2015年8月16日
奥羽山脈北部:日帰り
岩手山:お鉢を2巡して青空を得る。

行くぞ、岩手山。


昨日の早池峰山に引き続き、岩手県の山歩き。
本日は岩手山を歩く。

岩手山は活火山だ。近年の火山活動の動向もあり、活火山に足を踏み入れる際は、対象エリアの火山性微振動の確認、噴火の記録などを調べた上で、家族への説明も忘れてはならない。

わざわざ活火山を選ばなくても・・・と言われても仕方ないのだが、盛岡市から見えるシンボリックな岩手山の姿には何か惹き付けられる魅力がある。

準備も情報も万全に歩かせてもらいます。

【岩手山由来】
山頂付近の雪解けの形が鷲に見える事から『巌鷲山(がんじゅさん)』とも呼ばれ、『岩手』の音読み『がんしゅ』に近い事が由来とされています。
※山名由来は諸説あります。




へなちょこなりの荷上げ魂で行きます。


前日のうちに馬返し登山口へと移動して、登山口手前にある『馬返しキャンプ場』でテント泊。この駐車場完備のキャンプ場は、何と無料で利用できるお得なスポットだ。(でも利用者が誰もいないという現実・・・)

前日の夜はペルセウス座流星群を楽しめる満点の星空で、朝起きると霧に包まれていた。これは晴れそうな予感がする。テントを車の中へ放り込み、岩手山へ出発だ。

馬返しキャンプ場を抜けて登山口へ向かうと、薪が並べられている小屋があり『薪の荷上げにご協力ください』の文字が目に入る。どうやら八合目避難小屋では薪が不足しているようだ。

へなちょこなりの荷上げ魂に灯が付いた。
これはやるしかない。

『自分の体力にあった登山計画を!』と記された看板を見て、我が身に言われている気がしなくはないが、ザックにくくりつけられる程度の薪を担いで入山した。

0.5って・・・。


馬返しからの登山道には、露岩と砂轢で歩きづらいが見晴らしの良い『旧道』と樹林帯を通る『新道』とがある。今回は登りに『旧道』、下りは『新道』を利用してみる。

日が昇って霧はすっかり晴れている。木漏れ日も暑く感じる気温に早くも大汗が噴き出してきた。印象的には2合目分くらい歩いた気になっていたが、『0.5合目』と記された標識を前に少しばかり心が折れる。

「合目表示に小数点以下の正確さは不要だと思うんだ」などの感情は一切表に出さず、嘆きを押し殺して登りを続行する。

2合目まで登る。

早くも視界は開け、火山らしい岩場となった。照りつける日射しは厳しさを増すが、眼下に流れる雲海の雄大さを前にして調子も出てきた。

各合目ごとに休憩を挟みながら登ってゆくと、時折わき上がる雲に日射しが和らぐ。強烈な日射しが遮られて涼しくなる代わりに岩場の傾斜はキツくなる。地形図でも確認していた通り、1合目から7合目までは登り一辺倒で登るほどに斜度が増す。砂轢に足を取られて歩きづらい箇所も多くなるが、修験モードに入った私としてはこうした登りは嫌いじゃあない。

2合目にして早くも雲海。


4合目を過ぎて調子が出てきました。


火山らしい岩場になってきました。

7合目まで登って来た。

急な登りは一旦終了。ここから8合目にある避難小屋までは、極めてなだらかな傾斜となる。そして、活火山らしくどっしりと鎮座する岩手山の姿が間近に見えるようになる。

活火山ならではの重量感。そして、圧倒的な生命感。恐ろしくも美しい自然を間近にして畏敬の念を抱く。

活火山ならではの重量感。そして、圧倒的な生命感。


八合目避難小屋に到着して薪の荷上げは途中放棄する事なく完了。背負ってきた少しばかりの薪を降ろすついでに、小屋番さんから情報収集しておく。

現在の岩手山の火山活動は沈静化しているが、明確に地熱の高い場所があると言う。そこは一般山道内にあり、地面に触るだけでその熱を感じられるらしい。この事を意識してお鉢(火口縁)を巡るとしよう。同行のヨメを八合目避難小屋に残し、一足先に岩手山の最高点である薬師岳に向かった。

