2014年7月27日
木曽山脈(中央アルプス):2日目
宝剣岳:ガス景色でもポジティブに。

トイレにすら行けない白世界。
3時に目を覚まし、テントを出た感想だ。

ガスで真っ白な中、トイレに行こうとテントを離れるとあっという間に方向感覚がなくなる。
数メートルしか離れていないのに自分のテントの位置がわからなくなる状態だった。

新月直前の暗闇で星空観察を楽しみにしていたのに、黒ではなく白の世界になるとは。
この分だと御来光を見るのも無理そうだ。

結局、トイレには行けず、日の出時刻まで我慢して再度就寝。

4時に起床。
外は相変わらずな様子。

他登山者から「昨日は最高の御来光を拝めた」と聞いていた事もあって期待値を上げていたが、どうやら見る事を許されなかったようだ。
山ではこれが通常と思って再就寝。

ガスで真っ白だが宝剣岳へ。


6時起床。
外はもう明るくなっている。
日の出前より視界は利くようになったが、ガスで真っ白な事に変わりはない。

景色は諦めて、さっさと下山しようか。
いや、せめて宝剣岳の岩場を体験してみたい。

景観ゼロでも歩き好きの私の血が騒ぐ。
己の興味に従い、ヨメをテントに残して、独り宝剣岳へと向かった。

ガスで視界は悪く、風もそこそこ吹いている。
「この状況では誰も宝剣岳へ行くまい」との予想に反して、宝剣岳から下山してくる一組の夫婦がいた。

「行ってきたよー、山頂。何も見えなかったけどね。ワハハハッ!」(関西弁で)
この状況でも楽しそうな旦那さんだ。

この人も私と同様に、己の興味に従うタイプだな。
ただ、奥さんの方は苦笑いで、しょうがなく付き合っている感が一目瞭然。

夫唱婦随とでも言うのだろうか。
まあ、これも夫婦観のひとつだ。

宝剣岳山頂を目指して誰もいない岩場を登る。
クサリも整備されており、時折吹き付ける風に気を付ければ問題なさそうだ。

無事に宝剣岳山頂へ到着。

クサリも整備されています。


下から吹き上げる強風に注意。


宝剣岳山頂。真っ白です。

剛腕の手力雄命(たぢからおのみこと)を祀る祠。


周囲はガスに包まれ、何も見えない岩場の頂きには、小さな祠が祀ってあった。
扉(?)は閉ざされており、一見丸太に屋根をつけたような無骨な格好になっている。

この祠には高天原(神の住む場所)随一の剛腕である手力雄命(たぢからおのみこと)が祀られている。
この手力雄命は、太陽神である天照大神が訳あって引き篭ってしまい世界が真っ暗になる『岩戸隠れ』のエピソードで、岩戸を投げ飛ばした剛腕の持ち主だ。

その投げ飛ばした岩戸は信濃国戸隠山まで飛んでいったと言う。
天岩戸の場所が天岩戸神社のある宮崎県だとすると・・・つくづく剛腕だ。

剛腕エピソードに浸ったところで引き返そう。

天気さえ良ければ極楽平へ下り、千畳敷カールを散策したいところだが、この視界ではどうにもならない。
ヨメを待たせているし、おとなしく来た道を戻る事にする。

ココには晴天の時に改めて訪れたい。
そんな想いを胸に、急ぎ足でテン場へと戻った。

テン場へと戻り、段取りよくテントを撤収。
下山の途に就く。

実は下山途中に探したいモノがある。
通常の赤いコマクサに混ざって稀に見られる『シロバナコマクサ』だ。

昨日、木曽小屋のご主人からシロバナコマクサの情報を得ていたのだが、見つける事ができなかった。
もう見頃は過ぎて花弁が黄色身がかっているとの事だったので、既に花は落ちてしまったのか。

キョロキョロしながら歩いていると、雨風にも負けずたくましく根付いているシロバナコマクサを発見した。

確かに見頃は過ぎているようで黄色身掛かっているが、白っぽい花弁は健在。
他のコマクサ同様に群生せず、一株ごとに距離を置いて気高く生息している姿は『高山植物の女王』の異名に相応しい。

