2014年3月22日
箱根山地:日帰り
箱根外輪山:駅から駅への縦走。真の目的は大衆浴場にあり。

金太郎目指して箱根外輪山縦走の旅へ。


先週歩いた、金時山。
何気に地図を眺めていた時、ある事に気が付いた。

日帰りで駅から駅への縦走が出来るじゃあないか。

御殿場線の足柄駅から箱根外輪山列伝いに縦走すれば、8~9時間ほどで箱根登山鉄道に辿り着けそうだ。
行動時間は少々長くなるが許容範囲。
途中で断念するにしても、人気の山域だけあって箱根町への下山ルートには事欠かない。

早速、先週に引き続き箱根に向けて出発だ。
もちろん始発電車で。



足柄駅からまずは足柄峠を目指します。


目覚ましを止めた夢を見たが、どうやら夢ではなかったようだ。
つまり、寝過ごした。

「夢だけどぉ!」
「夢じゃないっ!」

記憶とは不思議なもので、10年以上前に見た映画のワンシーンが唐突に甦りつつ、1時間遅れで静岡県の足柄駅に到着した。
(※『となりのトトロ』より)

出だしで遅れてしまうと後々の予定に影響してしまう今回の山行。
『終電』というタイムリミットのある電車登山人の私としては、のっけからハラハラする展開だ。

まずは足柄古道で足柄峠を目指す。

この足柄古道は千数百年もの歴史がある。
今でこそ単なる山道となっているが、相模と甲州とをつなぎ、海産物が運搬される「塩の道」として栄えていたそうだ。

山中を動物なり人が歩けば道となり、歩かなければ廃道となる。
しかし多すぎる人の流入は、時として山道破壊になる場合もある。

それでも今尚、『道』として有り続けている足柄古道からは、学ぶべき要素が大いにありそうだ。
そんな、柄にもない事を考えながら古道を歩き、足柄峠に辿り着いた。

目前に広がるのは白き富士の優雅な山容。


見晴らしが良さそうな高台に立つと、目前に広がるのは白き富士の優雅な山容。
その端麗な容姿から『芙蓉の峯』とも呼ばれる富士山を前にすれば、もう言葉など必要ない。

これまで足柄古道を利用した人々も、同じように畏敬の念を抱きながら富士山を眺めたのだろうなぁ。

・・・ふむ。
どうやら古道を歩いた事で、私の中のロマンチストが漏れてきたようだ。

ちょっと気分を変えて金時山を目指そう。

有名な童謡でも歌われている通り、金太郎は足柄山で育ち、金時山へ遊び(相撲の稽古?)に出掛けていたと聞く。
それを踏まえ、『足柄峠から金時山に登れば金太郎』という勝手なルールを想定してみた。

俄然、歩く気が増した。(子供か)

