2015年8月15日
北上山地:日帰り
早池峰山:地元愛を感じる多種多様性。

早池峰山山頂。


地元山形へ里帰り。
これを機に東北の山歩きへ出発だ。

とは言え、目的地は特に決めていない。そんな時は『日本百名山』を参考にすれば間違いないだろう。
で、岩手県の早池峰山に決定した。

早池峰山は超塩基性の蛇紋岩から成るため生育できる植物が限られてしまう。その半面、固有種が多く、高山植物を楽しむには最適な山なのだが、個人的には『はやちね』の語感が魅力的。

そんな語感に魅かれて行ってきます。

【はやちね由来】
早池峰山頂には、手を入れるどころか人の影が映るだけで枯れてしまう『開慶水』という小さな泉の伝説があります。開慶水が枯れてしまっても修験者が祈願すればすぐ元通りになる事から『早地(はやち)の泉』と呼ばれたのが由来とされます。
※山名由来は諸説あります




河原の坊登山口からスタート。


今回は河原の坊登山口から登り、小田越登山口へと下る王道ルートを辿る。

河原の坊登山口までの道路は実に静かで、霧の立ち込める道路をカモシカが悠々と横断するような状況だった。「この様子ではまだ誰もいないか」と思いきや、到着した河原の坊登山口駐車場はそこそこの登山者たちで賑わっていた。登山者の中には小さいお子さん連れの大家族パーティーもいる。

事前リサーチによると、河原の坊登山口からは何度か沢を渡った後に浮き石の多い急な岩場を直登するルート。それだけに下りでは推奨されておらず「子供、大丈夫か?」と思いつつ山行をスタートした。

登山口から沢沿いの山道に入ると、「これまでの山域と違う!」と瞬時に感じた。

緑の密度が濃く多種多様な森。


山域ごとに独自の雰囲気を持っているモノだが、この山はまたひとつ違って緑の密度が濃い。実に濃い。それだけではない。視界に入る狭い範囲内でも多種多様な植生で溢れている。

こんなに多くの種がひしめき合いながらも絶妙なバランスで保たれているその環境からは、人の手では制御できない神秘性を感じてしまう。早朝でガスの掛かる状況もあって、日本古来の神的な存在すら感じられる。今思えば来るときに見かけたカモシカも少々細身ではあったが優雅な動きで神々しかった気もしてきた。(単純)

神秘的な森の効果なのか、我が身に眠っていた力が解放されて息も切らさず樹林帯を登る(ゆっくりペースですが)。そして、樹木の背丈が低くなり視界が開けてくると同時に山道が岩場に変わった。

視界が開けてもガスに巻かれて遠方の景色はほとんど見えない。しばらくすると雨も落ちてきた。決して山歩き日和とは言えないこんな状況でも、岩場の隙間に根付く植物は相変わらず多様で飽きる事はない。

緑が濃ゆい。


潤いたっぷり。


徐々に急傾斜になる岩場を登ります。

早池峰山山頂が見えてきました。


ゆっくりペースで岩場を登ってゆくと、いつの間にか雨は上がり、雲の切れ間から青空も覗くようになってきた。正面には登るほどに急傾斜となる岩場と、その先にゴツゴツした早池峰山山頂が見えてきた。

景色ヨシ、植生ヨシ、雰囲気ヨシ。
まだ登頂も下山もしていないが、何だか今回の山行満足度は既に満点だ。

『御座走り』『打石』『仙丈ヶ岩』を越え、登り終えるのが惜しいぐらいの気分で早池峰山頂に到着した。
周囲は基本、ガス景色。それでも気分は晴れやかだ。

滑り落ちないように。


そびえ立つ打石。


クサリ場もあります。

山頂にある早池峰山頂避難小屋には地元ボランティアの方々が巡回に来ていた。挨拶すると第一次登山ブーム以前からの山屋で猛者揃いなのが判明。若い頃はピークを目指してガツガツと登っていたのだろうが、今となっては腰を据えて四季折々の早池峰山を楽しんでいるようだ。その口から語られる内容からは、地元としての早池峰山への愛着がひしひしと伝わってくる。

早池峰山エリアでは、山道/木道整備はもちろんの事、携帯トイレの普及にも力を入れている。携帯トイレを各登山口/避難小屋で販売しているだけでなく、登山口に回収ボックスを設置しているところに、一方的ではなく「共にこの環境を守っていきましょう!」と言う思いを感じられる。携帯トイレの効果がどの程度あるかはわからないが、少なくとも地元住民の早池峰山に対する努力と愛情はバッチリと伝わった。

早池峰愛を感じたところで下山を開始。帰りは稜線上にある快適な木道を少しばかり歩いて小田越登山口へと下山する。

山頂にある早池峰神社。


先に見える広い尾根を下ります。


長いハシゴもあります。

こちらは滑りやすい蛇紋岩が多く長いハシゴもある。それでも河原の坊ルートに比べると格段に歩きやすい尾根道だ。何よりもその尾根に広がる景色が素晴らしかった。

早池峰山の森林限界は一般的な標高よりもかなり低いため、ハイマツのような低い樹木が多く、見晴らしが非常に良い。

そして、固有種のナンブトウウチソウ。

この花を全く知らなかった私は、その毛のような花弁を見て「もう花期が過ぎたのね」と適当に思っていたが、道中で出会った植生調査員から「まさに今が見頃」と教わった。

こうなると単純な私の思考は全開。

なだらかな尾根を覆うハイマツと群生するナンブトウウチソウの景色を前にひとしきり感激する。旬の情報のお陰で何気に見ていた景色が一転、美しく素晴らしい景色へと早変わりした。