八合目避難小屋から火口縁への山道は、途中で二股に分かれている。右はジグザグの緩やかな登り、左は歩きづらい砂轢を直登。ふうむ、男の子なら直登一択だろう。

急な砂轢道を無心で登り、一定間隔で石仏が並ぶ岩手山の火口縁に辿り着いた。

悠然と広がる雲海、壮大に沸き上がる雲、そして、中心が小高い丘のように隆起した火口。それらの景色を眺めながら岩手山最高地点までゆったりと歩く。ここに来るまで時間がかかったせいか、何だか一歩一歩が感慨深く感じられる。

薬師岳、すなわち岩手山山頂に到着した。

火口縁へ砂轢道を直登。


火口中央部分が隆起しています。


岩手山山頂の薬師岳はあちら。

岩場の陰に岩手山神社奥宮があります。


遮るものは何もない雄大な眺め。ただ、残念なのは青空が隠れてしまった事か。しばらく粘ったが青空は現れず、観念してお鉢巡り(火口縁の周回)に出掛ける。

火口を挟んだ薬師岳の向かい側には、火口へと下れる箇所があり、そこに岩手山神社奥宮が建てられている。お鉢巡りの締めくくりに参拝して、八合目避難小屋へと戻ろうとした時、丁度ヨメが火口縁へと登ってきた。

ふうむ、せっかくなのでヨメと共にもう一度、お鉢を巡るか。1日にお鉢を2巡する機会なんてそうそうないからな。(※普通はしません)

しかし、これが良かった。

同じ道を2巡と言っても雲の移り変わりは早く、1巡目の景色とは印象がガラリと違う。お陰で本日2度目の岩手山山頂では青空を拝む事ができた。更には岩手山の熱を感じられる場所も判明した。

お鉢2巡目にして青空の岩手山山頂。


2巡目は岩手山神社奥宮へ下らずにそのまま火口縁を進む。すると、何やら調査をしているおじさんに出会った。何の調査か興味津々の私は素通りできる訳もない。

「何の調査ですか?」
「地熱を測っています」

おじさんは地元の方で岩手山の火山研究をされているらしく、火山情報を色々と教えてくれた。

おじさんと出会った場所は地熱が高く、確かに温泉の上を歩いているかのように温かい。ただ、言われなければ太陽の反射熱と思って素通りするところだ。地面に触れるとその温度は明確で、少し掘るだけで70~80度まで温度は上がる。

岩手山、活きているんだな。

触れると岩手山の地熱を感じられます。


おじさんは火山情報だけではなく岩手山の植生保護についても熱く語ってくれた。これには昨日の早池峰山で出会った地元の方たちと同様に、地元の山に対する愛情を感じずにはいられない。もう私の中で『岩手県民は大の山好き』の印象だ。

お鉢を2巡したところで下山。

下山で利用した7合目からの新道は、木々に覆われ眺望こそ無いが歩きやすく下りやすい。旧道に比べたら多分、登りもラクだろう。新道の快適さのお陰で思いの外、素早く下山する事ができた。

新道、旧道を歩いてお鉢も2巡。天気にもそこそこ恵まれて満足いく岩手山山行となった。そして、2日間に渡る初めての岩手県の山歩きとしても大満足の内容となった。

悔やむべきは帰りがドタバタしてしまい、盛岡三大麺のひとつ『じゃじゃ麺』を食べ損ねた事か。
まぁ、山歩きと麺を食べにまた来ますよ、岩手。

漫画的山行記録

岩手の山歩き2日目は岩手山を登ります。

広々した馬返し登山口の駐車場からスタートです。

まずは馬返しキャンプ場を抜けていきます。

登山口にある『鬼又清水』。

へなちょこなりの荷上げ魂に灯が付いたので担いで行きます。

入山前には届け出を。

これからアレに登ります。

『可』でお願いします。

今朝方の霧はすっかり晴れました。

え?まだ0.5…。合目表示に小数点以下の正確さは不要だと思うんだ。

木漏れ日でも気温が高くて既に大汗です。

ふうふう、やっと1合目・・・。

淡々と登るぞー。

豆腐岩って尻でも掻きながら適当に命名した印象が・・・。

火山らしい砂礫の山道になってきました。

暑っつい!