足柄峠から林道伝いに金時山へ向かうと、ぞくぞくと新生金太郎たちが下山してくる。
ヘルメット装着のベテラン金太郎もいれば、始めてだったのかヘロヘロな金太郎もいる。

そんな中でも、これから山頂を目指すリアル金太郎(子ども)が印象的だった。
先頭に立って「早く早く」と両親を引っ張り、多少の岩場などモノともしない。

流石に金時山へ登る子どもは一味違うな。
金太郎濃度が実に高い。

足柄峠からの金時山は、最後だけ急に険しくなる。
階段が整備されているものの、踏み固められた残雪が滑りやすいこの時期は油断できない。

そんな状況でも子どもたちはヘッチャラな様子。
実に頼もしいではないか。

子どもたちに負けじと登り、金太郎たちでひしめき合う金時山山頂に到着した。

金時山山頂へは12の階段があります。


また一人、金太郎が誕生しました。


雲よ晴れろっ!でもこれはこれでイイかも。

山頂は多くの登山客で賑わい、家族連れが目立つ事もあって、ほのぼのした雰囲気となっている。
山頂茶屋の看板娘である金時娘さんもお元気そうだ。

先を急ぎたい私は、軽い食事を摂ってすぐに出発した。
これから長い縦走路の始まりだ。

雪はほとんど溶けているが、山道の泥は依然として健在。
滑るし、跳ねるし、汚れるし、とにかく山道の泥は嫌いだ。

しかし、金太郎要素をふんだんに持つ子どもたちは、泥だらけの山道でも楽しげに歩いている。滑って転んで泥だらけになっても笑っているのがステキ。
泥だらけの我が子をみて、一緒に笑っている両親もまたステキだ。

こんな和やかな雰囲気の山道も公時神社への分岐点まで。
ここから先はパタリと人気がなくなる。

どちらかと言えば静かな山行を好む私も、金太郎(登山者)たちの賑わいから一変し、わかりやすい程の静けさに少々寂しさを感じてしまった。

そんな静かな山道で100円を拾った。
久しくお金を拾う事などなかったが、まさか山道で拾うとは。

はっ!・・・金・太郎。

『金』繋がりなだけで「はっ」とし、100円片手にニヤニヤしてしまう40歳目前の男。
こんな現場を誰からも目撃されないのは静かな山道の利点とも言える。(違)

荷馬車でも走ってきそうな雰囲気です。


矢倉沢峠からは笹原の山道となり、なだらかなアップダウンを繰り返して明神ヶ岳へと続く。

山道脇には背丈の高い笹原が生い茂り、青い空とそよぐ風が心地よい。
この山道はトレイルランナーに打って付けで、実際に何人かのトレラン愛好者とすれ違った。
この日だけなのか、登山者よりトレイルランナーの方が断然多い。

あれだけ強靭な脚力を持っていれば、日帰り縦走もきっとラクなのだろうなぁ。
そう思う我が膝には、ぼちぼちと疲労が蓄積されてきた。

快適な笹原歩きも、残雪があると倒れた笹に足を引っ掛けやすく、潜ろうにもザックが引っ掛かってしまい、地味に体力が奪われる。

悪路に屈せず、ペースを守って歩いていると、平べったい明神ヶ岳が目前に迫っていた。
所々崩壊している南側斜面を眺めながら、黙々と歩き続けて山頂へ。

明神ヶ岳山頂は広々しており眺望もいい。
相模湾や箱根カルデラを一望でき、金時山と富士山が重なる景色を見られるのも、この山頂ならではだろう。

神山を前にして明神ヶ岳に到着。


金時山と富士山が重なるこの景色は明神ヶ岳ならでは。


相模湾を一望。

景色もいいが、まずは休憩。

よく考えると、足柄駅からここまで座って休憩をしていなかった。(※金時山では立ち休憩)
寝過ごした遅れを気にせず、焦らずいこうと思っていたものの、気持ちは急いていたか。

私以外にも何人かの登山者が山頂で休憩しており、昼寝とは思えない様子で横たわる疲労困憊の登山者もいる。
何だか仲間意識が芽生えそうだ。固い握手を交わした訳でもないのだが。

程よく回復したところで、次なるピークの明星ヶ岳へと向かう。

この区間はほぼ下り一方で、軽いアップダウンがあるくらい。
明星ヶ岳にしても、ピークっぽくない山道脇にポツリとあった。

明星ヶ岳山頂にある御嶽大神の石祠。


この明星ヶ岳を小田原方面から見ると、山の真上に宵の明星が輝くそうだ。
その状況がそのまま山名由来となっている明星ヶ岳。
ここから眺める宵の明星もさぞかしステキだろうねぇ。