シロバナコマクサ。
お会いできて光栄です。

雨風に負けずたくましく咲いています。


何とか発見したシロバナコマクサ。


見頃は過ぎているようですがお会いできて光栄です。

これで気持ちよく下山できそうだ。

相変わらずガス景色のまま七合目避難小屋まで下ってきた。
天候回復の兆しを見られず、大粒の雨も落ちてきた。

下山したら天候回復。
こんな事になるとガッカリ感は半端ない。

登ったからには景色を見たい『欲』を捨てきれない私。
いっその事、一日中悪天候で山頂に滞在しても景色は見れなかった状況になった方が諦めもつくというモノ。

そう言った意味でこの雨は、私にとってちょっとした救いとなった。
我ながらセコい思考だが。

雨降る樹林帯を快調に下る。
下山になると途端にテンションが下がり、不機嫌全開になるヨメも快調な様子だ。

七合目からの山道は、地面がフカフカで膝への負担を軽減してくれる。
あまり利用されなくなった山道のため、地面が踏み固められていないのだろうか。

何にしても順調に下山する事が出来てありがたい。

図鑑に載ってそうな写真映りだ。


今朝、咲きたてのクルマユリ。


黄色の花は元気が出る。

無事、駐車スペースへと下山。
荷物と登山靴から解放され、下山後のお楽しみである温泉に直行だ。

少し下った所にある駐車場で、昨日山頂付近で出会ったテント泊装備のおじさんと再会した。
この方、名古屋からバイクでやって来た格好良いおじさんだ。

帰り際に軽く挨拶。

私:「今朝は(天気が悪くて)残念でしたね」
おじさん:「いやぁ、幻想的で良かったですよ」

何、この素敵なポジティブ発言。

この感覚をサラっと言えるなんて、このおじさんはきっとデカイ人だ。
是非、見習いたい私。

下山したら晴れました。まあ、よくある事。


おじさんに別れを告げ、麓にある温泉『駒の湯』でサッパリと汗を流す。
そして、道の駅『木曽福島』でソフトクリームを頂きます。

ソフトクリームをペロペロと舐めながら、満悦気分で木曽山脈を見上げると、空は晴れ渡り山頂が明確に見えている。
先程までのガスは何処へいったのやら。

ふん、幻想的な方がいいんだよ。
(非ポジティブ発言)




【伊那の町散策】
帰りに伊那市の町を少々散策。

『会長』(猫)がうろつく産直市場『グリーンファーム』。


ヨメの案内で、食料品店とリサイクル店が一緒になった斬新なお店、産直市場『グリーンファーム』へ。

その斬新な店舗スタイルも面白いが、品揃えも面白い。
地場野菜の品揃えは勿論の事、蜂の子やマムシの干物等、他では見られない食材が所狭しと並ぶ。
そして、野菜の陳列棚にリサイクル店の商品も混ざって並んでいる。

ピーマン、キュウリ、木彫りのクマ、木彫りのクマ(別ポーズ)、ナス・・・。

こんなカオスな陳列は初めてだ。
極めつけは『会長』(猫)が店内を徘徊している事か。

食品を扱う店内に『会長』(猫)が自由にうろつくとは無法地帯も甚だしい。
個人的にこのお店、大好きです。

菓子処『いなか』。


車で移動中、店の雰囲気に惹かれて菓子処『いなか』に寄り道。

信州名物『おやき』があり、定番の野沢菜と米ナスを購入。
べらぼうにウマイ!

正直、サービスエリアなどで売っている『おやき』を美味しいと思った事は無かったのだが、現地で食べる『おやき』はひと味違う。
もともと各家庭で作られるモノで、具材や形状に決まりは無く、先人の味付けが受け継がれるらしい。

菓子処『いなか』で販売している先人(多分おばあちゃん)仕込みの『おやき』、大好きです。

フランス家庭料理の店『ラ・ブリック』。


最後にヨメのお勧めでフランス家庭料理の店『ラ・ブリック』へ。

短パン、Tシャツ、サンダル姿の私。
フレンチだなんて追い出されないか?と心配したが、カジュアルな雰囲気で一安心。

若いご夫婦が経営しており、男前な旦那さんがコック。
フレンチを語れる程の舌を持っていないので、料理についてよく理解できていないがウマイ!
少々品が無いとわかっていても、残ったソースをパンで拭って舐めるように完食です。