2合目にして早くも雲海を眼下に眺めます。

ひとときの涼しさ。助かるわぁ。

3合目。遠慮せず座っていきましょう。

ハクサンシャジンも雲海を眺めます。

4合目。調子が出てきました。

岩手山の固有種と教えてもらいましたが、名前を忘れた・・・。

アザミの一種。アザミは130種類程あって見分けるのが難しいそうです。

どこまでも続く雲海。

つまむと音がなりそうなクサボタン。

花期が終わるとこんな風になります。

5合目。どんどん行きますよー。

絶妙に整ったウメバチソウ。

こちらも固有種らしいが名前を忘れた・・・。メモしなきゃダメだね。

また雲海を眺めます。

火山らしい色合いですが緑もしっかり根付いています。

こんな大岩が転がり落ちてきたらたまったものではない。

歩きづらい山道が続きます。

6合目。一気に行ってみよう。

岩場の陰にちょっとした避暑地。

エーデルワイス=ウスユキソウって知りませんでした。

7合目に到着。奥に見えるのが・・・

火山らしい重量感の岩手山です。

7合目から8合目の避難小屋まではすぐです。

青空が爽やか。

八合目避難小屋までやってきました。

途中放棄する事なく薪の荷上げは完了。

冷たい御成清水を頂きます。

登って感動しに行ってきます。

あれ、これって名前忘れたヤツかな。

男の子ならときめく鬼ヶ城。

ここから火口縁までキツイ登りが待っています。

砂礫の直登ルートで目指せ、火口縁。

火口縁に到着。

隆起している火口中央部は立入禁止です。

一定間隔で石仏が並んでいます。

山頂付近にはイワブクロ。

圧倒的な生命力を感じます。

岩手山の最高地点『薬師岳』までもうすぐ。

到着しました。青空じゃないと映えないな・・・。

セミも登っています。

青空を待っていましたが空模様が一向に好転しないのでお鉢巡りに出掛けます。

火口縁の北側ではまだコマクサが見られます。

お鉢を移動するごとに景色が変わって飽きません。

隆起した火口中央。うーん、理想の形だ。(え?)

こちらは赤い薬師岳。

ふたつ並んで、うーん、いい形だ。

また山道の様子が変わります。

火口に下りて岩手山神社奥宮へ。

岩手山神社奥宮に参拝。

よく来た

なっ。

岩手山神社奥宮では篠木神楽(獅子舞)が奉納されています。

植生保護のためロープから外へは出ないように。

火口縁には点々と登山者の姿。

鬼ヶ城。カッコイイ。

9合目はここにありました。

お鉢を1巡してきました。

丁度登ってきたヨメと合流したのでお鉢巡り2巡目スタート。

御釜湖?御苗代湖?

2巡目にして青空の山頂!

イイぞ、夏!

快晴なら八幡平や青森の山々も見えそうです。

岩の陰にはイワギキョウ。

お鉢2巡目でも景色は刻一刻と変化しています。

薬師岳を下る登山者たち。

お鉢を歩いていると岩手山の火山研究をされている方に出会いました。

丁度、地熱を測っていたようです。

ここの地面は温かい!

一部の区間では少し掘るだけで70~80度もあるそうです。

色々と教えてもらい、お鉢を2巡した甲斐がありました。

八合目避難小屋まで戻って昼食タイム。

盛岡のソウルフード『福田のコッペパン』を頂きます。

帰りは歩きやすい新道で一気に下山。

雲の下まで下ってきました。

無事に下山。ゴクゴクと頂きます。

馬返しキャンプ場、ここは改めて利用したいな。

帰りはドタバタしてしまい盛岡三大麺のひとつ『じゃじゃ麺』を食べ損ねた・・・。

まぁ、山歩いて麺を食べにまた来ますよ、岩手。

おわり

漫画的山行記録
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本日の山行情報

複数人山行/日帰り/8時間以上歩行/マイカー登山

岩手山(いわてさん)
標高2038m
詳細(外部リンク)

本日のスケジュール

馬返しキャンプ場(駐車場)[着] 05:01 - [発] 05:02
 ↓ 4分 
馬返し登山口[着] 05:06 - [発] 05:22
 ↓ 227分 旧道経由
八合目避難小屋[着] 09:09 - [発] 09:32
 ↓ 41分 
岩手山(薬師岳)[着] 10:13 - [発] 10:29
 ↓ 18分 
岩手山神社奥宮[着] 10:47 - [発] 10:50
 ↓ 44分 立ち話多数
岩手山(薬師岳)[着] 11:34 - [発] 11:43
 ↓ 82分 立ち話多数
八合目避難小屋[着] 13:05 - [発] 13:34
 ↓ 108分 新道経由/急ぎ足
馬返しキャンプ場(駐車場)[着] 15:22 - [発] 15:23

行動時間:8時間44分(休憩含む)

本日のおすすめ(お土産/温泉情報)

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