しかし、足柄駅を出発する以前から、内に秘めた真の目的が私にはある。
下山後の温泉だ。

塔ノ沢上湯温泉大衆浴場。

高級旅館の立ち寄り湯でも、近代的な温泉施設でもなく、地元住民のための大衆浴場。

この温泉こそが、今回の山行の最大の目的かもしれない。
私にとって『大衆浴場』の響きは、『宵の明星』よりもステキに思えてしまうのだ。

時間的にみると、ここから強羅方面へ下山するのがセオリーだろうが、大衆浴場に入るべく最後のピークである塔ノ峰へと向かう。

途中、通過しなければならない舗装道路があり、山道とは違って膝への衝撃が堪える。疲労しているから尚更だ。
それでも一片の迷いもなく、大衆浴場目掛けてまっしぐら。

再度、山道へと入り、15分程で塔ノ峰に到着した。

明るい内に目的地へ辿り着ける事を確認して最後の休憩をとる。

【マメ知識】
『塔』は仏教用語で、お釈迦様の遺骨などを納めた建造物を指します。そんな宝塔が山中で発見された事から、塔ノ峰と名付けられています。


阿弥陀寺では梅の花がお出迎え。


辺りが薄暗くなる頃、阿弥陀寺を経由して、箱根登山鉄道の塔ノ沢駅へと無事に下山した。

いや、まだだ。

塔ノ沢駅から再度、山道に入って、渋滞している東海道へと下る。
そして、ようやく真の目的地である塔ノ沢上湯温泉大衆浴場に到着した。

積み重ねられた歴史があるのか、いい意味で寂れた外観が私の心を捉えて放さない。(マニア?)
館内も大衆浴場的な雑多な雰囲気が漂い、無作為にチョイスされたドリンク類が並ぶ冷蔵器もまた味わい深い。

500円を番台のオバチャンに渡し、いざ湯船に。
※湯船に浸かる前は身体を念入りに洗いましょう。

ふい~~~~っ。

長い旅路を終えて浸かるお湯はまた格別。
もう、言う事は何もないです。

今回の山行は、『完走』と言うか『完歩』できた充実感がある。
これも、最終目的地の温泉あってこそだな。

風呂上がりの余韻に浸りながら、プラプラと箱根湯本駅まで歩き、後は電車に揺られてマッタリと帰るだけ。
これぞ電車登山人の特権。

・・・が、人身事故のため全便運転見合せ。
ダイヤは大幅に乱れ、箱根湯本駅は大混雑。

結果的にその日の内に帰宅する事はできたものの、帰りの電車では終止立ちっぱなし。
これには箱根外輪山縦走を完歩した我が膝も震えた。

まあ、そこは電車登山人の宿命と言う事で。

魅力的な塔ノ沢上湯温泉大衆浴場。入浴500円。


お土産もゲット。


箱根湯本駅に到着。お疲れさまでした。

漫画的山行記録

日帰りで駅から駅へと縦走できる箱根外輪山列に行ってきます。

御殿場線の足柄駅から箱根登山鉄道まで歩きます。

縦走以外の裏目的を内に秘めて出発。

足柄駅(静岡)からスタート。

見るからにいじめっ子の面構え。

あちらこちらにいる金太郎オブジェクトがご案内。

ああっ!金太郎だっ!!(←失礼発言)

千数百年の歴史を持つ足柄古道を進みます。

嶽之下宮奥宮。

林道から舗装道路へ。

赤坂古道。こちらを歩いてみよう。

馬頭観世音像。古くは馬車道だったことを伺えます。

歴史を感じながら古道を歩きます。

林の合間から富士山。

徒歩なら舗装道路より足柄古道へ。

実際はここで詠まれていない松尾芭蕉の句碑。

穏やかな表情の六地蔵。いや、八地蔵?

足柄峠より。

玉手ヶ池。ゲロゲーロ。

足柄峠情報満載です。

まず目指すは正面に見える金時山。

ここまでは車で来れます。

ここからは徒歩で。

気をつけて行くのだぞ。

金時が近づいてきました。

ここからは階段続き。

12の階段があるとのこと。ガンバロ。

結構急なので油断しないで。

階段終了。

金時山に到着。残念ながら富士山には雲がかかってます。

雲よ晴れろっ!

