現在、諸事情あって山形在住。
つまり東北山歩きのチャンスだ。
やるべき事を土日に片付け、友人Kに連れられて飯豊連峰の展望地として大人気の倉手山に出かけた。
暗いうちに飯豊梅花皮荘に到着。
ここから先は冬季のため閉鎖されており、道路には10cmばかりの雪が積もっていた。
倉手山は標高1000m弱の低山のため、積雪があっても気持ち程度だろうと思っていたが、私の勝手な想像に反して中々の積雪具合だ。
「泥だらけの山道だったら嫌だなぁ」と心配していただけに、新雪の雪山歩きができそうな状況に期待が膨らむ。
友人Kは何度か倉手山に来ている事もあって、慣れない雪山歩きでも安心して楽しめそうだ。
駐車場に車を停め、舗装道路に積もった新雪を「モキュッモキュッ」と踏みしめながらゲートから登山口まで歩く。
ヘッドランプの光に照らされた雪面がキラキラと反射して、一発殴られたかのように目の前に星が飛ぶ。
最初のうちこそ「キレイだぁ」と感心していたものの、ずっと見ている内に目がチカチカとうっとうしくなり、本当に殴られたかのようにクラクラしてくる。
一端ヘッドランプを消し、月明りを頼りに歩くこと30分で登山口に到着した。
当然山道にも積雪があり、新雪、早朝のためにサラサラしている。
そしてまだ誰も踏み入れていないようで、トレースが無くまっさらな状態だ。
一番乗りとばかりに最初から急登となる山道を登り始める。
登り始めは15~20cm程の積雪があり、先行の友人Kのトレースを辿って黙々と登る。
凍えていた手先に血が通い始めて、空気の冷たさが心地よくなってきた。
急登がひと段落したところで、小休止、先頭を交代だ。
トレースがまったく無い状態でも山道は明確で、ウサギやらカモシカやら獣の足跡が山頂に向かって続いている。これは丁度良い道しるべだ。
この獣の足跡を辿りつつ、大汗をかかない程度にマイペース歩きを心がける。
西側斜面から登っているため、まだお天道様を拝めていないが、後方にそびえる朳差岳や朝日連峰には既に朝日が差し込み、爽やかそうな朝を迎えている。
上空は雲ひとつない晴天で無風。こんな状況でスカッとお天道様が拝めたら、もう気持ち良くない訳がない。
そしてピークを越えてお天道様とご対面。
倉手山山頂へと続く松の並ぶ稜線をお天道様が照らす。
そして飯豊山へと延びるダイグラ尾根も照らされて、稜線がクッキリと浮かび上がっている。
待ちに待ったお天道様の効果は絶大。
いい大人でも「ヤッホー」と言っても許される状況だ。
お天道様効果で上がったテンションそのままに、山頂目指して稜線を進む。
しかしちょっと陰になると積雪量がグッと増え、膝下位まで足が埋まるほどに雪深くなる。
スノーシューやワカンは無く、いわゆる『ツボ足』での山歩き。天気も安定しているしラッセル初体験にはもってこいだ。
『ラッセル』とは深い雪を掻き分けながら進む冬山特有の歩行技術で、夏山のコースタイムは全く当てはまらず、場合によっては同じ距離でも無積雪時の2~3倍もの時間を要する事もあると言う。
当然、体力も相当使うらしい。
こんな知識を本や雑誌から得てはいるが、実際に経験してみるのが一番。
早速、ワッセワッセとツボ足で進む。
急な登りになると勾配の関係もあり、腰位まで雪に埋もれてしまい、新雪のためか足場を作ってもすぐ崩れ、ジタバタともがきながら登る。
足で踏みつけられないほどの積雪量になると、膝で圧雪したり手で雪を掻き分けながら道を切り開く。
なるほど・・・これはキツイ。
あまり大汗をかきたくない事もあってスローペースを心がけていたものの、もう無我夢中、と言うよりはいつの間にか意地になって突き進んでいた。
そして山頂目前でラストスパート。
最後の踏ん張りで山頂に到達すると、これまで山陰に隠れて見えなかった飯豊連峰の大パノラマが視界に飛び込んできた。
「おお、キレイ!」と言う前に、「どうだコノヤロー!」と飯豊連峰に向かって咆哮。
パタリと雪の中に倒れ込む。
後続の友人Kが、「どうだい」とニヤニヤしながらやってきた。
どうやら後ろから私のラッセル振りを見て、「もう先頭交代か」と思っていたようだが、この山頂からの景色を真っ先に見てもらうため黙っていたらしい。
ふっ、ニクイ演出しやがって。
雪を踏みしめて整地し、改めて横になってくつろぎモードに。
雲ひとつない晴天でしかも無風だなんて、この時期の山頂としては奇跡的と言える状況だろう。(日焼け止めは必須!)
飯豊連峰の稜線上に積もった純白の雪は、丁度良い具合に角の立った生クリームのようで腹の虫を刺激する。
昼食を摂り、ポカポカ陽気の中で昼寝。もう至福の一時だ。
昼寝効果もあって、すっかり体力も回復したところで記念のオリジナル雪ダルマをこしらえて山頂道標上に安置。
中々の出来栄えに満足して下山の途に就く。
下山はラクラクだ。
雪に隠れている岩で尻を強打しないように注意しながらも、やはり登りのラッセルに比べると快適そのもので、夏道よりもスピーディーに下山する事ができる。
更に積雪が進んで藪が雪に埋もれると、また別の下山方法を楽しめるらしい。
まさに雪山ならではの楽しみ方なのだろう。
程良い疲労感を持って無事に下山。
初ラッセルで疲労困憊になるかと心配していたが、心地よい程度の疲労で、雪山初級編としてはもってこいの山歩きとなった。
小国町『峠の茶屋』の『から揚げセット』。このボリュームで650円!
下山後は飯豊梅花皮荘の別館川入荘の露天風呂で汗を流したかったが、雪囲いのため既に閉鎖。
そのかわりと言う訳ではないが、帰り道にある小国町の『峠の茶屋』で名物『から揚げセット』をかっ喰らう。
半端ない大きさの唐揚げが5個も付いて、ごはん、漬物、そして何故かミニうどんのセット。この内容で650円!
飯豊の山歩き帰りでハラペコなら是非『峠の茶屋』へ。
※食べきれない唐揚げは持ち帰れます。