料理からも何気無い話し振りからも、食に対して勉強熱心で、楽しんで料理を提供しているのが伝わってくる。
そんなフランス家庭料理の店『ラ・ブリック』、大好きです。

夏にぴったりの爽やかさ。具材も豊富。


山帰りにはおススメの食べ応え。地場野菜も絶妙。


夏らしい桃のデザート。プルーンとの組み合わせが決め手。

さて、伊那を満喫したところで、遥か遠くの自宅まで帰るとするか・・・。

漫画的山行記録

6時起床。
外はガスでガスで真っ白。

それでも下山前に宝剣岳の岩場を体験しに行きます。

真っ白ですが進むべき方角へ進みます。

中岳から宝剣岳へ。

視界が悪いのでロープから外れないように。

ガシガシ登ります。

クサリ場のトラバース。吹き上げる風に注意。

何も見えない宝剣岳山頂に到着しました。

手力雄尊(手力男命)の祠。

宝剣岳の岩場をそれなりに楽しんだのでテン場まで戻ります。

うっすらと宝剣山荘。

うっすらと天狗荘。

早歩きでテン場に戻ってきました。
そそくさとテントを撤収して帰路に就きます。

何も見えず残念ですが下山します。

山道脇には雨風にも負けず、たくましく生きています。

高山植物の女王『コマクサ』です。

ややっ、シロバナコマクサを発見。

花期は過ぎていますがお会いできて光栄です。

ずぶ濡れのキバナシャクナゲ。

こちらは雨好きそうなタカネツメクサ。

しっとりとしたヒメウスユキソウ。

チングルマ。種子散布の準備中。

心明霊神像。どんな天気でもここにいます。

昨日見た絶景はもう見えません。

コガラ登山口へと下山します。

下は晴れてるかなぁ。

標高、ドン。

図鑑に載ってそうな写真映りだ。

緑バックで映えるわぁ。

昨日は咲いていなかったクルマユリ。

シナノオトギリ。

クロトウヒレンの蕾。花期に見るのは難しいそうです。

八合目の水場で小休止。

慎重に下りましょう。

ハシゴの一部となっても生きています。

タカネザクラ。この時期に桜を見られるなんて。

岩場下をトラバース。

七合目避難小屋でフルーツ休憩。

避難小屋内の手書き地図。

雨の中、下山を続けます。

ギンリョウソウが井戸端会議中。

力水、頂いておきましょう。

幸ノ川渡渉地点まで下山しました。

無事な下山にはしゃぐヨメ。

雨上がりのヤマオダマキ 。

ナス。(違)

チョウ。間違いない。

色鮮やかなアザミ。

無事に下山しました。

駐車スペースへと帰還。

お疲れさまでした。

帰りは『駒の湯』でひとっ風呂浴びます。

道の駅『木曽福島』から木曽駒ヶ岳を見上げると晴天。先程までの雨雲は何処へ消えた?

帰り道に伊那を散策。

食料品店とリサイクル店が一緒になった斬新なお店『グリーンファーム』へ行きます。

『会長』(猫)がうろつく『グリーンファーム』。無法地帯です。

蜂の子も食べられます。今や地元の人もあまり食べないとか。

車で移動中、店の雰囲気に惹かれて菓子処『いなか』に寄り道。おやきを食べます。

最後にヨメのお勧めでフランス家庭料理の店『ラ・ブリック』へ。

夏にぴったりの爽やかさ。具材も豊富。

おいしいスープ。(説明になっていない)

山帰りにはおススメの食べ応え。地場野菜も絶妙。

夏らしい桃のデザート。プルーンとの組み合わせが決め手。

本日は山中からの景色は楽しめませんでしたが、満足の木曽駒ヶ岳山行となりました。

おわり

漫画的山行記録
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本日の山行情報

複数人山行/2日目/テント泊/ハイキング/マイカー登山

中岳(なかだけ)
標高2925m
宝剣岳(ほうけんだけ)
標高2931m
詳細(外部リンク)

本日のスケジュール

頂上山荘(テン場)[着] 06:25 - [発] 06:25
 ↓ 25分 空身で急ぎ足
宝剣岳[着] 06:50 - [発] 06:50
 ↓ 25分 空身で急ぎ足
頂上山荘(テン場)[着] 07:15 - [発] 08:00
 ↓ 105分 
八合目(水場)[着] 09:45 - [発] 09:50
 ↓ 50分 
七合目避難小屋[着] 10:40 - [発] 11:20
 ↓ 100分 
四合目林道終点(幸ノ川渡渉地点)[着] 13:00 - [発] 13:05
 ↓ 25分 
駐車スペース(木曽駒高原スキー場)[着] 13:30 - [発] 13:30

行動時間:5時間30分(休憩含む)

本日のおすすめ(お土産/温泉情報)

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