でもこれはこれでイイ景色。

そんな金時山で金太郎、誕生。

神山方面。なんてストレートな名称。

神山を眺めながら先へ進みます。

見晴らし良さそうな岩。

明神ヶ岳に向けてあの笹原を歩きます。

馬車でも走ってきそうな雰囲気です。

振り返るとかつて猪鼻嶽と呼ばれていた金時山。

100円を拾った。はっ!・・・金、太郎。

結構な背丈の笹のアーチ。

奥に見える平べったいのが明神ヶ岳。

まだまだ遠い・・。

足が引っ掛かって歩きづらいなー。

明神ヶ岳の南面を見ながら進みます。

増毛タイプの生え方だ。

明神ヶ岳に到着。

ああーーー、潤うッ!

金時山と、その向こうに富士山。

反対側には相模湾も見えます。

緩いアップダウンを繰り返して進みます。

明星ヶ岳に到着。

前方には房総半島がうっすら霞んで見えます。

迷いなく一直線に進もう。

舗装道路に合流。疲れた膝にアスファルトは堪える・・・。

最後のピーク、塔ノ峰へ。

こりゃあ歩きやい。

塔ノ峰に到着。

後は裏目的目指して下るだけー。

これなら暗くなる前に下山できそう。

今にも崩れそうでちょっと怖い。

ちょっとちょっと、笑ってる場合じゃないですよ!

しっちゃかめっちゃかです。

山中にひっそりとたたずむ阿弥陀寺まで来ました。

梅の花がお出迎え。

ともちゃん地蔵。お母さんに会いたくなったらおへそを見よう。

げざーん。つ、疲れた・・・。

でも、まだ終わりではありません。

取りあえず塔ノ沢駅へ。

辺鄙なところにある塔ノ沢駅。

東海道へ下るため、再び山道へ。

何やらステキな山の茶屋を通過。

箱根外輪山列を横断してようやく裏目的の地に到着!

ココが真の目的地である上湯温泉大衆浴場。

大衆浴場好きなのです。

おっ、貸し切りだ。

長い旅路を終えて浸かるお湯はまた格別です。

お土産もゲットして後は電車に乗って帰るだけぇ~。

箱根湯本駅に到着。お疲れ様でした。

って、人身事故のため全便運転見合せ。箱根湯本駅は大混雑。

帰りの電車では終止立ちっぱなしでした。

これも電車登山の運命・・・。

おわり

漫画的山行記録
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本日の山行情報

単独行/日帰り/8時間以上歩行/電車・バス登山

金時山(きんときやま)
標高1213m
詳細(外部リンク)
明神ヶ岳(みょうじんがたけ)
標高1169m
詳細(外部リンク)
明星ヶ岳(みょうじょうがたけ)
標高924m
詳細(外部リンク)
塔ノ峰(とうのみね)
標高566m
詳細(外部リンク)

本日のスケジュール

足柄駅[着] 09:20 - [発] 09:20
 ↓ 75分 足柄古道/赤坂古道
足柄峠[着] 10:35 - [発] 10:40
 ↓ 70分 
金時山[着] 11:50 - [発] 12:05
 ↓ 130分 
明神ヶ岳[着] 14:15 - [発] 14:35
 ↓ 65分 
明星ヶ岳[着] 15:40 - [発] 15:40
 ↓ 75分 
塔ノ峰[着] 16:55 - [発] 17:05
 ↓ 50分 
塔ノ沢駅[着] 17:55 - [発] 18:00
 ↓ 10分 舗装道路
上湯温泉大衆浴場[着] 18:10 - [発] 18:45
 ↓ 20分 舗装道路
箱根湯本駅[着] 19:05 - [発] 19:05

行動時間:8時間15分(休憩含む)

本日のおすすめ(お土産/温泉情報)

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