うん、言われなくとも『調子がいい性格』は自認している。

広い尾根を下ってゆきます。


ナンブトウウチソウ。


広い尾根を覆うナンブトウウチソウの群生。

花期の終わったハヤチネウスユキソウ。


景色を堪能しながら無事に小田越登山口へ下山。舗装道路伝いに河原の坊にある駐車場へと戻り、本日の山行は満足のゆく出来で終了した。

新たな情報満載だった今回の山行ではナンブトウウチソウの他にも、お盆時期に羽化する高山蝶『ベニヒカゲ』や『ハヤチネフキバッタ』にも出会え、このエリアの固有種である『ハヤチネウスユキソウ』と『ミネウスユキソウ』の見分け方も教わった。

そして地元住民の早池峰愛。今回の山行はこれに尽きる。

よし、次はハヤチネウスユキソウの時期に再訪して愛情たっぷりに愛でることにしよう。そして、したり顔で解説しよう。(あさましい・・・)

漫画的山行記録

地元山形へ里帰り。

これを機に岩手県の早池峰山を歩きに行ってきます。

河原の坊に駐車します。曇っているけど天気は回復するかな・・・。

河原の坊登山口からスタート。

いきなり沢を渡ります。増水している場合は通過できないので注意!

緑の密度が濃い!そして多種多様な植生!

日本古来の神的な存在を感じます。

濡れた岩場は滑りやすいので慎重に。

何度か沢を渡ります。

センジュガンピ。

雨の日ならではで潤いたっぷり。

ガスがかかってきました。良く言えば涼しい。

沢伝いに登ります。

晴れるかねぇ。

水場で一息。

山道の様子が変わってきました。

早くも秋の装い。

この辺りから傾斜はキツくなってきます。

岩場でも相変わらず多種多様な植生。

おっ、ガスが晴れたぞ!

悠々と流れる滝雲。

正面に早池峰山が見えてきました。

『御座走り』の大岩を登っていきます。

決して滑らないように。

既に花期の終わった固有種のハヤチネウスユキソウ。

ガシガシと登りますよ。

羽化したばかりのベニヒカゲ。高山蝶です。

そそり立つ『打石』まで来ました。

こちらはミネウスユキソウ。花期は終わっています。

雨に打たれたハクサンシャジン。

またガスってきたなぁ・・・。

『仙丈ヶ岩』に到着。山頂までもう少し。

おおっ、また晴れてきた。

晴れると岩場の緑が映えて気持ちがいい。

固有種のナンブトラノオ。トラの尻尾はピンク色じゃないけど。

河原の坊ルート唯一のクサリ場。

足元が滑りやすいのでクサリを活用。

ミネウスユキソウ。見頃は6中旬~7月中旬です。

山頂直下の岩陰にダイモンジソウ。

早池峰山山頂に到着しました。

管理の行き届いた早池峰山頂避難小屋。

月と太陽をあしらった早池峰神社奥宮に参拝。

石祠もあります。

昼食に岩手県内で入手したパンを頂きます。

名残惜しいですがそろそろ下りますか。

帰りは小田越登山口方面へ下山します。

機会があれば早池峰剣ヶ峰も歩いてみたい。

奥に見える広くて気持ちよさそうな尾根を下ります。

ここは高山植物好きには堪らない山です。

良く見かけるキリンソウ。

快適な木道で稜線を進みます。

ハイマツの実。ちなみに、まつぼっくりの『ぼっくり』は『睾丸』を指しています。

ハイマツの黒いキンタ・・・止めておけ。

長い梯子を下ります。

タカネナデシコ。いつ見ても変な花。

この辺りの蛇紋岩はよく磨かれているので足元注意。

稲穂を感じさせます。

振り返ると荒々しい岩山を下ってきたのが分かります。

気持ちの良い尾根。晴れていたらもっと爽快。

ヨーロッパの遺跡みたい。

青空っ!これを待っていた。

ホシガラスも凛々しく見えます。

固有種のナンブトウウチソウ。

今時期ならナンブトウウチソウの群生が見られます。

ああ、下山が名残惜しい。

下山しました。

ここからは舗装道路伝いに河原の坊へと戻ります。

早池峰山頂は雲の中。

登山口に設置されている携帯トイレ回収ボックス。この心遣いが嬉しい。

帰りに早池峰神社里宮に寄っていきます。

無事に下山出来ました・・・と。

せっかく岩手に来たのだからアレを食べなきゃ。

盛岡市にある『食道園』で焼き肉。

そして元祖盛岡冷麺。

ご馳走様でした。

明日は盛岡市から見える岩手山に行ってきます。

おわり

漫画的山行記録
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本日の山行情報

複数人山行/日帰り/ハイキング/マイカー登山

早池峰山(はやちねさん)
標高1917m
詳細(外部リンク)

本日のスケジュール

河原の坊登山口[着] 07:24 - [発] 07:26
 ↓ 177分 
早池峰山[着] 10:23 - [発] 11:53
 ↓ 119分 
小田越登山口[着] 13:52 - [発] 13:52
 ↓ 30分 舗装道路
河原の坊登山口[着] 14:22 - [発] 14:24

行動時間:5時間26分(休憩含む)

本日のおすすめ(お土産/温泉情報)

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