水場)[着] 11:00 - [発] 11:20
 ↓ 70分 
九合目(玉乃窪小屋)[着] 12:30 - [発] 12:40
 ↓ 35分 
木曽小屋[着] 13:15 - [発] 13:35
 ↓ 15分 
頂上山荘(テン場)[着] 13:50 - [発] 15:50
 ↓ 15分 
木曽駒ヶ岳[着] 16:05 - [発] 16:25
 ↓ 10分 
頂上山荘(テン場)[着] 16:35 - [発] 18:20
 ↓ 10分 
中岳[着] 18:30 - [発] 19:00
 ↓ 10分 
頂上山荘(テン場)[着] 19:10 - [発] 19:10

行動時間:6時間55分(休憩含む)

本日のおすすめ(お土産/温泉情報)

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